闘いつづける経営者たち
「福井 正憲」株式会社福寿園(第3回)
03.4極体制の確立
8代目社長に就任
次なるステージへ-。福井正憲社長が8代目として7代目社長の福井正典会長から「当番」を引き継いだのは創業から200年に当たる1990年3月のこと。時を同じくして同年4月、研究開発施設「福寿園CHA研究センター」(京都府木津川市)を開設した。福井社長はお茶づくりなどが体験できる「宇治工房(茶工房、菓子工房)」(同宇治市)、京の王朝文化とお茶に関する複合施設「京都本店」(京都市下京区)、それに「山城工場」(京都府木津川市)を合わせた「4極」でそれぞれ価値を生む体制を強調する。
研究・体験施設の整備
「福寿園CHA研究センター」では製茶実験や成分分析などの化学実験、喫茶研究を実施するほか、料理法や茶具の研究など手がける領域は幅広い。CHAは"茶"に通じており、Cはカルチャー(文化)、Hはヘルス(健康)、Aはアメニティー(快適)を指す。「今までは研究機関の役割を果たしてきたが、カルチャー、ヘルス、アメニティーの原点に戻りたい」と意欲的だ。例えば多くの人が健康に関心を持つ中で、「新たに健康や自然をテーマにしてお茶にまつわる独自の商品を開発する」という。時代の変化に合わせ、充実している施設を有効活用する。
一方、2007年8月に開設した宇治茶工房ではお茶づくりや茶器づくり、お茶のマナー講座などが体験できる。お茶に対する理解が深まり、親しめるように工夫されている。翌年の2008年9月には繁華街に京都本店をオープンした。地上9階、地下1階のモダンなビルの中に宇治茶専門店やお茶を使ったフランス料理店、茶室のある和喫茶店、茶器・食器店などの京の王朝文化とお茶にまつわる粋を集めた複合施設だ。ブランドづくりを意識しており、「深みと、品格のある憧れ(あこがれ)の世界を創成する」との設立趣旨がうなずける。両施設ともアプローチの仕方は異なるが、6代目が京都駅にお茶の木を植えてほしいと願ったことと通じるものを感じる。お茶を理解してほしいという思いに。
生産現場での基軸は「私」
お茶の生産拠点である山城工場では「私」を中心に据える。福井社長は「自分が飲食したいものをつくりなさい」と従業員に伝えている。分かりやすく言えば「おすそ分け」で説明できる。「自分のためにつくって多くできたからおすそ分けする。それがモノづくりの原点。原点をよく考えれば大きな間違いは起こらない」。そして言葉を続ける。「良いものをつくることが企業にとって最大の社会貢献になる」。
2010年9月には平等院表参道に「宇治茶菓子工房」(京都府宇治市)も開設した。宇治茶を使って新たな和・洋菓子を開発する狙いだ。すでに4極戦略の次の一手を進めているようだ。
プロフィール
福井 正憲 (ふくい まさのり)
1958年に福寿園入社。64年専務、79年副社長、90年社長。
企業データ
- 企業名
- 株式会社福寿園
- Webサイト
- 設立
- 1949年(昭和24年)
- 資本金
- 8600万円(平成22年11月30日現在)
- 従業員数
- 700人(平成22年11月30日現在)
- 所在地
- 〒619-0295 京都府木津川市山城町上狛東作り道11
- Tel
- 0774-86-3901
- 事業内容
- 日本茶の製造販売
- 売上高
- 130億円(10年2月期)
- 創業
- 1790年(寛政2年)
掲載日:2010年12月20日