研究開発

医工連携グローバル展開事業

2025年9月内容改定

日本政府が打ち出した健康・医療戦略に基づき、令和7年度から「医工連携グローバル展開事業」(旧・医工連携イノベーション推進事業)が実施されています。同事業には、研究開発事業、国際展開伴走支援事業、グローバル進出拠点事業の3つがあり、米国をはじめとする国際展開を見据えた医療機器開発を行う中小企業やスタートアップに対して開発支援を行います。

医工連携グローバル展開事業とは

日本政府が2025年2月に閣議決定した健康・医療戦略(令和7年2月18日閣議決定)では、基本理念として「世界最高水準の技術を用いた医療の提供への寄与」と「経済成長への寄与」の2つを挙げています。これを受けて、令和2年度から国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)の下で実施されてきた「医工連携イノベーション推進事業」が、令和7年度(2025年度)から「医工連携グローバル展開事業」に改められて、事業が継続されています。

<事業内容>
  1. 研究開発事業(補助事業)
    米国をはじめとする国際展開を見据えた医療機器開発を行っている中小企業やスタートアップに対して開発支援を行う事業です。
  2. 国際展開伴走支援事業(委託事業)
    研究開発事業の効果を高めるために、米国をはじめとした国際展開するにあたり、規制・許認可等に対応するための専門家による支援を行うものです。また、実用化やグローバル展開のために、大手企業等との連携の強化や、アクセラレーション(加速)を促進する環境の構築も行います。
  3. グローバル進出拠点事業(委託事業)
    地域の医療機関と中小企業・スタートアップの連携による医療機器開発を促進するため、医療機器開発の専門的知識を有する事業化人材等を配置した地域連携拠点を設け、医療機関の医療ニーズと中小企業の技術マッチングの推進等を行う事業です。

これら3つの事業のうち、医療機器の実用化、グローバル展開を目指している中小企業・スタートアップは、1.研究開発事業(補助事業)に応募することができます。それぞれの事業の概要や補助額、応募資格者について、次項から詳しく見ていきます。

研究開発事業(補助事業)

研究開発事業(補助事業)は、臨床試験等を通したコンセプト実証やエビデンス構築により、米国をはじめとする海外展開に必要な製品競争力の強化を目指して補助を行うものです。

なお、医療機器開発は主に「Ⅰ.基礎研究(原理確認)」「Ⅱ.製品開発」「Ⅲ.非臨床」「Ⅳ.臨床(治験・臨床研究)」の4つのステージで進められますが、この事業では「Ⅲ.非臨床」「Ⅳ.臨床(治験・臨床研究)」のステージに達している医療機器開発が対象になります。

(1)対象となるテーマ

補助の対象になる分野、領域、テーマ等は次のいずれかです。

(A)日常生活における健康無関心層の疾病予防、重症化予防に資する医療機器

(B)予後改善につながる診断の一層の早期化に資する医療機器

(C)臨床的なアウトカム(治療結果)の最大化に資する、個別化医療に向けた診断と治療が一体化した医療機器

(D)高齢者等の身体機能の補完・向上に関する医療機器

(E)医療従事者の業務の効率化・負担軽減に資する医療機器

(F)従来にはない革新的な治療や、低侵襲(体への負担を少なくする)治療の実現

(G)従来にはない革新的な診断や、高度化・簡素化された画像・光学診断の実現

(2)補助対象経費・補助率

補助対象経費(間接経費を含まず)は「非臨床」と「臨床(治験・臨床研究)」のどちらのステージにあるかにより異なります。補助率はともに、1課題あたり3分の2です。

ステージ

補助対象経費(間接経費を含まず)・補助率

非臨床

1課題あたり
年間:7,000万円(上限)
補助率:2/3

臨床(治験・臨床研究)

1課題あたり
年間:1億円(上限)
補助率:2/3

(3)応募資格者

応募資格者の要件は以下になります。

● 次の1~7の要件を満たす国内の研究機関等に所属し、主たる研究場所としていること

  1. 民間企業の研究開発部門、研究所等に所属していること
  2. 課題が採択された場合に、課題の遂行に際し、機関の施設および設備が使用できること
  3. 課題が採択された場合に、契約手続等の事務を行うことができること
  4. 課題が採択された場合に、本事業実施により発生する知的財産権(特許、著作権等を含む)および研究開発データの取り扱いに対して、責任ある対処を行うことができること
  5. 本事業終了後も、引き続き研究開発を推進するとともに、AMEDの追跡調査等の求めに応じて協力すること
  6. スタートアップ企業等については、財務状況の健全性が確認できること
  7. 専任の経理担当者を置くことができること

● 応募に係る研究開発課題について、研究開発実施計画の策定や成果の取りまとめ等の責任を担う研究者(研究開発代表者)であること

● 共同体として「中小企業」、「製造販売業許可を有する企業」、「医療機関」を置くこと
なお、医療機関を代表研究機関とすることはできません

※(1)~(3)の条件等は、公募ごとに変更される場合があります。詳細はAMEDホームページの公募要領をご確認ください

国際展開伴走支援事業(委託事業)

米国をはじめとする先進国で研究開発事業を展開するためには、知財・法務等の課題や、国際展開に関する規制・許認可等に対応する必要があります。そのために、国際展開伴走支援事業では、専門コンサルによる伴走コンサル等を行い、切れ目のない支援を実施します。また、日本発の革新的医療機器の実用化やグローバル展開のために、大手企業との連携強化等も行います。

(1)研究開発費の規模

研究開発費の規模(間接経費を含まず)は、1課題あたり、年間1億7,500万円(上限)です。

(2)応募資格者

応募資格者の要件は以下になります。

● 次の1~6の要件を満たす国内の研究機関等に所属し、主たる研究場所としていること

  1. 大学および同附属試験研究機関等、民間企業(*)、研究を主な事業目的としている社団法人・財団法人等の研究機関に所属していること
    * プライバシーマークまたは情報セキュリティマネジメントシステムを取得しており、かつ個人情報保護体制が整備されていることが必要
  2. 課題が採択された場合に、課題の遂行に際し、機関の施設および設備が使用できること
  3. 課題が採択された場合に、契約手続等の事務を行うことができること
  4. 課題が採択された場合に、本事業実施により発生する知的財産権(特許、著作権等を含む)および研究開発データの取り扱いに対して、責任ある対処を行うことができること
  5. 本事業終了後も、引き続き研究開発を推進するとともに、AMEDの追跡調査等の求めに応じて協力すること
  6. スタートアップ企業等については、財務状況の健全性が確認できること

● 応募に係る研究開発課題について、研究開発実施計画の策定や成果の取りまとめ等の責任を担う研究者(研究開発代表者)であること

※(1)、(2)の条件等は、公募ごとに変更される場合があります。詳細はAMEDホームページの公募要領をご確認ください

グローバル進出拠点事業(委託事業)

グローバル進出拠点事業は、地域の医療機器開発支援拠点の機能をさらに強化して、グローバル進出の拠点を確立するための支援事業です。

主に次の3点について体制の整備を行います。

  • 医療機器開発における専門的知識を有する事業化人材等の拠点内配置や育成、あるいは拠点外人材との連携体制の構築
  • 経済産業局、他の地域の医療機器開発支援拠点、「令和6年度 地域連携拠点自立化推進事業」および「優れた医療機器の創出に係る産業振興拠点強化事業」の採択拠点等との連携による、シーズ(技術やアイデア)とニーズのマッチングを推進できる共同体構築
  • 海外の医療機器開発支援拠点等との連携による、ターゲットとする国・地域や患者セグメントに対応した診断や治療に活用されることを見据えた、医療機器開発の事業化を促進できる共同体構築
(1)研究開発費の規模

研究開発費の規模(間接経費を含まず)は、1課題あたり年間2,600万円(上限)です。

(2)応募資格者

国内の研究機関等に所属する研究開発代表者で、次の要件を満たす者です。

応募資格者の要件は以下になります。

● 次の1~5の要件を満たす国内の研究機関等に所属し、主たる研究場所としていること

  1. 医療機器開発・事業化の支援を主な事業目的としている社団法人・財団法人、独立行政法人、商工会議所等の認可法人の研究機関等に所属していること
  2. 課題が採択された場合に、課題の遂行に際し、機関の施設および設備が使用できること
  3. 課題が採択された場合に、契約手続等の事務を行うことができること
  4. 課題が採択された場合に、本事業実施により発生する知的財産権(特許、著作権等を含む)および研究開発データの取り扱いに対して、責任ある対処を行うことができること
  5. 本事業終了後も、引き続き研究開発を推進するとともに、AMEDの追跡調査等の求めに応じて協力すること

● 応募に係る研究開発課題について、研究開発実施計画の策定や成果の取りまとめ等の責任を担う研究者(研究開発代表者)であること

※(1)、(2)の条件等は、公募ごとに変更される場合があります。詳細はAMEDホームページの公募要領をご確認ください

中小企業の医工連携グローバル展開事業を活用した成果例

医工連携グローバル展開事業を活用することによって、製造販売や薬事承認等を取得する等、さまざまな中小企業が成果を上げています。例えば、前身の医工連携イノベーション推進事業では、2024年に次のような成果を挙げています。

  • カーブジェン株式会社が開発した「細菌感染症菌種推定支援AIソフトウェアBiTTE®-Urine」が、管理医療機器プログラムとして製造販売の承認を取得
  • 株式会社レナサイエンスが開発した糖尿病患者のインスリン投与量を予測する人工知能(AI)の臨床性能試験を開始
  • 株式会社Jmeesが開発した「内視鏡手術支援プログラムSurVis-Hys」が医療機器承認を取得

医工連携グローバル展開事業の応募は、府省共通研究開発管理システム(e-Rad)から受け付けています。また、詳しい公募についての案内はAMEDのホームページで確認できます。

まとめ

  1. 政府が閣議決定した健康・医療戦略では、医療の提供と健康長寿社会の形成に資する新たな産業活動の創出に加えて、海外展開を促進することも目標としている
  2. 令和2年度から行われていた「医工連携イノベーション推進事業」は、令和7年度から「医工連携グローバル展開事業」に改められ、事業が継続されている
  3. 医工連携グローバル展開事業として、研究開発事業、国際展開伴走支援事業、グローバル進出拠点事業の3つが行われており、医療機器の実用化・グローバル展開を目指す中小企業は、研究開発事業に応募することができる
  4. 研究開発事業は、医療機器開発が「非臨床」または「臨床(治験・臨床研究)」のステージにある場合のみ対象となる