よくわかる食品保存の基本
最終回 包装による食品保存
食品は、時間が経過するにつれて腐敗やカビの発生などを起こします。いわゆる「傷み」が生じることです。人間は古くから食品の傷みをどのようにすれば少なくできるかを考えてきました。そして塩漬け、乾物、缶詰、レトルト食品など保存性の高い多くの食品技術が開発されました。
今後、新しい保存食が開発され、私たちの生活にさまざまな形で取り入れられていくと考えられます。そこで「よくわかる 食品保存の基本」では、食品の保存について説明していきたいと思います。
包装技術によって食品の保存性を高める
食品は非常に多様な性質を持っています。保存性を高め適正な包装をするにはその性質をよく理解する必要があります。食品を大別すると、生鮮食品(野菜・果物、乳・肉・卵、魚介類・海藻等)と穀類・豆類、加工食品に分けられます。
加工食品は、多水分食品(豆腐・納豆・生麺等の日配食品・和洋菓子類等)、中間水分食品(味噌・佃煮・珍味・半生の麺類・菓子類等)、乾燥食品(即席麺類・乾燥野菜・お茶・海苔・干菓子等)に分けることができます。
食品の特性を考えて行われる適正な包装は分類すると以下のようになります。
以上のように食品の特性を考えた適正な包装分類は数多くあります。それらの分類を組み合わせて適正な包装による分類を選定することが重要です。その中でも代表的な包装による食品の保存性向上方法について説明します。
1.多水分食品の包装
保存食品は昔からある乾燥食品だけではなく、水分の多い食品も求められるようになってきました。水分が多いと微生物の増殖スピードが速くなり、昔からある保存方法は使えません。安全に食べられるようにするには、包装の機能と保存のための包装技法が必要となります。
包装の機能は、酸素遮断性など内容物の保護が重要であり、これは包材によります。包装技法には殺菌、ガス置換包装などさまざまな方法があります。
微生物の制御は、食品の衛生管理、殺菌、減菌、除菌、ガス制御などがあり、さらに水分活性(AW)、pHなどの食品の状態により最適な方法を選択する必要があります。
多水分食品を安全に保存・流通するためには低温流通もしくは殺菌する方法があります。
殺菌条件は食品により違うため明確には区分できませんが、一般的には次のようになります。
多水分食品の殺菌区分
2.化学的劣化を防止する包装
食品は空気中の酸素に大きな影響を受けます。特に油熱乾燥したスナックや即席麺などの油性食品の酸化はその品質に大きく影響します。油脂の種類や金属イオンの量、雰囲気の酸素濃度、温湿度、光線などによって酸化速度が大きく変わります。
これらの要因のうち、酸素濃度、湿度、光線は包装で抑えられます。また、食品の酸化速度に与える影響度は、食品の性質、特に油脂の安定性と密接な関係があります。油脂や油性食品の参加度は,酸化によって生成するハイドロパーオキサイドを測定する過酸化物価(POV)その分解物を測定するカルボニル価、酸価等によって表されます。
食品の酸化には酸素の濃度と量が関係しています。油性食品を包装した場合、食品中に油脂含量と袋内の酸素量との相対量で酸化の程度が違ってきます。一般に含気包装の場合、袋内に充分な酸素があるため,貯蔵中に油脂が酸化されPOVの上昇、異臭の発生、変色などが起こります。
化学的な酸化防止法には酸化防止剤の添加があります。物理的方法としては、袋内の酸素を減少させる方法が有効です。これにはハイバリアーフィルムによる密着包装、窒素置換包装、脱酸素剤封入包装などが行われます。
また、油性食品の酸化は光線、特に紫外線によって促進されるため、アルミ箔、アルミ蒸着フィルムや紙などの不透明な材料を用いた積層フィルム、遮光フィルム、紫外線吸収剤使用のフィルムなどが使用されます。
3.乾燥物を湿気から守る包装
乾燥食品は吸湿することによって変質が起こります。乾燥食品の風味を保持するためには水分透過性の少ない包材で防湿包装を行う必要があります。特に保存上問題となる時期は、温度・湿度が高い梅雨期から夏にかけてですが、この時期の防湿包装設計がポイントとなります。
お茶や海苔は水分が3%程度で流通されます。吸湿によって水分が6-8%以上になると変色してきますので、包装にあたっては防湿包装設計により水分透過性の少ない包材を使用して乾燥剤を封入して水分の上昇を防止する必要があります。
防湿設計を行うためには対象とする食品を温度・湿度を特定の条件下で経時変化を調査することが基本となりますが、多くの時間を要するため、専門性のある包材業者に相談して最適な材質の包材を求めることも効率的かと思われます。
4.真空・ガス置換包装
多くの食品は、品質を保持して保存するためには酸化を防ぐ必要があります。一部前述していますが、この酸化を防止する方法は色々とありますが、酸素をなくすという観点でまとめてみます。
袋内の酸素をなくして酸化を防止する方法
(高橋順一 コンサルティング・オフィス高橋 代表/中小企業診断士)