研究開発
医工連携イノベーション推進事業(開発・事業化事業)
2023年1月内容改訂
中小企業のものづくり技術はわが国が誇るものの1つですが、医療現場への導入は欧米諸国に比べて遅れており、医療機器産業は輸入超過で推移しています。これは、(1)開発に時間を要することが多い、(2)生命に直接かかわる分野のため製造物責任が重く、参入リスクが高い、(3)医療現場の有するニーズがものづくり現場に行き届いていない、といった点が要因として挙げられます。一方で、医療分野の活性化は、わが国の成長戦略の大きな柱となっており、医療機器産業の活性化が求められています。
これらを背景として、中小企業のものづくり力を活用し、医療現場等における課題解決に寄与する医療機器の実用化を推進することを目的に、経済産業省によって、平成22年度より「課題解決型医療機器等開発事業」が実施されました。その後、平成26年度からは、医療現場等における課題の選定とそれに対応する医療機器の開発・改良をより戦略的に行うために「医工連携事業化推進事業」として実施し、平成27年度からは新たに設立された「国立研究開発法人日本医療研究開発機構(Japan Agency for Medical Research and Development、通称:AMED)」に引き継がれました。さらに、令和2年度からは特に国際競争力のある日本初の高度管理医療機器の開発や、ベンチャー企業参入を促進する目的で、「医工連携イノベーション推進事業」として実施されています。
ここでは、「医工連携イノベーション推進事業」の2本柱である、開発事業としての「開発・事業化事業」と、ソフト支援事業としての「医療機器開発支援ネットワーク」のうち、「開発・事業化事業」についてご紹介します。医療機器の開発・事業化における課題を解決したい場合は、「医療機器開発支援ネットワーク」をご参照ください。
「医工連携イノベーション推進事業」(開発・事業化事業)の概要
この制度は、高度なものづくり技術を有する中小企業・ベンチャー企業等の医療機器分野への新規参入や、医療機関との連携・共同事業を促進することで、わが国の医療機器産業の活性化と医療の質の向上を実現することを目的としています。安全性の向上や操作性の向上等、医療現場における課題を選定し、それに応える医療機器を開発・改良するために、金銭的な補助と事業の推進にあたっての助言を行うものです。
補助事業の対象となるのは、下図の点線の範囲です。開始時には開発する機器のターゲットや基本的な事業戦略がまとまっており、終了時には薬事申請の目処がつくような提案が想定されています。
また、令和元年度からは、医療機器開発を目指したベンチャー企業、とりわけ設立して日の浅いベンチャー企業を支援する「医工連携イノベーション推進事業(開発・事業化事業(ベンチャー育成))」が実施されています。本事業は医療機器スタートアップとしての形を整えることを目標とし、直接経費2,000万円程度を最長2年間補助するものとして公募が行われています。
ベンチャー育成事業の詳細については、AMEDホームページの「医工連携イノベーション推進事業(開発・事業化事業(ベンチャー育成))」に係る公募のページを参照ください。以下では、本事業の柱となる補助事業について解説します。
本事業の対象
本事業は「ものづくり中小企業」、「製造販売企業」、「医療機関」を含んだコンソーシアム(共同体)を構成した体制で実施することを条件としています。コンソーシアムは、研究開発代表者が所属する1つの「代表機関」と、研究開発分担者が所属するその他の「分担機関」により構成します。コンソーシアムの構成員のうち、企業の場合は国内に本社を置き、かつ国内で機器の開発や製造を行うことが必要です。
なお、代表機関はAMEDから直接補助金の交付を受けることになり、民間企業に限定されます。代表機関は対象となる医療機器の事業化の主体となり、上市後まで責任を持って遂行することが求められます。また、代表機関及び分担機関は応募時までにe-Rad(府省共通研究開発管理システム)に登録されている必要があります(他制度・他事業で登録済みの場合は再登録不要)。
また、応募対象となるのは、医薬品医療機器等法(通称:薬機法)における医療機器に該当するものであって、公募研究開発課題のいずれかに該当するものに限られます。公募課題は年度によって異なる場合がありますので、活用を検討する場合はAMEDのホームページ公募情報より最新の情報をご確認ください。
補助の内容
補助の対象となる分野や補助対象経費の規模は、下図のとおりです(令和5年度の場合)。
補助対象経費は令和5年度の場合、直接経費年間6,000万円までが対象となっています。補助率は2/3ですので、1事業あたり年間で最大6,000万円の直接経費に対し、4,000万円の補助を受けることが可能となります。補助期間は3年程度となっていますが、補助金の交付決定通知は単年度ごとに行われますので、年度が変わる際に継続にあたっての条件を満たしている必要があります。なお、2年目以降に治験を実施する場合は、補助対象経費の上限が1億1,500万円となっています。
令和5年度の新規採択課題予定数は最大9課題程度となっています。手続き方法、提案書類の様式等、必要な資料の様式はAMEDのWebサイトの公募情報からダウンロードが可能ですが、e-Rad(府省共通研究開発管理システム)を通じた応募が必須となっており、郵送や持ち込みは受け付けていません。事前にe-Radに登録済みの代表機関が申請を行ってください。提案書類の受理確認もe-Rad上で行うことが可能です。
まとめ
- 「医工連携イノベーション推進事業」は、「開発・事業化事業」と「医療機器開発支援ネットワーク」の2本柱で構成される
- 「開発・事業化事業」は、医療現場における課題に応える医療機器の開発・改良を目的とし、補助を行う
- 令和元年度から「医工連携イノベーション推進事業(開発・事業化事業)(ベンチャー育成)」が開始された
- 補助事業は「ものづくり中小企業」、「製造販売企業」、「医療機関」の3つを含むコンソーシアム(共同体)としての実施が必須
- 提案は年度ごとの公募研究課題に該当する必要がある
- 補助金は直接経費の2/3について交付される
- 申請は代表機関がe-Rad(府省共通研究開発管理システム)を通じて行う