闘いつづける経営者たち
「高岡 伸夫」株式会社タカショー(第3回)
03.海外で花開く日本の庭文化
業界初の株式上場
タカショーの売上高が伸びるにつれ、社長の高岡伸夫は株式上場を意識するようになった。上場すればタカショーの認知度や影響力は増す。「隠し事をせず、社会にメッセージを送ることができる企業に成長したい」。フォークソング世代の血が騒いだ。ただ株式を公開すると、経営に融通が利きづらくなるといったデメリットもある。悩む高岡が上場を決意したきっかけが、淳子夫人(現取締役)の一言だった。
「いいかげんにして。あなたはもうすぐ資金繰りが楽になると言っているけれど、全然そうならないじゃないの」。これ以上、タカショーの事業資金調達に家族を巻き込むのは避けよう-。それから6年間掛けて準備を進め、98年にジャスダックへ上場。ガーデニング業界で株式を店頭公開したのはタカショーが初めてだ。マスコミや金融機関、取引先のタカショーを見る目は変わった。「外部から経営の効率化が求められるようになった。『販管費』や『ワラント値』といった用語も強く意識するようになった」と苦笑する。
日本独特の文化を産業に
タカショーの成長についてバブルや90年代のガーデニングブームが追い風になったとの見方もあるが、高岡は「むしろガーデニングは景気が悪いと伸びる分野。手軽に楽しめる娯楽だから」という。現在は東証1部上場という目標を掲げ、積極戦略を描く。
その1つが海外展開だ。95年に中国、99年にドイツ(タカショーヨーロッパ)、00年にカナダ、04年に韓国にグループ会社を設けた。語学が堪能な人材を積極的に採用し、その出身地はミャンマーやベルギー、中国、ベトナムなど幅広い。高岡は「他社がやらないことをしよう」と、展示会で大々的にブースを設ける。「英語をほとんど話せない」にもかかわらず一人で海外に出向き、自分で市場調査もする。「何も知らない状態で出かける。先入観を持つと、それで足が止まってしまう」という。
特に注目しているのが東アジアだ。最初に海外展示会に参加したのは1987年、中国・広州だった。「中国は敷居が高いイメージがあった。だからこそ逆に挑戦したくなった」と振り返る。
10年2月には中国江西省に海外孫会社を設立。日本や海外子会社への輸出、中国国内での拡販を狙う。以前は中国を生産拠点ととらえていたが、人件費の上昇に伴い、販売の市場に位置づけを転換。展示場を作ったところ、大幅な売り上げ向上につながった。
エバーバンブーなど「和」に関連する製品に特化したサイトを英語や韓国語、ドイツ語でも設けている。ミャンマーなどではテレビコマーシャルも展開する。「いたずらに他国のマネをするのではなく、日本人はもっと自らの文化や歴史に自信を持つべきだ。四季の変化や心のあり方など、日本独特の文化を産業にできるのがガーデニング」と訴える。
プロフィール
高岡 伸夫 (たかおか のぶお)
1953(昭和28)年3月3日、和歌山県生まれ。75年松本金物入社、77年高岡正一商店入社、80年タカショー設立、専務就任。89年社長。
企業データ
- 企業名
- 株式会社タカショー
- Webサイト
- 設立
- 1980年8月21日
- 資本金
- 5億7056万円
- 従業員数
- 399人(うち正社員275人)(2010年5月現在)
- 所在地
- 〒642-0017 和歌山県海南市南赤坂20-1
- 事業内容
- 人工和風竹フェンスを主力とした庭園資材の企画・製造・販売
- 売上高
- 127億5600万円(2010年1月期)
掲載日:2010年10月7日