闘いつづける経営者たち

「盛田 淳夫」敷島製パン株式会社(第4回)

勝利の方程式

経済成長が著しい中国は企業にとって魅力的な市場。当然、同社も今後、中国に進出するであろう同業他社との競争が予想される。しかし、盛田社長は「中国市場は他社との競争をいかに勝ち抜くかではなく、どんなモノづくりをすれば現地の消費者に受け入れられるかという点にフォーカスしている」と言う。

それは「超熟」シリーズの成功で学んだように、「モノづくりに消費者の声に基づいた改良を加えることが勝利の方程式」と考えるためだ。盛田社長は「中国進出を成功に導く自信はある」と力強く語る。同社は中国で販売する商品でも「消費者の声を聞きつつ、食文化などに合わせて変えるべき点と、品質など変えない点を明確にしながら商品提案する」(盛田社長)方針だ。

中国市場で描く夢

敷島製パンが中国で「味全パスコ」ブランドで販売するパンの価格は菓子パンが4—5元(約50—60円)、食パンが8—9元(約100—113円)程度。ファミリーマートなどのコンビニエンスストアで販売するほか、現地スーパーにも扱いを働きかける。

「トースターはないが電子レンジはあるという家庭が多い」(盛田兼由専務)という現地事情を鑑み、加熱せずともおいしく食べられる食パンや菓子パンを販売する。屋台で粥(かゆ)や肉まんを朝食として食べる一般市民を相手に、パンの手軽さや目新しさをアピールし、普及させる考えだ。

6月の稼働を予定する中国・上海工場(上海市)の5年後の売上高目標は50億円。だが、中国では上海以外の都市でも成長が著しい。「今後、50億円規模の工場を中国国内に複数作ることは可能だろうし、夢でもある」と盛田社長は展望を描く。

世界で存在感を高める

同社は中国で量販品の次の市場も視野に入れている。現在検討しているのが、日本や米国で展開している業務用冷凍パン生地の現地生産・販売だ。食パンや菓子パンなどの5ラインがある上海工場には「冷凍生地のラインを作るスペースを確保してある」(盛田専務)という。事業の具体的な仕組みは検討中だが、冷凍パン生地はパン文化が根付いた場所でしか事業が成立しない。パン生地販売事業の参入は中国市場にかける同社の決意の表れでもある。

そして将来は「売上高の半分程度を海外で稼ぐようにしたい」(盛田社長)と、今後の海外戦略の積極化を掲げる。そのけん引役となるのが中国やインドネシアといったアジアだ。「アジア全体を一つと考えてビジネスを展開する」(同)。中国を足がかりにした世界展開が今まさに始まろうとしている。

プロフィール

盛田 淳夫 (もりた あつお)

1977年(昭52)成蹊大法卒、同年日商岩井(現双日)入社。82年敷島製パン入社。83年取締役、87年常務、92年副社長、98年社長。名古屋市出身。

企業データ

企業名
敷島製パン株式会社
Webサイト
設立
1920年6月
資本金
17億9900万円
従業員数
4068人(2010年8月末時点)
所在地
〒461-8721 名古屋市東区白壁5-3
事業内容
パン、和洋菓子の製造、販売

掲載日:2011年5月30日