ビジネスQ&A

DESとDDSの違いについて教えてください。

昨今の景気の低迷を受けて、債務超過に陥ってしまいました。過剰債務の状態を解消する企業再生手法として、DES(デット・エクイティ・スワップ)とDDS(デット・デット・スワップ)という方法があると聞いています。この2つの違いについて教えてください。

回答

過剰債務解消の一手段として、DES(デット・エクイティ・スワップ)とDDS(デット・デット・スワップ)があります。いずれも債権者の同意が必要ですが、DESは債務の株式化、DDSでは債務を通常ローンから劣後ローンに組み替える処理となります。

過剰債務解消の一手段として、DES(デット・エクイティ・スワップ)とDDS(デット・デット・スワップ)という2つの手法をご紹介します。いずれも過剰債務を解消して短期的に財務支出を削減する効果があります。

【DES(デット・エクイティ・スワップ)】

過剰債務を解消するために、借入金の一部を株式に切り換える手法です。借入金が目減りした分について元金の返済も支払利息の返済もなくなり、収益とキャッシュフローが改善します。

また、負債が減少して純資産が増加することで、自己資本比率が向上し財務体質の安全性が強化されます。ただ資本金が増加するため、法人住民税の均等割額の負担増や中小企業としての税制特例が受けられなくなる可能性があるので注意が必要です。

さらには、DESにより債務消滅益が発生し、課税関係が生じる可能性もあります。DESを行う場合には、事前に税理士に相談されることをお勧めします。

【DDS(デット・デット・スワップ)】

既存の借入金を劣後ローンとして借り換える手法です。劣後ローンとは、他の債務よりも債務弁済の順位が劣る借入金のことです。債務弁済の順位が劣るというのは、万一貸付先の会社が解散や破産などをした場合に、支払順位が低くなっているため、通常の債権への支払が終わった後に、はじめて資産の分配を受けられるということです。劣後ローンの中でも一定の要件を満たす資本的劣後ローンは、金融機関内で資本とみなされるため、従前より良い条件での融資を受けられる可能性があります。ただし、金融機関からDDSを受ける場合には、特定の財務指標を一定数値以上に維持しなければ、優遇措置が取り消されるなどの特約(コベナンツ)が課される可能性があります。

【DESとDDSの違い】

債権者が金融機関の場合、中小企業には主にDDSの方が適用されます。DESは金融機関が株式を保有する形になるので、主に大企業に適用されます。中小企業で行われるDESは、経営者本人が自身の会社に対する債権を保有している場合に、財務体質の改善を図ることを目的に実施することが多いです。

新株発行などの法的手続が必要であるDESと比べて、DDSの方が手続面では容易です。また、金融機関における査定では、両者とも過剰債務を解消し、財務体質の安全性が改善するとみなされますが、財務諸表上では資本的劣後ローンも負債であることに変わりないため、会計上はDESのみ財務体質の安全性が改善する形になります。

過剰債務を解消するために、DESやDDSは有効な手段でありますが、債権者の構成など会社の状況に応じて、採用できる手法を検討してみてください。

DESとDDSのメリット・デメリット DESとDDSのメリット・デメリット
表1 DESとDDSのメリット・デメリット
回答者

中小企業診断士 大石 幸紀