闘いつづける経営者たち

「上條努」サッポロホールディングス株式会社(第1回)

01.3つのビールをけん引役に

「なんとしてもビール類課税出荷量のシェアが大手4社中4位という立場から抜け出したい」と本音で話すサッポロホールディングス(HD)の上條努社長。国内酒類事業を担うサッポロビールは、2008年に課税出荷量でサントリー(現サントリー酒類)に逆転され4位に転落し、浮上できないままでいる。国内酒類事業はサッポロHDを支えるグループのマザー事業だ。「この事業がすべての根底であり、食品・飲料、そして海外の成長へとつながっていく」(上條社長)と力を込める。仙台市出身の上條氏は東日本大震災直後の11年3月30日に社長に就任した。本丸であるビール事業の成長、そして海外での成長が上條社長に課された使命だ。

ビールの需要を喚起せよ

ビール各社の10年12月期売上高

駒はそろっている。高価格帯ビールの『ヱビス』、普及価格帯ビールの『サッポロ生ビール黒ラベル』、そして第3のビールの『サッポロ 麦とホップ』と「支持を受けているブランド」(上條社長)が各ジャンルにある。しかし、生かしきれていないのが現状だ。「いい商品を作っているのは間違いない。他社との差別性のある商品を提供するための、小ロットで小回りのきくモノづくり体制も整っている」(同)という自負もある。しかし、あと一歩が足りないのだ。

2012年、改めて本丸であるビール類の中心に軸足を置き、市場全体を喚起する考えだ。「飲み方、飲む場所も含めて新しい提案をしていく。そうすれば、きっと『これがサッポロだ』という評価がいただけるようになるはず」(同)と期待する。

個性派俳優をキャラクターに起用

ヱビスバーのイメージ図

ビール類市場全体で堅調に推移しているという高価格帯ビールブランドの「ヱビス」は、「ビールはもっと美味しくなれる」をキーワードに露出を強化する。新たな提案を軸に基盤を固める考えだ。イメージキャラクターとして10年から起用する役所広司さんに加えて、若者に人気の個性派俳優、松山ケンイチさんを新たに起用した。ビールのコア層に加えて、エントリー層にもアピールするのが狙いだ。

加えて派生商品の積極展開や、2月25日を「ヱビスの日」として記念日登録し、家庭向けのデザイン缶の投入や連動したキャンペーンを行った。さらに情報発信として飲食店「ヱビスバー」の店舗数を増加。東京・恵比寿にある「ヱビス記念館」では情報発信策を強化する。さらにソーシャルメディアのフェースブックも積極的に活用する。

主力3商品に経営資源を集中

サッポロ生ビール黒ラベル

同社ビール類の中で一番のウエートを占めるのが「サッポロ生ビール黒ラベル」。2011年の家庭用缶入り商品の出荷実績は、前年比2・7%増と順調に推移している。「ヱビス」と同様に、積極的なプロモーション活動を仕掛け、業界内で一定の地位の確立を目指す。さらに増加傾向にあるのが、第3のビール「サッポロ 麦とホップ」。こちらもテレビCMの大量投入や季節デザイン缶などで話題を喚起する。

上條社長の選択はシンプルでストレートだ。主力3商品に経営資源を集中することで「サッポロビール」ブランドを強化し、国内酒類事業全体の成長を狙う。

プロフィール

上條 努 (かみじょう つとむ)

1976年(昭51)慶應義塾大法卒。同年サッポロビール入社。入社9年目にサンフランシスコ支店長になり、サッポロビールを米国で日本ビールのナンバーワンにした。92年経営企画部担当部長、96年サッポロビール飲料(現サッポロ飲料)営業企画部担当部長、97年営業企画部長、01年取締役、03年取締役兼常務執行役員、07年サッポロホールディングス取締役、09年常務、11年3月30日東日本大震災直後に社長に就任した。仙台市出身、58歳。司馬遼太郎を好み、休日は旅行や写真撮影、焼き物鑑賞にいそしむ。

企業データ

企業名
サッポロホールディングス株式会社
Webサイト
設立
1949年(昭和24年)9月1日(創業明治9年9月)
資本金
53,886百万円
所在地
東京都渋谷区恵比寿四丁目20番1号
事業内容
サッポロビール、サッポロ飲料などの持株会社
売上高
4,540億9,900万円(2011年12月期・連結)

掲載日:2012年3月9日