闘いつづける経営者たち
「杉本 健司」シチズンマシナリーミヤノ株式会社(第2回)
02.新興国市場を開拓せよ
熾烈極める競争環境
「新興国市場の伸びは爆発的。その中で圧倒的にプレゼンス(存在感)が低い」-。シチズンマシナリーミヤノの杉本健司社長は現状に強い危機感を抱く。
4月に誕生したシチズンマシナリーミヤノ。新会社の成長戦略にとって最重要テーマとなるのが新興国市場の開拓だ。日本、欧米企業の新興国シフトに加え、現地企業が急速に成長。現地の投資意欲は引き続き旺盛だ。当然、工作機械メーカーの競争環境は熾烈を極めており、競合他社に先んじて事業機会を掴むという危機感が、シチズンマシナリーミヤノの新興国シフトを猛烈に後押しする。
世界650台体制に拠点を拡充
中国山東省にある西鉄城(中国)精密机械(CCM)。シチズンマシナリーの製品ブランド「シンコム」とミヤノの製品ブランド「ミヤノ」の低価格機の製造を担う主力工場だ。04年に製造を開始。10年秋に第2工場棟を完成し、コンピューター数値制御(CNC)自動旋盤で月産150台体制を整えた。
また旧シチズンマシナリー初の海外工場であるタイのシチズンマシナリーアジア(CMA)は低・中価格機の主力工場という位置づけ。01年に設立し、06年に加工棟を、10年に組立棟を増設した。だが需要がさらに旺盛なことから、新たな工場棟の建設に着工。11年末にも生産能力を現在の月100台から月200台に倍増する。
グループの鋳物工場として設立したフィリピンのミヤノフィリピン(MPI)でも、「ミヤノ」ブランドの低価格機の生産に取り組む方針を決めた。日本から人員を派遣し、組み立て要員の育成と機械の試作に着手した。
シチズンマシナリーミヤノではアジアで月産400台体制を確立するとともに、国内事業所は高付加価値製品の生産に特化。開発拠点を含めた国内4事業所をマザー工場とし、11年度末に世界で月産650台体制に引き上げる構えだ。
生産能力の増強で市場への"供給力"を増やす一方、現地の嗜好にあった製品戦略を展開し、"中身"の面でも市場への浸透を目指す。その一つがこれまで日本企業が不得意とされてきたエントリー(低価格)市場の開拓だ。
同市場の開拓では自動旋盤で競合企業であるスター精密と連携することを選んだ。両社でCNC自動旋盤の戦略機「給力(ゲイリー)」を共同開発。部品の共同調達や機能の絞り込みなどにより、既存の最低価格帯製品より2-3割安価なのが特徴だ。既存製品とは別の"第2ブランド"と位置づけ、給力の販売を丸紅に一本化した。「商社の販売網を生かして、ローカル市場を開拓する」(杉本社長)方針だ。
かつての成功体験を今に再現
シチズンマシナリーには自動旋盤「L16」という機種がある。25年前に1号機を出した当時、低価格が功を奏し月産100台というヒットをとばした。この機種で日本の町工場に自動旋盤の導入が進んだ。「給力」のイメージはまさに四半世紀前の日本。杉本社長は「戦略機を一つの切り口として、中国市場を開拓したい」と話す。かつての成功体験を今にダブらせる。
プロフィール
杉本 健司 (すぎもと けんじ)
1970年東京都立大(現首都大学東京)工卒、同年シチズン時計(現シチズンホールディングス)入社。00年精機事業部事業部長、01年取締役、05年常務。07年シチズンホールディングス常務、08年シチズンマシナリー(現シチズンマシナリーミヤノ)社長兼シチズンホールディングス取締役。東京都出身、63歳。
企業データ
- 企業名
- シチズンマシナリーミヤノ株式会社
- Webサイト
- 設立
- 2011年4月1日
- 資本金
- 26億5125万円(シチズンホールディングス100%出資)
- 従業員数
- 800人
- 所在地
- 〒389-0206 長野県北佐久郡御代田町御代田4107-6
- 事業内容
- コンピューター数値制御(CNC)旋盤の開発・製造・販売
掲載日:2011年7月7日