闘いつづける経営者たち
「日野佳恵子」株式会社ハー・ストーリィ(第2回)
02.口コミであっという間に会員が1万人になる
現代社会では7割の女性が働き、専業主婦を務める女性は3割という。が、ハー・ストーリィの創業時(1990年)はその数字がそっくり逆転していた。女性の7割が専業主婦であることから、消費財の購買決定権は圧倒的に主婦が握っていた。
その主婦の声を商品や売場に反映させようと目論んで日野佳恵子社長が起業したハー・ストーリィは、広島市内にワンルームマンションを借り、資本金300万円の有限会社として産声をあげる。広告代理店で席を同じくした佐藤緑さんとの共同経営。2人の子供を抱えながらクリエーターとしてパートタイマーで働いていた佐藤さんと志が通じ合って開業にこぎつけた。
しかし、いくら「主婦の声」と力んでみても、開業当初は当然のごとくどの企業にも見向きもされない。そこで日野さんたちは考えた。「見向いてもらうには、消費者の声を数で実証するしかない」と。
そこで主婦をコミュニティとして組織化しようと考え、チラシのポスティングはもちろん保育園や幼稚園に出向いて呼びかけた。これがいきなり奏功する。たちまち300人ほど集まり、さらにそれが口コミで広がって3カ月後には1000人を突破。それに目を着けた地元の新聞が、主婦の声が世の中を変えるというような主旨の紹介記事を掲載したこともあって、1年後には1万人の規模まで組織が膨れあがった。
巨大な主婦組織が立ち上がった
広島は典型的な支店都市。四年制大学を卒業後、東京や大阪でOLだったが、結婚・退職で専業主婦になり、夫の転勤で広島に移住、社会参加の機会が断たれて鬱々とした日々を送る女性が少なくなかった。
最初は新しい食品が試食できる、紙おむつなどの新商品がもらえるといった単純な興味本位にすぎなかった女性たちの関心は、やがて「主婦の声が企業に届けられる」という参加意識に高まっていった。
巨大な主婦組織が出来上がると、企業としてももはやその存在を無視できない。1万人の主婦の声は魅力的なマーケティングツールだ。当初のクライアントは地元・広島の企業が中心だったが、やがてナショナルブランドのメーカーへと顧客層が広がっていく。
「最初のうちはどの企業を回っても、大手広告代理店との強固な取引関係が出来上がっていたので、けんもほろろの対応でした。やっと発注してもらえるようになっても大手広告代理店の下請けで直接の発注はなく、創業から7~8年はそんな状態が続きました」
下請け的立場でのビジネスが続いたが、それでも広島が静岡と並ぶテストマーケティングの拠点都市だったこともあり、徐々にナショナルブランドのメーカーへもクライアントを広げ始めていった。
プロフィール
日野 佳恵子 (ひの かえこ)
広告代理店勤務を経て1990年に広島市で有限会社ハー・ストーリィを創業。主婦をターゲットとしたマーケティング・コンサルティング事業を立ち上げ、2000年にwebサイトでの会員登録制を実施したことで会員数が急増し、同年、株式会社に組織変更する。会員組織は10万人規模に成長したが、その原動力となったwebアンケートサイトは売却し、現在はSNSに女性視点のコミュニティを複数設け、現在のネット社会に即応したビジネスモデルで女性の購買心理・行動を企業にコンサルティングする。
企業データ
- 企業名
- 株式会社ハー・ストーリィ
- Webサイト
- 資本金
- 7960万円
- 所在地
- 東京都港区六本木5-11-25 鳥居坂アネックス5F
- 事業内容
- コンサルティング
- 売上高
- 2億円
掲載日:2014年3月20日