ビジネスQ&A

在宅勤務が進んだことで、オフィスの縮小・移転を検討しています

2022年 3月11日

在宅勤務制度が定着し、オフィスに出勤する従業員も少なくなりました。この機会にもっと小さい事務所に移転してオフィスコストを削減しようと考えているのですが、何から検討すればよいでしょうか。また、その実現可能性について、何を基準に判断すればよいでしょうか。

回答

どのような働き方が望ましいかイメージを描いたうえ、オフィス機能の棚卸から着手しましょう。そして、そのメリット・デメリットを分析し、オフィスの縮小が可能と判断したら、必要な環境整備を計画的に進めましょう。

コロナ禍で在宅勤務が一気に広がりを見せました。マネジメントや業務分担の見直し、ICT機器に対する投資、コミュニケーションの工夫を行った企業にとっては、在宅勤務の方が、業務が捗ったかもしれません。アフターコロナを見据えて、出社と在宅勤務のベストミックスを探る企業も少なくないでしょう。

さて、そうなると、全員出社を前提とした広さのオフィスを持つ必要があるのか、検討の余地がありそうです。では、その検討はどのように進めればよいでしょうか。

1. どのような働き方を目指すか、イメージを持つ

冒頭のような問題意識を持つ企業は、恐らく在宅勤務と出社のハイブリッド型の働き方で、一定の手ごたえを感じていると思われますが、さらに一歩踏み込んで、自社にとって一番生産性が高く、従業員満足も得られる働き方をイメージしてみましょう。

2. オフィス機能の棚卸をする

1.に対して現状を確認します。これまでオフィスをどのように使ってきたか、振り返ってみてください。たとえば、以下があげられるのではないでしょうか。

(1)経営者と従業員、または従業員同士が意見交換する場所
(2)会議を行う場所
(3)事務業務を行う場所
(4)書類や備品の保管・収納場所
(5)商談・お客様対応の場所
(6)外部からの連絡窓口
(7)企業の価値観や文化の発信地

3. 2.の見直し及び代替手段を検討する

1.のような働き方を目指すにあたって、2.を細分化し、それぞれの必要性や代替手段について検討します。

たとえば、(2)の会議を取り上げてみましょう。今行われている会議はすべて意味あるものなのか。単なる連絡会議や、資料を読み上げるだけの会議はないか。会議室の面積や稼働率はどのくらいか。会議室を縮小するなら、代わりにオンラインで会議を行うか、顔を合わせた方がよいものでも貸会議室の利用は可能なのか。

もう一つの例として、(4)書類や備品の保管・収納場所でも考えてみましょう。オフィスには、どんな書類や備品があるのか、それらを保管している棚やキャビネットはどのくらいあるのか、整理整頓できているか確認しつつ、ペーパーレス化や在庫削減、外部委託などの選択肢を探ります。

4. 3. に関して、メリット・デメリットを検証する

縮小や移転に関しては、当然、メリットとデメリットがあるはずです。

メリットは、家賃をはじめとするオフィスコストの削減でしょう。また、この検討過程で、業務の無駄もあぶり出せます。

もちろん、そのようなメリットばかりではありません。代替手段の準備にも一定の労力とコストがかかります。また、移転を伴うのであれば、従業員の通勤負担にも配慮しなければなりません。

そして何より、今まで当たり前に存在していたオフィスの機能を無くしたり縮小したりしてよいか、慎重に検討する必要はあるでしょう。たとえば(7)に関して、一等地に立派なオフィスを構えることでブランドを保っていたとしたら、縮小の判断は容易にはできません。(1)のコミュニケーションも、対面にこだわるか、オンラインで代替可能とするかは、その職場風土や業務内容によって判断が変わってきます。(3)の事務業務も、固定席を無くしフリーアドレスにするとしたら、同様に賛否両論ありそうです。

従って、従業員の意見はぜひ聴いておきましょう。満足な説明がないまま縮小・移転となれば、従業員の士気が低下しかねません。逆に、コスト削減分を従業員に還元したり、これを機にさらに柔軟な働き方を認めたりすれば、モチベーションは高まりそうです。

このように、オフィス縮小・移転に当たってはさまざまな検討事項があります。ときに迷いが生じるかもしれませが、そのときは、「それによって何を実現したいか」に立ち返って考えましょう。

回答者

中小企業診断士・社会保険労務士 高橋 美紀