闘いつづける経営者たち
「谷田 千里」株式会社タニタ(第2回)
02.計測データの蓄積で勝負
市場の変化に迅速対応
競合他社が市場シェアを奪いに来る中、谷田千里社長は他社の市場参入を「市場拡大や製品の認知度アップにつながり、売り場に来てもらえる」と前向きにとらえる。「最近の消費者はよく調べてから購入することが多く、そうした人は我々の製品を選んでくれる」と自信たっぷりに話す。
その根底にあるのは製品の品質の高さへの自信だ。体組成計は体に微弱な電流を流し、これを計測することで脂肪量や筋肉量を算出する。会社によって算出方法などが違い、他社製品の中には電流を流さずに計算のみで体脂肪量を計算するものもある。
同社は古くから体重計などを手がけ、膨大な計測データの蓄積があり、これが高精度の製品を支える大きな財産となっている。そのため「見かけは同じでも、他社にはまねできない」(谷田社長)高品質の製品を生み出している。
市場ニーズをくみ取り素早く製品に生かせるのがタニタの強み。企画から設計、デザイン、生産までをすべて自社の人材で行うことで、市場の変化に柔軟かつ迅速に対応する。本社のデザイン室では9人のデザイナーが新製品の開発に参画し、生産は秋田県と中国・広東省の自社工場が担う。
「ニコニコ動画」に公式サイト
TVCMや広告だけに頼らない販促方法も積極的に取り入れる。入社前からITに明るかった谷田社長は、2008年9月に動画コミュニティーサービス「ニコニコ動画」内で公式コミュニティーサイト「Come Sta Channel(コメ・スタ チャンネル)」を開設。ここで製品などの情報を発信している。社長就任後すぐだったこともあり「社内の堅い雰囲気を変えたい」との思いもあったという。社長自身も動画に出演し、「お客さまに伝えたいことを直接伝えられるのが動画のメリット」と強調する。コメ・スタ チャンネルは若者を中心に人気を集め、現在の会員数は約6600人となっている。
コメ・スタ チャンネルでは自社製品の使用説明が動画で見られる。説明動画は「必ず箱を開ける時点から始める」とこだわりを話す。「お客さまの気持ちになって使うことで、これまで気づかなかったことに気づく」という。こうした気づきを説明動画に取り入れるだけでなく、新製品の開発にもフィードバックすることで、より顧客の立場に立った製品を生み出している。
また、体脂肪計で粗悪な類似品が出回った際、コメ・スタ チャンネル内で両製品の性能を比較する実験で自社製品との違いを明確にしたところ、これを見た会員らの間で体組成計に対する認知が定着したという。
高い製品力を武器に顧客に近いツールを使いながら、品質の高さをアピールしていく。
プロフィール
谷田 千里 (たにだ せんり)
1972年6月6日生まれ。97年佐賀大学理工学部卒業。97年(株)ニュートン入社、98年(株)船井総合研究所入社、01年(株)タニタ入社、05年タニタアメリカINC取締役、07年(株)タニタ取締役。
企業データ
- 企業名
- 株式会社タニタ
- Webサイト
- 設立
- 1944年1月
- 資本金
- 5,100万円
- 従業員数
- 1,200人(グループ)
- 所在地
- 〒174-8630 東京都板橋区前野町1-14-2
- 事業内容
- 家庭用・業務用計量器(体組成計、体内脂肪計、脂肪計付きヘルスメーター、ヘルスメーター、クッキングスケール、活動量計、歩数計、タイマー、尿糖計、塩分計、血圧計、脈拍計、デジタルカロリースケール、体温計、温湿度計)などの製造・販売
- 創業
- 1923年3月
- 事業所
- 東京営業所、大阪営業所、名古屋営業所、福岡営業所、北日本営業所(秋田県)
掲載日:2010年9月9日