ビジネスQ&A
従業員を増やさずに効率的な営業をする方法を教えてください。
創業20年のおもちゃの卸問屋(資本金5,000万円、従業員40名)です。ここ数年、需要の低迷、大型店舗が進出してきた影響で、得意先の売上が減少しており、当社の売上も減少しています。従業員を増やさずに、売上を回復させたいと考えております。効率的な営業活動の方法についてアドバイスをください。
回答
効率的な営業活動の方法としては、(1)優秀な営業担当者のノウハウを共有化・マニュアル化する、(2)営業担当者の行動分析を行い、無駄な営業活動を減らす、(3)外勤時間を増やす、(4)将来性の高い顧客には優秀な営業担当者が対応する、(5)情報を共有化して全社的な営業効率化を図るなどがあげられます。
現代は、個々の営業担当者の能力や頑張りに期待する時代から、全社を挙げて知恵とノウハウを結集させて、売上に結び付ける時代に変化しています。
この知恵とノウハウを集結させることこそが、効率的な営業であり、その確立のためには新しい営業システムを構築していかなければなりません。この営業システムを構築するためには、現状の企業力を把握しておく必要があります。そのために、まずは各営業担当者のスキルと仕事内容の棚卸を行ってみてはいかがでしょうか。
【優秀な営業担当者のノウハウを共有化・マニュアル化する】
優秀な営業担当者の行動をベンチマーク(お手本)することで、営業担当者のスキルの向上が可能となります。そのためには、優秀な営業担当者の1日の行動パターン、商談ノウハウなどを可能な限り「マニュアル」にまとめてみてはいかがでしょうか。
マニュアルにまとめるポイントとしては、営業アプローチからクロージングまでの営業プロセスを明確に分けておくことです。明確に分けることで、プロセスごとの改善を意識することができます。たとえば、Aさんはアプローチが苦手なのでアプローチマニュアルを重点的に学習する、Bさんはクロージングが苦手なのでクロージングマニュアルを重点的に学習するなど、重点項目を明確に選ぶことができます。
もちろん「マニュアル」化しただけでは、営業担当者のスキル向上につながるわけではありませんが、個人がもつノウハウを全社的に共有することは可能となります。また、新人営業担当者が入社してきたときには、効率的なOJT教育(On the job training:現場での指導)とOFFJT教育(座学での学習)が可能となるなどのメリットもあります。
【営業担当者の1週間の行動を調べてみる】
営業担当者の1日の行動、週間行動などを分析してみましょう。行動を分析することで、本来の営業活動以外の業務が意外に多いことに気づくはずです。また、前述した優秀な営業担当者と平均的な営業担当者との行動パターンを比較してみることで、優秀な営業担当者の特性が見えてくるのではないでしょうか。たとえば、訪問経路が効率的に組まれている、重要な顧客に対して重点的に訪問されている、内勤業務が少ないなどが考えられます。これらの特性を参考にすることで、ほかの営業担当者への教育に活かすことができます。
【営業活動の比率を高める】
業績を改善するには、顧客との商談時間を最大にすることが重要です。具体的には、
- 内勤業務を減らして外勤時間を増やす(営業担当者でなくても対応できる見積書の作成、DM送付、事務処理などを内勤社員や事務員が行う)
- 顧客分担の見直し(成績の高い営業担当者が将来性の高い顧客に対応する)、直行・直帰制を導入し、移動時間を減らす(移動時間を減らすことで、営業活動時間を増やす)
- 提案書や見積書の作成など商談準備の業務を標準化する
などが考えられます。
【成長性の高い顧客への営業活動を重点的に行う】
営業活動は、成長性の高い顧客に対して重点的に行わなければ、効率的な売上拡大につながりません。将来的に拡販が可能な顧客かどうか、売上規模が大きいかどうか、などを参考に、顧客ごとにランクを付けてみましょう。顧客ランクの高い顧客に対しては、訪問頻度や販売促進、価格などを優遇することで、効率的な営業活動を目指しましょう。
【情報の共有化を図る】
顧客やキーパーソンの情報、進行中の商談の進捗状況、よく活用する提案書や見積書の雛形、過去の相談の成功事例や失敗事例などをデータベースとして情報共有し、全社的に情報を最大限に発揮できるようにしましょう。
以下に、情報共有化に関する課題と対応策の基本についてまとめました(表1)。
なんといっても日常的な「報連相」が大切です。
- 回答者
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中小企業診断士 渋谷 雄大