研究開発
特許情報プラットフォーム(J-PlatPat)
2020年1月内容改訂
資金力に限りのある中小企業では、研究開発を効率的に行うことが重要です。また、訴訟リスクを徹底的に回避することも考えなければなりません。他社の技術情報や権利情報に通じておくことは、中小企業にとっても欠くことができません。
他社の技術情報や権利情報の重要性
なぜ、他社の技術情報や権利情報が重要なのでしょうか。その理由はいくつかありますが、(1)効果的な研究開発の実行と(2)他社権利侵害リスクの回避に大きく分けられます。
(1)効果的な研究開発の実行
研究開発は成果が確実に出るものではありません。少ない資金で研究開発を行う中小企業では、複数の研究開発を並行して進めることも難しいでしょう。したがって、より成果のありそうな研究開発を選択して実行していくことが必要です。この「より成果のありそうな研究開発の選択」に他社の技術情報を活用することができます。活用方法は以下のとおりです。
ア. そのテーマの研究開発動向や技術動向の把握
自社ですべての研究開発を行うことは、資金、時間の面から考えて現実的ではありません。そこで、現時点でどのような技術があるのか、これから解決しなければならないことは何か、そのテーマにどのような企業が取り組んでいるのか、といった情報を得ておくことが重要になります。
イ. 競合企業の研究開発動向や技術動向の把握
自社の競合企業がこれから何をしようとしているのかを早期につかむことも重要です。競合企業の狙いを読み解き、自社を差別化していく手立てを得るために、競合他社が現在行っている研究開発の動向を確認しておくことは有用です。
ウ. 自社の技術を活用できる新たなテーマの発掘
中小企業では、単一の業界のみと取引していることが多いです。しかし、その業界向けに開発した技術は、他の業界にも適用できる可能性があります。自社技術を活かしたより利益を生み出せるテーマが、別の業界にあるかもしれません。
エ. 自社の技術を求めていそうな取引先の探索
他社の技術情報には、その他社が解決したい「困りごと」が書いてあります。この困りごとを見つけ出し、自社で解決することができれば、その企業との取引につなげることも可能でしょう。
(2)他社権利侵害リスクの回避
このような技術情報は、各企業が善意で公開しているわけではありません。自社の技術情報を知的財産権として保護するために公開しているのです。他社の保護された知的財産権を侵害してしまうと、自社の経営に大きなダメージを与えることになります。したがって、他社の権利を侵害しないよう、技術情報や権利情報を把握しておく必要があります。
特許情報プラットフォーム(J-PlatPat)とは
「特許情報プラットフォーム」は、無料で利用可能な知的財産データベースです。この特許情報プラットフォームにより、研究開発動向や技術動向の把握に役立つ、特許・実用新案・意匠・商標に関する情報を得ることができます。
- https://www.j-platpat.inpit.go.jp/web/all/top/BTmTopPage 特許情報プラットフォーム(J-PlatPat)
以下に、J-PlatPatを用いた検索方法を簡単にご説明します。
特許・実用新案を調べる
まずは、特許・実用新案の調べ方を見ていきます。J-PlatPatのトップ画面で、「特許・実用新案」にカーソルを合わせると、以下のようにメニューが開きます。この中の「特許・実用新案検索」をクリックします。
すると、次のような検索画面が開きます。選択入力と論理式入力の2つの入力方法がありますが、まずは選択入力で検索をするとよいでしょう。「検索項目」を選択し、「キーワード」を入力して「検索」をクリックすると、検索結果を得ることができます。
(1)技術情報から調べる
その技術に関するキーワードで検索する方法です。「検索項目」で「発明・考案の名称/タイトル」、「要約/抄録」、「請求の範囲」、「明細書」のいずれかを選択し、目的のキーワードを「キーワード」に入力します。検索項目が複数ありますが、おおむね上に記載した順に検索結果の件数が増えます。キーワードは1つの表現だけでなく、さまざまな表し方ができることが多く、多面的に調べるほうが良い情報を得られます。
(2)競合企業から調べる
競合企業がどのような技術を開発しているのかを調べるには、「検索項目」で「出願人/権利者/著者所属」を選択します。「キーワード」に企業名を入力する際は、「株式会社」等の有無で検索結果が変わることがあるため、注意が必要です。
(3)調べる際の注意点
検索件数が多くなりすぎるときは、キーワードを見直すほかに、時期で絞り込むことが有効です。「検索オプション」の「出願日」、「公開日」、「登録日」等を選択し、期間を指定します。
意匠を調べる
J-PlatPatのトップ画面で、「意匠」にカーソルを合わせ、「意匠検索」をクリックします。
調べ方は基本的に、特許・実用新案と同じです。意匠は「物品」(どのような物か)と「形態」(どのような形か)で特定されるという特徴がありますが、「物品」で調べることが多いでしょう。
(1)キーワードで調べる
「検索項目」で「意匠に係る物品/物品名/原語物品名」を選択し、「キーワード」にその名称を入力して調べます。
(2)分類から調べる
意匠では、物品を複数のグループに分類して整理していますが、このグループ単位で調べることもできます。以下の分類リストから目的の物品の分類を探し、「検索項目」の「日本意匠分類/Dターム」や「旧日本意匠分類」「旧Dターム」「国際意匠分類(ロカルノ分類)」を選択して、「キーワード」にその分類をハイフンなしで入力します。
商標を調べる
商標には、文字や図形等、さまざまなものがあります。企業名から調べる方法や件数の絞り方は特許と同じです。ここでは、文字商標と図形商標の調べ方を見ていきます。
(1)文字商標を調べる
商標の文字や読み方がわかる場合は、キーワードで検索が可能です。J-PlatPatのトップ画面で「商標」にカーソルを合わせ、「商標検索」をクリックします。
「検索項目」で「商標(検索用)」や「称呼(単純文字列検索)」を選択し、「キーワード」に目的の文字や読み方を入力して調べます。
(2)図形商標を調べる
図形商標を調べる場合には、図形の分類を用います。「検索項目」で「図形等分類」を選択し、キーワードに目的の図形等分類を入力して検索を行います。図形等分類は、「図形等分類表」から探します。
まとめ
- 他社の技術情報や権利情報は、「特許情報プラットフォーム(J-PlatPat)」で調べることができる
- 技術情報や権利情報はキーワードで検索するのが基本となる。企業を限定する場合は出願人や権利者で検索をする。
- 分類を活用した高度な検索も可能である。キーワード検索で分類の当たりをつけてから、分類検索をするとよい。