闘いつづける経営者たち

「河村勝美」ゼオライト株式会社(第1回)

01.皆に背中を押され社長に、しかし…

河村勝美さんが社長を務めるゼオライトは、福岡市博多区に本社を置く水処理プラントメーカー。夫で現会長の河村恭輔氏が1970年に設立した。

恭輔会長と勝美社長が結婚したのは1984年1月。以来30年あまり、経営理念「良い水創り人財(ひと)創り」を掲げ、勝美社長は恭輔会長とまさに二人三脚で会社を成長させてきた。

現在、社員数110人。東京支店のほか大阪、岡山、北九州、熊本、長崎、大分と全国に6つの営業所を持つまでになった。

事業の二本柱

主力の水処理プラント

同社の水処理プラント開発の中心は工学博士でもある恭輔会長だ。主力製品の特徴は、水処理装置に「逆浸透膜(RO)」といわれる超精細な膜を用いている点。この膜の網目は0.0001マイクロメートル(1000万分の1ミリメートル)という超微細。このため水の分子以外は通過せず、細菌や農薬、ヒ素などの重金属、ダイオキシンなど有害物質を完全に除去できるという。

事業の柱は水処理プラント事業と水処理プラントのメンテナンス事業。もう1つがオフィスや一般消費者向けに、浄水器「あじさいの泉」とRO処理をしたミネラルウオーター「わかみず」を宅配する事業。水処理プラントの納入先は、全国の大型ショッピングセンターや病院、ホテル、学校、高齢者の保健施設など全国1000カ所以上に及ぶ。手がけたプラント施設は24時間365日遠隔監視を行うのが特徴。サポート、メンテナンス体制も万全でユーザーの高い信頼を得ている。

妻として、また経営のパートナーとして恭輔氏を支えてきた勝美さんは、2004年8月に2代目の社長に就任した。当初「社長職は受けたくない、受けたくない—といってずっと逃げてました」(河村勝美社長)と振り返る。というのも当時の社員35人は技術系社員ばかり。そんな中で技術がわからない自分に社長が務まるか不安だったからだ。

100人の激励で決心

経営者向けセミナーが運命を変えた

しかし、2004年4月に沖縄県で開かれた日本創造教育研究所主催の経営者向けセミナーに恭輔氏と参加したことで、社長を引き受ける決心がついた。セミナーの最中に恭輔氏が「じつは妻に社長を譲り技術開発に専念したい。でも妻は受けてくれない」と発表してしまったのだ。すると「奥さんが社長になるべきだ!」と約100人のセミナー受講者から激励の拍手を受けた。その時、勝美さんは、「これからは恭輔氏と会社を支えていこう。そして、技術は分からないが社員にとって母親のような社長になろう」と心に決めたという。沖縄の明るい太陽が、勝美さんを後押ししたのだった。

その年の8月、恭輔氏は会長に、勝美さんが社長にそれぞれ就任した。ところがそんな勝美社長に大変な事態が待ち受けていた。10月に入ってまもなく、勝美社長は人間ドックを受けた。水処理プラントを納入した大きな救急病院で、病院から勧められての何の気なしに受けただけだった。しかし、検査してみると、なぜか頭の磁気共鳴断層撮影装置(MRI)撮影に時間がかかった。
 「3回も検査しました。検査後に病院の皆さんが私の顔を見るんです。うろたえはしなかったんですけれど…」(勝美社長)

画像には大きさ約4センチメートルの脳腫瘍が写っていた。しかし、勝美社長は悲嘆にくれている余裕はなかった。社長に就いたばかりなのだ。一刻も早く病巣を取り除き、社長業に専念せねば。強い思いが勝美社長を支えた。専門医の診断も受け、検査後間もない12月16日に筑紫野市の病院で脳腫瘍の摘出手術を行うことになった。

プロフィール

河村 勝美 (かわむら かつみ)

1943年広島県尾道市(旧瀬戸田町)生まれ。広島県立瀬戸田高校卒業後、旧瀬戸田町役場に就職。その後個人病院の医療事務などを経験、ゼオライトの河村恭輔現会長と結婚。恭輔氏と二人三脚でゼオライト「第2の創業」に携わる。2013年、東京営業所を支店に昇格、さらなる事業拡大を目指す。

企業データ

企業名
ゼオライト株式会社
Webサイト
資本金
9000万円
所在地
福岡県福岡市博多区那珂5-1-11
事業内容
水処理プラントの開発・販売・メンテナンス事業、浄水器・宅配水販売事業
売上高
28億円

掲載日:2014年4月22日