RoHS指令の基礎

日本資源有効利用促進法・Jmoss-RoHS指令の基礎

2021年 12月 内容改訂

概要

資源有効利用促進法は、(1)事業者による製品の回収・再利用の実施などリサイクル対策の強化、(2)製品の省資源化・長寿命化等による廃棄物の発生抑制(リデュース)、(3)回収製品からの部品などの再使用(リユース)の対策を行い、循環型経済システムの構築を目指すものです。

指定省資源化製品(省資源化・長寿命化の設計などを行うべき製品)および指定再利用促進製品(リサイクルしやすい設計などを行うべき製品)に指定されている製品のうち、パーソナルコンピュータなどの製品における環境配慮設計(DfE:Design for Environment)の対象に輸入販売製品が含められています。

DfEの要求は、対象製品ごとの省令で「原材料の工夫」や「構造の工夫」などの具体的事項が例示されています。DfEは原料製造、加工、使用、廃棄およびリサクルのすべてを考慮する「ライフサイクルシンキング」を基本としています。サプライヤーを含む電気・電子業界には、調達する部材に含有する化学物質の把握と管理が求められています。

さらに、指定再利用促進製品にかかわるパーソナルコンピュータなどの下記の7製品は、再生資源の利用促進のため、製品に含有される場合再生資源の品質低下やリサイクル工程を阻害するおそれのある物質の管理を行うこと、JIS C0950(J-Moss:the marking for presence of the specific chemical substances for electrical and electronic equipment、「電気・電子機器の特定の化学物質の含有表示方法」)による表示などによる情報提供を行うことが2006年7月1日から施行されています。

対象製品

対象となるのは、次の7品目です

(1)パーソナルコンピュータ
(2)ユニット型エアコンディショナー
(3)テレビ受像機
(4)電気冷蔵庫
(5)電気洗濯機
(6)電子レンジ
(7)衣類乾燥機

対象物質

EU RoHS指令は10物質ですが、日本資源有効利用促進法は6物質群で、6物質群の最大許容濃度はEU RoHS指令と同じです。

(1)鉛およびその化合物
(2)水銀およびその化合物
(3)カドミウムおよびその化合物
(4)六価クロム化合物
(5)PBB(ポリブロモビフェニル)
(6)PBDE(ポリブロモジフェニルエーテル)

最大許容濃度は、カドミウムは0.01wt%、その他は0.1wt%です。

最大許容濃度の含有率を算出する場合の基準値の分母は、「塗装、印刷、めっきなどの単層。また、複層の場合には、それぞれ単層ごとの状態。ただし、複層を分離してそれぞれの単層ごとの数値を求めることが困難な場合には、分離可能な最小単位を均質な単層とみなす」とされています。

資源有効利用促進法は、RoHS指令と大きな差異が2点あります。

RoHS指令は「特定有害物質」ですが、資源有効利用促進法は「特定の化学物質」で、有害性の有無ではなくリサイクルの高度化を念頭としたより広い概念を示しています。
RoHS指令は製品への特定有害物質の含有制限ですが、資源有効利用促進法では特定の化学物質が最大許容濃度以上含有する場合、J-Mossによる表示が義務化されています。

(1)上記の7品目で6物質のどれかが基準値を超えて含有される場合

JIS C 0950による「含有マーク」の表示とWebサイト上で「含有箇所による含有状況の表示」を行う必要があります。

「4.2 含有箇所における含有状況の表示」では、6物質群と電気電子機器の構成ユニットのマトリックス表で、3区分の表示を規定しています。
1 「“0.1 wt%超”及び“0.01 wt%超”」は,算出対象物質の含有率が含有率基準値を超えていることを示している。
2 「“○”」は,算出対象物質の含有率が含有率基準値以下であることを示している。
3 「“除外項目”」は,算出対象物質が含有マークの除外項目に該当していることを示している。
このマトリック表は、通称〇×表といわれていますが、中国RoHS管理規則や台湾RoHS(商品検査法による規格CNS15663)でも同様の表が使用されています。両法の解説では、JIS C 0950を参考にしたとあります。

J-Moss規格「JIS C 0950」は、2021年3月22日の改正版が発行されました。
附属書B(規定)含有マークの除外項目は、EU RoHS指令に類似していますが、内容的には異なっています。

JIS規格(JIS C 0950‐2021)付属書B「含有マークの除外項目」に該当する場合、当該製品には「含有マーク」の表示は必要ありませんが、Webサイト上で「含有箇所による含有状況の表示」を行う必要があります。

「J-Mossグリーンマーク・ガイドライン(「電気・電子機器の特定の化学物質に関するグリーンマーク表示ガイドライン」)」に沿って、任意で「J-Mossグリーンマーク」を表示することができます。

(2)上記7品目でいずれの部位においても(除外項目であるかないかを問わず)対象の6物質のいずれも基準値を超えていない場合

Webサイト上での「含有箇所による含有状況の表示」を行う必要はありません。

「J-Mossグリーンマーク・ガイドライン」は(一社)電子情報技術産業協会(JEITA)、(一社)日本電機工業会(JEMA)、(一社)日本冷凍空調工業会(JRAIA)の3工業団体で規定されたものです。

なお、上記の7品目以外の電気・電子機器に「含有マーク」は準用することはできますが、「J-Mossグリーンマーク」は付けることはできません。

JIS C 0950‐2021の参考文献として以下が示されています。
IEC 62321 (all parts),Determination of certain substances in electrotechnical products
IEC 62474:2018,Material declaration for products of and for the electrotechnical industry
資源の有効な利用の促進に関する法律(平成3年法律第48号)

サプライヤーの非含有証明(Material declaration)の規格が、IEC 62474:2018になっていますが、EU RoHS指令はIEC 62474:2012です。

当解説は筆者の知見、認識に基づいてのものであり、特定の会社、公式機関の見解等を代弁するものではありません。法規制解釈のための参考情報です。 法規制の内容は各国の公式文書で確認し、弁護士等の法律専門家に判断によるなど最終的な判断は読者の責任で行ってください。
情報提供:一般社団法人 東京環境経営研究所