闘いつづける経営者たち
「田邊耕二」株式会社ユーシン(第4回)
04.次の拡大へ
ユーシンの田邊耕二会長兼社長は「世界シェアナンバー1の座を確かなものにし、将来は売上高3000億円くらいの会社にしていきたい」と、次の成長ビジョンを語る。これまで2015年11月期売上高2000億円を一つの目標にしていたが、仏ヴァレオの事業買収と自社生産拠点の拡充で同目標の達成は見えてきた。さらなるM&A(合併・買収)やシナジーの創出を進める考えだ。
世界で生き残るのは2、3社
仏ヴァレオの事業買収を決めたばかりにもかかわらず、田邊会長兼社長は「ヴァレオの事業は第1ステップにすぎない。あと2社程度の買収を検討している」と意気込む。背景にあるのは、業界再編への強い危機感だ。「市場のグローバル化により同じ製品を製造する企業の中で生き残る企業は限られてくる。世界で2、3社だろう。こうした状況を理解すれば、相手も交渉のテーブルにつくだろう」(同)とにらむ。
また新たな買収が実現すれば、「3年間で最大2000億円の投資をする可能性もある」(同)とも。自己資金や借り入れに加え、資本増強も視野に資金調達を検討しているもようだ。
社内体制もグローバル化
積極的な拡大策の先に目指すのは、「売上高で3000億円、従業員数3万人。真にグローバルな企業」(同)という。12年11月期実績の611億円と比較すると、約5倍の規模となる。M&Aによるキーセット事業の拡大に加え、ヴァレオから取得した製品群などからキーセットとシナジーを創出できる製品を新たな事業の柱に育てる。「どういった製品がシナジーを出せるか、現在研究している。旧ヴァレオの開発生産技術などが役に立つだろう」(同)。
人事面など社内体制でもグローバル化を推し進める。まずは欧米で先行して実施していた職務給制度を日本などにも導入し、グローバルで完全職務給制に移行する。また「10年後には英語で役員会を開くぐらいにならなくてはいけない」(同)。ヴァレオの事業が傘下に入ると、海外比率は飛躍的に高まる見通しで、ヴァレオから役員も迎え入れる。社内体制のグローバル化対応はまったなしだ。「日本人従業員にも英語力は必ず身に付けてほしい」(同)。
社長候補についても、「後任社長は日本人を考えているが、その次となると外国籍の人材が社長となっても不思議はない」(同)。10年に実施した公募ではインド人の応募者もおり、「優秀だった」(同)という。約30年にわたり経営トップとして仕事を続けてきたが、グローバル企業に向けていよいよ仕上げの段階に入った。
プロフィール
田邊 耕二 (たなべ こうじ)
1934年(昭9)生まれ。東京都出身。56年に青山学院大学経済学部を卒業し日野自動車に入社。61年に退社し同年4月にユーシン入社、65年2月同社取締役に就任。以後、76年2月に同社代表取締役専務、78年2月より代表取締役社長を務める。06年7月に最高顧問に就任も、08年2月に代表取締役社長に復帰。11年8月より代表取締役会長兼社長。独自の理論に基づいた合理的な経営を追求し、実践してきた。「すべてを自分で行うのではなく、経営は人をどれだけうまく使うかが重要だ」と話す。最近では自らの経営の視点をまとめた書籍「超合理化経営」(幻冬舎)を執筆。
企業データ
- 企業名
- 株式会社ユーシン
- Webサイト
- 資本金
- 120億1643万円
- 所在地
- 東京都港区芝大門1-1-30
- Tel
- 03-5401-4670
- 事業内容
- 自動車・産業機械用及び住宅関連の各種システム機器と制御装置、電装装置、部品などの製造販売
- 連結売上高
- 611億円(2012年11月期)
掲載日:2013年4月11日