ビジネスQ&A

売りにつながる商談資料の作り方が知りたい。

2021年 5月21日

機械メーカーです。特注で作っていた高価な洗浄装置を改良して普及型の汎用品として商品化し、法人向け(BtoB)に営業活動中です。製品パンフレットは既にあり、会社案内と合わせて使いながら口頭で製品説明をしていますが、反応が今一つなのできちんとした商談用の資料を作ろうと思っています。「売れる」商談資料を作る方法を教えてください。

回答

商談資料とパンフレットの違いを理解し、まずは標準的な組み立てに沿って必要事項を漏らさず内容を作るのが基本です。その後、お客さま視点で見直し、ブラッシュアップを行いましょう。慣れてきたら相手に合わせて構成や強調点を工夫していくとなお良いです。

商談資料とパンフレットの違い

パンフレットは商品について不特定のユーザーに対し一般的な説明をするために使われるもので、主役は商品です。これに対して商談資料は特定の買い手に向けたプレゼンテーションに使われるもので、売り手である自社が主役となり商談相手に働きかけ、購入の意思決定に導くためのものです。パンフレットを他の資料と組合わせ営業トークで補足して商談することはもちろんできますが、より商談の成功率を高めるにはやはり意思決定に必要な要素を順序だてて盛り込んだ商談資料を作成することをおすすめします。

商談資料が果たすべき機能

商品コンセプトやスペック(仕様)の説明を通じて商品の有用性や優れた点を理解してもらい、商品を購入するメリットを納得してもらうこと、過去から未来へ向けた自社の取組や思いの道筋を示し、共感してもらうことが必要です。納得と共感の結果、取引相手として信用してもらえるように「買い手の心を動かす機能」が要求されているといってもいいでしょう。

作成時の基本的な注意点

1.その商品を売ることに目的を絞って余分な要素を取る

たとえば、会社案内に掲載されている沿革をそのまま全部入れたり、他の事業や製品ラインナップの紹介が入ったりしていると話の焦点がぼやけてしまいます。関係のあることだけに絞りましょう。

2.初めて読む人でもわかりやすいように気を配る

商品のことを熟知している人が作るため、商品のことを知らない人にとっては難解な説明になってしまうことがよくあります。業界用語や略語を説明なく使っていないか気をつけましょう。できれば、あまり商品のことを知らない関係者にも一度読んでもらって理解しにくいところがないかチェックするとよいでしょう。

3.まずは標準的な組立にしたがって作る

理解から納得、共感、信用へと導くには、順序だてて相手の頭の中に情報をインプットしていくことが必要ですが、これには一定の「型」があります。実際の商談では説明の省略や順序変更をするなどの臨機応変の対応が効果的な場合もありますが、商談資料は相手先の社内で回覧されるなど「一人歩き」することも想定すると、最初は標準的な型に沿って作っておくのが安全と言えます。

標準的な記載項目とポイント

記載項目

ブラッシュアップのポイント

表紙

製品写真をなんとなく載せてしまいがちですが、期待感の醸成や全体イメージとの合致にも配慮し、見栄えを良くします。

会社概要

業歴や経営数値など会社組織としての信用につながる要素は強調して記載します。

開発の経緯

商品化を着想したきっかけなどエピソードを入れると興味が惹けます。資料を通じて語られるストーリーの出発点となります。

ニーズ提案

相手の困りごとを問いかけ共感を得る重要な箇所です。ここが弱いと後が苦しくなるため、ターゲットのニーズを捉えているか熟考します。

解決できる理由

前項の困りごとをなぜ解決できるのか、商品の機能的な特長を伝える箇所です。困りごとと1対1で対応するように整理すると明快です。

エビデンス
(根拠)

買い手にとってのベネフィット(利便性)を提示します。「なるほど、それは嬉しい」と共感してもらえるように表現を工夫しましょう。

競合比較

他の競合商品と比較し自社商品の優位性を明らかにします。直接の競合品とだけでなく、代替手段との比較も必要になることがあります。

注文後フロー

注文から納品までの流れや所要時間を示し、購買の検討に入ってからの進め方を買い手に伝えます。アフターフォロー体制も記載します。

FAQ

Q&A形式で買い手の疑問に答えます。心配・懸念点に対する答えがあらかじめ記載してあると信頼が得られるので、充分な数を記載します。

目指すもの

商品を通じた社会課題の解決や社会貢献、今後の事業の展望について記載しストーリーを完結します。共感・信頼が得られる内容にしましょう。

まとめ

前述の通り、商談資料は特定の買い手に向けて作るものなので、買い手に合わせたカスタマイズが重要です。パワーポイントなどを活用して内容の見直し・修正がいつでもできるように作ることが望ましいです。実際の商談に臨んだ結果、自分でも説明しにくかった箇所や相手から質問が出た個所については記録しておき、常により良い商談資料の完成に努めましょう。

参考:
中小機構 商品開発・市場開拓のための企画書の書き方

回答者

中小企業診断士 橋本 良一