ビジネスQ&A
長期間倉庫に残っている材料(在庫資材)を何とかしたいのですが、よい方法がありましたら教えてください。
3年前につくった製品の材料(資材)が、倉庫にたくさん残っています。廃棄するのがもったいなくて、そのままにしていましたが、そろそろ保管スペースがなくなってきてしまいました。この在庫資材をどうしたらよいでしょうか?
回答
現在未使用の資材を倉庫に保管しておくことには、たくさんのデメリットがあります。また、このような資材を倉庫からなくすことで生まれるメリットもたくさんあります。そして、未使用の資材を倉庫からなくす方法としては、「廃棄」することがもっとも適切な対応であると言えるでしょう。
【残資材の捉え方】
倉庫に残ってしまっている資材は、どうして残っているのでしょうか。まず、この点を考えてみましょう。
その資材は、特定の製品や顧客専用の資材で、「もしかしたら」リピート注文がくるかもしれない、と思って残しておいたものではないでしょうか。または、オーダー数の間違いや、最低発注単位という制約に縛られて、オーダーしたものの残りということもあるかもしれません。
いずれにしても、在庫として倉庫に残っているのですから、「いまは使わない」資材であることは間違いないでしょう。結論から言うと、このような資材の在庫は、廃棄することがもっとも適切な対応であると言えるでしょう。
廃棄することで、資材購入費用を捨ててしまうような感覚になり、「もったいない」という気持ちになるかもしれませんが、いままで使えなかったものです。これからも使えるようになる可能性は低いと考える方が自然です。むしろ、在庫を廃棄せずにそのままにしておくことの不利益を避けることを考えなければ、資材購入費用以上の出費が続くことになるでしょう。さらに、資材を廃棄することによって生まれるプラスの効果(利益や効率のアップ)を考慮すれば、いつまでも使途に悩んで、倉庫スペースを無駄遣いしていることを、すぐに止める気持ちにもなるのではないでしょうか。
【残資材破棄がもたらす効率の向上】
使用しない資材をそのまま倉庫においておくことで、余計に倉庫代がかかることにはお気づきだと思いますが、倉庫代は、資材を廃棄しても掛かります。資材を廃棄しても倉庫代の回収はできません。ですが、不要な在庫資材を思い切って廃棄することで、倉庫スペースに余裕が生まれるはずです。そのスペースを、ほかに流用することも考えられますが、空いたスペースを埋めるのではなく、空いたスペース分を、ほかの資材の置き場所に回して、それぞれの資材の保管場所に余裕をもたせることも、実はたいへん有効なことなのです。
資材の置き場所に余裕が生まれることによって、倉庫からの資材移動や資材集めの作業効率を上げることが可能になるでしょう。たとえば、資材がすぐに見つけられるように、資材現物を表示するスペースを設けたり、移動用のスペースを広げたりすることで、大型台車を使えるようになり、1回に移動できる量を増やすことができれば、作業効率アップにつながるはずです。
また、残っている資材を、どんなに安くても構わないので、買い取ってくれる方を探すということも考えたくなるかもしれません。ですが、このような対応は、非常に注意をしなければならないことです。
【残資材売却のデメリット】
在庫資材を廃棄するのではなく、売ることで得られるメリットは収入があるということでしょうけれども、デメリットをしっかり考えておきましょう。売った資材によって、競合製品が生まれる可能性があるかもしれません。特定顧客用の資材であれば、当然信用問題にもつながるでしょう。長期保管による性能劣化によって、思いもよらぬクレームに発展することもあるかもしれません。「もったいない」と考えて、より多くの損失につながるようなことを避けるようにしなければならないということです。
【破棄費用の考え方】
さらに、資材の廃棄にも、費用がかかるということを心配されることもあるかと思います。しかし、この廃棄費用と、これからも続く倉庫代とでは、どちらが大きいでしょうか。廃棄費用を払ってでも、無駄な資材を処分して次の利益貢献対策につなげるか、倉庫代を払い続けてでも廃棄費用の出費をさけるのか、どちらが得策と言えるでしょうか。
在庫となっている資材を廃棄することは、勇気のいることかもしれませんが、このように、在庫をそのままにしておくことのデメリットや、利益・効率アップにつながる改善の機会損失の面を考え合わせると、廃棄という選択の有効性も十分にご理解いただけるのではないでしょうか。
もちろん、「残資材は廃棄する」ということが常に最善のルールではありません。残資材を廃棄しなければならなかったということは、本来、大きく反省しなければならない点です。問題を明確にして、十分に反省し、次の段階である、資材在庫をつくらないための取り組みを考えていきましょう。
- 回答者
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中小企業診断士 小林 弘幸
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