売上アップの教科書
「お客さまのお友達」も「お客さま」(ついで買い2回目)
2011年9月16日掲載
文:渡辺まどか(中小企業診断士)
その場を楽しむ「ワクワク感」の共有で
付き添いのお友達にも「お客さま」になってもらおう
お友達の買い物についていっただけなのに、気がついたら自分も何か買っていた—そんな経験はありませんか? 「そんな買い方、サービスを提供して対価を得ている美容院やマッサージ店ではあり得ない。」そうおっしゃる方もいらっしゃるかもしれません。果たして、本当にそうでしょうか?
地方都市の駅ビルの一角、壁も扉もないオープンスペースで営業しているネイルサロン。4席のカウンター形式で、スタッフが常時2~3人稼働しているこのサロンには、お友達連れでいらっしゃるお客さまも少なくありません。中には、お1人だけコースの予約を入れていて、お友達は付添いのみでいらっしゃるというケースも。こうしたときは、施術を受けているお客さまの横にお友達にお掛けいただき、待機していただきます。
このお店で、お客さまがお友達を連れていらっしゃったときに心がけていること。それは、お友達にも「当事者」になっていただけるように、3人で会話を進めるということです。
ポイントは、2つです。
(1)目線の配り方などに気を配り、カウンターをはさんだ1対2の会話をする
(2)付添いのお友達にも質問を投げかける
「秋口になると、指先のカサカサが気になりませんか? 」
「爪先が薄くむける二枚爪は、乾燥が原因なんですよ。こちらのキューティクルクリームは、指先専用なので保湿効果がとても高いんです」
2人に対してこのような問いかけや説明をすることによって、お友達の方にも会話に入ってもらいます。このように、意識的にお友達も巻き込んだ3人の空間をつくると、付添いのお友達もスタッフに対して親近感をもつようになるのです。
「指先が乾燥すると、ストッキングをはくときにひっかかって伝線しちゃうこともあるんだよね」
「そうそう。ハンドクリームは塗るようにしているんだけど、すぐカサカサになっちゃうの」
こんな会話を2人が始めたらいい流れです。付添いのお友達もネイルケアに興味を持ち始めた証拠です。「もしよろしければ、お友達にもクリームをおつけしましょうか? ハンドクリームとは比べ物にならないほど、しっとりしますよ」
このように、お友達にも商品を「体感」してもらいましょう。この使いごこちを「体感」していただくのも重要なポイント。短時間とはいえ、直接指先に触れるわけですから、しっかり消毒をして、指先のマッサージをするように丁寧に塗ることで、まるで施術を受けているかのようなリラックス気分を味わっていただけます。
そして、この後のお会計の時の対応がキーポイントになります。
ネイルサロンでは、カラーリングが乾くまで指先を使えなくなってしまうために、カラーリングに入る前にお会計をするのですが、このお会計のタイミングでの問いかけが重要なのです。
「さきほどご紹介したキューティクルクリームはいかがですか? お手入れをして指先がつるんとしたいい状態になっているので、専用クリームで保湿して、この状態をキープさせるといいですよ」
「そうですよね。せっかくだから、買っていこうかな」
施術を受けられたお客さまが、商品購入の意志をしめしたら、このタイミングこそがチャンス。すかさずお友達にも問いかけます。「もしよろしければ、お友達の方もご一緒にこちらのクリームをお持ちになりませんか?」
次に、お客さまを巻き込みます。お客様をもう1人の「販売員」にしてしまうのです。「せっかく貴重なお時間を割いてご一緒にいらしてくださったのですから、お友達にもきれいになっていただきたいですよね?」
お客さまにとっても、自分がいいと思って購入を決めた商品です。「そうだよ、一緒に買っちゃおうよ。量も多いから、毎日つけても半年もつらしいし」とまるで販売員のように一緒になってプッシュしてくれます。
プッシュされたお友達。最初は買うはずもなかったし、当然サイフを開くつもりもなかったけれど、実際の使いごこちを体感し、「2人」の販売員からの言葉をうけて、ココロのハードルが下がります。
「そうだよね。じゃあ、私もこのクリーム、買っていきます」
付き添い客というのは、そもそも興味があるから付き添うもの。全く興味がなかったら、一緒に来店することもほとんどないでしょう。だからこそ、その興味を引き出して、その場の雰囲気を楽しむ「ワクワク感」を共有できさえすれば、お客さまのお友達もまた、お客さまにすることができます。
ポイントは、次の3つです。
- 3人で会話を進められる「空間」をつくる
- 実際に商品の使い心地を「体感」してもらう
- お客さまを販売員にして「共感」をひきだす
サービス業の「施術」は、「ワクワク感」を体験してもらうには、むしろ好都合。もちろん、サービスを提供できない場合でも、商品を売るといった切り口で、この「ワクワク感」を楽しんでもらう仕掛けはつくれます。
雑談のなかで、お客さまを2人目の販売員に仕立てながらワクワク感を共有し、付き添いのお友達にも、どんどんお客さまになっていただきましょう。
掲載日:2011年9月16日