闘いつづける経営者たち
「野地彦旬」横浜ゴム株式会社(第4回)
04.低燃費タイヤをグローバル展開
ラベリング制度が契機
タイヤが回転する際に進行方向と逆向きに生じる抵抗力、さらにぬれた路面でのグリップ力、この二つの性能を等級分けしタイヤへの明示を義務つけるラベリング制度が、先進国を中心に導入されつつある。低燃費タイヤの基準となるものだ。世界規模で、タイヤの低燃費化への要求は高まっている。日本では2010年1月から始まり、欧州では12年11月から導入予定で、米国も検討している。低燃費タイヤのグローバル展開は今後の成長戦略に欠かせない。
横浜ゴムが手がける低燃費タイヤブランド「ブルーアース」。タイヤの転がり抵抗を少なくし、ウェットグリップを高めている。この相反する性能を実現するのがコンパウンド技術「ナノブレンドゴム」。低燃費、ウェットグリップ、耐摩耗性の3つの性能の黄金比をナノレベルで素材からコントロールする。
中でも、従来廃棄されていたオレンジの皮から抽出した「オレンジオイル」の配合は、横浜ゴムならではの技術だ。ナノブレンドゴムの重要素材の一つで、ゴムをしなやかにし、ウェットグリップ性能も向上する。石油系合成ゴムに変わり、地球環境保護とタイヤの性能向上を両立させる素材として活用が進む。
「グローバルブランドとして展開する」。野地社長はブルーアースの海外販売を加速する方針を打ち出している。すでに欧州での販売を始めているが、今後は中国や北米地域で販売も始める予定で、ブルーアースの世界展開が本格化。新商品の開発も活発化し、市販向けにシリーズ最高級モデルとなる「ブルーアース1」、ミニバン用「同RV01」、今年2月には中核商品「同エース」を発売するなど品ぞろえも拡充している。
新車装着用でも実績
ブルーアースは市販用だけでなく、新車装着用(OE)でも実績を増している。昨年末、トヨタ自動車の最新小型ハイブリッド車「アクア」のOEとして採用され、納入を始めた。アクアは全長4メートル以下のコンパクトなボディーに1.5リットルのエンジンと高出力モーターを組み合わせたハイブリッド車で、世界最高の燃費性能を実現している。
横浜ゴムは中期経営計画で19年から20年の間に売上高1兆円、17年までに営業利益で1000億円、営業利益率で10%の目標を掲げる。需要が旺盛な海外での生産を拡大し、コスト競争力を高めつつ、付加価値の高い製品を武器に市場を深耕していく。
野地社長は「街中のパン屋さんのように、ちょっと高くても隣町からわざわざ買いに来てくれるような企業に育てていきたい」と話す。世界でブランドを確立し、きらりと光る存在感を発揮する-。これが浜ゴムの目指す姿だ。
プロフィール
野地 彦旬 (のじ ひこみつ)
1958年10月30日生まれ。神奈川県出身。82年3月早稲田大学理工学部卒業。82年4月横浜ゴムに入社。タイヤの設計から生産、工場運営までメーカーの根幹となるモノづくり全般に携わる。三島工場工場長やヨコハマタイヤフィリピン社長を経て10年6月に取締役常務執行役員タイヤ管掌兼タイヤグローバル生産本部長となり、11年6月に社長に就任した。ゴルフだけでなく水泳、乗馬、スキューバーダイビングまでこなすスポーツマン。
企業データ
- 企業名
- 横浜ゴム株式会社
- Webサイト
- 設立
- 大正6年(1917年)10月13日
- 資本金
- 389億9百万円(2011年3月末現在)
- 所在地
- 東京都港区新橋5丁目36番11号
- 事業内容
- タイヤの製造販売
- 売上高
- 5,197億4千2百万円(2011年3月期・連結)
掲載日:2012年3月5日