闘いつづける経営者たち

「三浦織江」アイ・プルーナ株式会社(第3回)

03.現実の厳しさを知る

すべてにこだわる

商品を試用してもらうことで消費者とのコミュニケーションを深める(大丸福岡天神店での体験イベント)

アイ・プルーナ創業者の三浦織江さんは、化粧品開発に関して素材や品質だけでなく、価格とネーミングにも思い入れがある。

価格を決める基準は「自分が購入するなら、いくらであれば喜びを感じるか」という視点。無理なく続けてもらえる価格であることを考慮した。そこで導き出した価格は、保湿クリームが50グラムで3000円、化粧水が150ミリリットルで4000円だった。

また「パッケージより中身にお金をかけた化粧品を使いたい」との思いがあった。そのため容器は、既存の物を採用。容器を入れる箱は当初はつくっていなかった。

ネーミングは「多くの類似商品がある中で埋もれてしまわないように」と目立つことを狙った。化粧品業界では珍しく「黒豚」を前面に打ち出し、容器のふたには豚の鼻をデザインしている。キャッチフレーズでは、化粧水の商品名「くびすじ美人」を保湿クリームと化粧水の両方に使う。体のどこにでも使える商品だが、あえて気になるところをイメージさせ、差別化を図った。

インターネットで試行錯誤

2007年10月に始めた販売は、初期投資を抑えるためインターネット通販からスタート。ウェブサイトをつくることだけでなく、売り方や発送方法など知らないことばかり。試行錯誤して数カ月を要した。

販売場所として選んだサイトは、県が開設した地元産品のインターネット通販サイト「よかもん市場」。公的サイトは比較的出店料が安く、販売指導などの支援が受けられることもある。

ネット販売のノウハウを蓄積すると、自社の販売サイトも開設。管理がしやすい自社サイトへの取組みに、徐々に比重を移している。2008年には卸売りもスタートした。卸売りは直接販売より消費者対応への負担が少ないため、伸ばしていきたい分野だ。

ネット通販を開始した直後に数件の注文が来た。ほっとしたのもつかの間、ぱったりと注文が止まったままの日が続いた。三浦さんは「よいものを手ごろな価格で提供すれば消費者はわかってくれると期待したが、現実はそう甘いものではなった」と思い知る。大手から中小まで多くの業者が競争する化粧品業界において、新規参入で無名のハンディは予想以上に大きかった。

公的機会を利用しPR

使った感じなど商品に対する消費者の声を集める(福岡三越での体験イベント)

そこで三浦さんは会社と商品のPRに奔走する。ただ、商品の素材や品質に費用をかけたいと思っているため、できるだけ公的な機会を活用してコストを抑えた。

例えば、ビジネスプランを発表する会に積極的に参加したほか、県や商工会議所などのインターネットサイトとのリンクも活用した。発表会では、リポーターや司会、専門学校の講師の経験が発揮された。そこで磨かれた話術は、多くの聴衆を引きつけた。

PRの努力が功を奏して2008年10月には百貨店で期間限定の販売の話が舞い込む。店頭では商品を試用してもらうことに努め、コミュニケーションを重視した。その後の店頭販売でも、使用感をはじめとする消費者の声を集めることに重点を置いている。発売から1年間は、アイ・プルーナにとって「売るよりも、ひたすらに事業改善ヒントをもらう年だった」と位置付けられる。

プロフィール

三浦 織江 (みうら おりえ)

1957年福岡県久留米市生まれ。西南学院大学法学部を中退して全日本空輸(ANA)に入社。東京空港支店に所属する。退社後、フリーのライターやリポーターを経てビジネス系の専門学校講師に転職。マナーや就職関連の科目を担当する。1994年から2000年に福岡大学で商学、経済学を学び、2007年にアイ・プルーナを創業した。

企業データ

企業名
アイ・プルーナ株式会社
Webサイト
資本金
900万円
所在地
福岡県福岡市南区平和1-5-16
事業内容
化粧品の企画・開発・販売

掲載日:2014年4月8日