闘いつづける経営者たち
「西山 俊太郎」株式会社ヤナセ(第2回)
02.最重要は輸入中古車販売事業
低価格ブランド開始
ヤナセの2002年9月期の売り上げ総利益における事業別構成比は新車販売がトップで約40%を占めた。これが8年後の10年9月期では整備関連サービスが40%弱を占め、新車販売は34.2%まで後退。新車販売への依存度は確実に低下している。ただ西山俊太郎社長は「将来は新車販売を15%程度にしたい」との構想を打ち明ける。
その実現に向けて周辺事業強化策を進める上で、「今後、最優先して取り組む」(西山社長)というのが輸入中古車販売事業だ。
10年12月には低価格ブランド「スーパーバリュー」の展開に乗り出した。スーパーバリューの中心価格帯は100万円前後。年式が古い車両や長距離走行車を対象として価格を抑えた。
これまでヤナセの輸入中古車は200万円からの価格設定。スーパーバリューは「社内での価値転換」(中古車事業を担当する松本幸夫常務執行役員)を象徴するブランドだ。
品質を確保しながら販売増に挑む
松本常務執行役員は「そういったグレードの中古車を売ることに社内でも反対意見はあった」と明かすが、中古車販売を増やすためには「低価格ブランドを設定し下取り車を増やすことが有効」と判断した。
ヤナセブランドを維持するため、品質やサービスにもこだわった。ヤナセが販売して整備履歴が残った車両のみを下取りして商品化するほか、3カ月間もしくは走行距離3000キロメートルまで無料で故障などに対応する保証を付けた。購入者にはオイル交換などに使える5000円のクーポンを提供するキャンペーンも実施し、継続的な来店を促す。西山社長は「きちんと整備した自動車であれば、走行距離が10万キロを超えていても快適に走る」とアピールする。
新たな中古車需要の開拓に成功
スーパーバリューの開始から約半年。富裕顧客が、免許を取得したばかりの子息にプレゼントするケースなど新たな中古車需要を開拓したほか、「(品質と低価格を求める)“ユニクロ世代”」(松本常務)をターゲットに販売は比較的好調に推移している。
今後は中古車事業としての採算性や市場性を見極めるスキルを持つ人材の育成を強化し、下取り車から商品化する割合を引き上げる方針。現在、60—70台で推移している商品在庫を2011年9月期末までに100台規模に増やし、月70台の販売を目指す。
西山社長は「これまで、当社では下取り車は新車購入の頭金の一部といった考えだった。今は立派な商品としてみている。新車・中古車の区別を考えずに販売台数を伸ばしたい」と強調する。将来は売り上げ総利益における中古車販売事業の比率を20%程度(10年9月期は11.0%)まで引き上げる方針だ。
プロフィール
西山 俊太郎 (にしやま しゅんたろう)
68年法政大学経営学部を卒業し同年株式会社梁瀬(現ヤナセ)に入社。世田谷営業所長、ヤナセ中国やヤナセ埼玉の専務を歴任するなど、一貫して自動車販売部門を歩む。01年12月にヤナセの取締役に就任し04年に専務、05年に副社長、07年10月に社長に就任した。酒は飲まず、趣味はゴルフと歴史小説を読むこと。東京都出身、66歳。
企業データ
- 企業名
- 株式会社ヤナセ
- Webサイト
- 設立
- 1920年1月27日
- 資本金
- 69億7587万2000円
- 従業員数
- 3488人
- 所在地
- 〒105-8575 東京都港区芝浦一丁目6-38
- 事業内容
- 輸入車販売、関連アクセサリー販売、整備サービス
掲載日:2011年8月8日