闘いつづける経営者たち

「鵜殿直子」株式会社ウドノ医機(第4回)

04.「社員が辞めない会社」が目標

ウドノ医機は2013年秋に新シリーズ「UMシリーズ」を投入した。「どこの会社にも負けない装置を作った」(鵜殿直子社長)。日々忙しい医療現場で使われる装置が、看護師ら作業者にとってどうしたら更に使いやすくできるかを追求し、社運をかけて開発に力を注いだ製品だ。しばらくは経営再建を優先したこともあり、久しぶりの大幅に刷新した新製品の投入だ。

販売よりもサービスを強化

ウドノ医機が近年、顧客ニーズをしっかりくみ取った製品作りを意識した成果が、着実に形になりつつある。ウドノ医機では設計担当は製造部に、開発担当は営業部に所属する。本来は製造部に所属することが多い開発を営業部に置いたのにはウドノならではの思いがある。「どうしても設計ばかりだと外が見えなくなる」(直子社長)。開発担当を展示会、営業に同行させて顧客のニーズや意見を直接聞くことで、今まで見えなかったものが見えてくるためだ。

また、近年注力しているのがサービスメンテナンス部門だ。販売、製造、設計よりも「サービスメンテナンスが一番お客さまに近いところにいるし、長いおつきあいができる」(同)との思いがあるからだ。修理はもちろん、点検・保守などのメンテナンスは自社でかけつける。応急処置や1次修理は販売代理店が駆けつけることもあるが、ほとんどのケースはウドノ医機の社員が直接出向いて修理する。

現在、サービスメンテナンスは全体の売上高の約30%を占め、業績を安定させる基盤となった。販売代理店を開拓するなど、販売網の拡大よりも納入先に対してきっちりサービスできることを優先させてきた。今後は人材育成を含めて、サービス部門をさらに拡充しようとしている。

女性の視点も生かす

社長への就任で男女の意識はなかったが、経営トップとして女性ならではの細やかな視点は常に意識している

「社長になったのは周りの方のおかげなんです」

一時は会社存亡の危機も味わった直子社長。オーナー会社ということもあり、幼い頃から“社長”と言われながら育ち、気持ちの準備はできていた。4年前に社長になったとき、外部の人から「ベンチャーの社長になったつもりで業務をやらなくてはいけないよ」と言われた。

社長になるにあたって「男、女を自分が意識したことはない」と言う。ただ、女性ならではのこまやかな視点は常に意識している。「もともと重箱の隅をつつく人間」と社員に対しても細かく「報・連・相」も徹底している。これにより社員がPDCA(計画、実行、評価、改善)サイクルの中で、常に何を改善するのかを考えることを意識づけている。ウドノ医機が中小企業で今後も滅菌装置を作りつづけていくために、何が必要なのかを女性の視点で見ることも大切にしている。

社員に恩返しを

社長としての仕事は、回りのみんながどう仕事がしやすいように運営できるか。目標は「社員が辞めない会社をつくりたい」と言い切る。売上を上げ利益を確保しながら、辞めない社員を育て続ける。そのため直子社長は、自分なりのモチベーションや自分の考えている事を常に社員に語りかけている。

「6年前の大変だったときに命を救ってくれたのは社員だと思っている」

いかに社員と会社に恩返しをできるか。直子社長の経営者としての挑戦はまだ続いていく。

プロフィール

鵜殿 直子 (うどの なおこ)

1961年生まれ。1983年に国士舘大学を卒業後、八王子市内の旋盤加工企業で1年間アルバイトし、機械加工技術や企業内部統制を学ぶ。1986年にウドノ医機に入社。2年間、製造や営業、メンテナンス、経理などを経験し1996年に専務、2010年に社長に就任。「社員資格取得推進による多能工育成」「見える数値化による業務改善」「それらによって得た利益を社員に還元する」をモットーとする。ビジネスでは「石橋を叩いて渡る」性格であるが、プライベートでは「超短気、せっかち」と自己分析。休日はもっぱら2頭の愛犬との散歩。愛犬たちとGT-Rに乗り、国内巡りをするのが将来の夢とか。

企業データ

企業名
株式会社ウドノ医機
Webサイト
資本金
5,000万円
所在地
東京都八王子市元横山町2-1-9
事業内容
高圧蒸気滅菌装置、酸化エチレンガス滅菌装置などの設計・製造・販売・メンテナンス
売上高
21億1,000万円(2013年8月期)

掲載日:2014年4月21日