闘いつづける経営者たち

「久田眞佐男」株式会社日立ハイテクノロジーズ(第4回)

04.新事業創生、統合から融合へ

3件動き出す

薬物検査に使う質量分析装置。新規事業のひとつ。大きさを10分の1程度に小型化して持ち運びを可能にした

「新規事業の育成は最重点事項のひとつ」。久田眞佐男社長はこう強調する。経営戦略本部内には新事業を創生する部隊を設置。事業化のめどがつけば全社横断のプロジェクトを組織する。

現在3件のプロジェクトが具体的に事業化に向けて動き出している。年度内に第一弾として、覚せい剤や麻薬などを検出できる小型の質量分析計を製品化する予定だ。価格や重量を通常の質量分析計の10分の1以下に抑えながら、尿中の薬物などを1000万分の1の濃度まで調べられるのが特徴だ。質量分析計は日立ハイテクの中核事業のひとつ。イオン源や分析モジュールのサイズを見直すことで、装置自体の小型化に成功した。

3分の1を入れ替え

2020年度には10年度の売上構成比で全体の3分の1が新規事業になる見通し(同社資料より)

20年度は10年度と比べた場合、全体の3分の1を新規事業に入れ替える目標を掲げる。半導体製造装置などエレクトロニクス関連の売上比率は現在の6割超から5割以下になる見通しで、久田社長は「2020年度には収益構造は大きく変わっている」と述べる。10年後は医用や環境で新たなビジネスを打ち立てている可能性が高い。「既存技術の応用もあるし、全く新たに始める事業もある」と手の内を少しだけ見せる。

真の融合へ

新技術の方向性については新事業創生のためにM&Aも否定しないが、「コア事業を磨くことが重要」と強調する。新事業創生を担当する松坂尚執行役常務も「コア技術から派生すれば、統一性はなくてばらばらでいい」と語る。実際、日立ハイテクの製品群は、一見、ばらばらに見えても、電子線と光学技術を軸に「見たり、計ったりする分野」から現在はぶれていない。

久田社長は「当社は統合から融合のステージにきている。融合にもう10年はかけられない」と檄を飛ばす。メーカー部門と商事部門、メーカー部門内の各開発部隊内の真の融合への種まきは終わりつつある。「ひとつの日立ハイテク」の新たな挑戦が始まった。

プロフィール

久田 眞佐男 (ひさだ まさお)

1972年(昭47)東大経卒、同年日立製作所入社。01年日立(中国)総経理、04年日立アメリカ社長、06年調達統括本部長、07年執行役常務、10年4月日立ハイテクノロジーズ執行役副社長、6月取締役兼務、11年社長。群馬県出身、1948年12月生まれ。趣味はゴルフ。座右の銘は「一期一会」。

企業データ

企業名
株式会社日立ハイテク(旧:株式会社日立ハイテクノロジーズ)
Webサイト
設立
1947年
資本金
79億3848万円
所在地
東京都港区西新橋1の24の14
Tel
03-3504-7111
事業内容
半導体製造装置、汎用分析機器、医用分析装置の製造販売および工業材、ITシステムの販売
売上高
6459億円(12年3月期)

掲載日:2012年7月5日