闘いつづける経営者たち
「小谷 重遠」コベルコ建機株式会社(第4回)
04.中国市場のピーク15-16年に、地道な努力続ける
市場の景況を左右する中国
コベルコ建機がまとめた10年の重機ショベルの世界総需要台数は前年比約6割増の22万2000台の見込み。新興国の需要増で11年は25万8000台、12年は30万台と市場拡大が続く見込みだ。だが、世界総需要に占める先進国の比率は17%と06年の60%から急減している。いまや建機の世界総需要の半分を占めるようになった中国が、建機市場の景況を左右するようになった。
小谷社長は中国の建機市場動向について「11年以降も需要増が続き、15-16年に需要のピークを迎えるだろう」と予測する。中国の生産年齢人口(15-64歳)が15年にピークを迎えるからだ。実際、中国メーカーを除く大手10社の10年1-10月の油圧ショベル販売台数が、前年同期比7—8割増えた。11年の需要も前年比2割増となる見通しだ。
東南アジアやインドも中国に次ぐ有望市場だ。「中国に比べ、市場規模が3分の1以下と小さいが、生産年齢人口の増加を考慮すれば、中長期的に必ず伸びる」(小谷社長)からだ。東南アジア市場の6割弱を占めるインドネシアでの同社の1-10月の販売台数は前年同期比7割増となった。東南アジア市場の8割以上を重量20トン級ショベルが占めるため、タイ工場は20トン級の専用工場にしていたが、「それ以外の機種の需要も増えているため、13トン級と30トン級の生産も始めた」(同)としている。
正攻法で競争力強化
こうしたアジア新興国で競争力を高めるため、「故障のない品質の高さを重視している」と小谷社長は話す。日米欧が市場の主役だった時代は日米欧の仕様に合った製品を開発していれば良かったが、新興国の需要増を取り込むには中国や東南アジアの使われ方や気象条件に対応した製品開発もしなければならない。
例えば中国では黄砂によってエンジンなどにチリがたまるし、燃料油も質が低いという。日米欧仕様機では対応できない特殊事情にも耐えられるよう、中国仕様機には油汚れ防護システムを搭載するなど、故障防止につながる改良を重ねてきた。また、故障を防ぐメンテナンス方法を説明するキャンペーンを行い、顧客先を繰り返し回った。これで故障率の大幅減につなげた。
新興国での販売サービス強化も欠かせない。国土が広い中国、多くの島からなるインドネシアをカバーできる販売サービス網を10年かけて整備した結果、クレーム処理や部品配送のスピードが上がった。「当たり前のことを地道に正攻法で続けることが、競争力強化につながるはずだ」と話す小谷社長の言葉通り、生産・販売・サービス強化に向けた地道な取り組みが続けていく。
プロフィール
小谷 重遠 (こたに しげとお)
1971年(昭46)京大院工学研究科修了、同年神戸製鋼所入社。機械本部圧縮機センター長などを経て98年取締役、99年執行役員、00年常務機械カンパニー執行社長、03年専務、05年代表取締役副社長、08年コベルコ建機社長。1945年(昭20)3月、京都府生まれ。
企業データ
- 企業名
- コベルコ建機株式会社
- Webサイト
- 設立
- 1999年10月1日
- 資本金
- 160億円
- 従業員数
- 912人(グループ総計6145人)(10年4月1日時点)
- 所在地
- 〒141-0021 東京都品川区東五反田2-17-1
- 事業内容
- 建設機械、運搬機械の製造、販売、サービス
掲載日:2011年4月7日