ビジネスQ&A
新規事業がうまくいかないのですがどうすればよいでしょうか?
2022年 4月 8日
新サービスや新規事業を社内で検討しています。なかなかうまくいきません。どうすればよいのでしょうか?
回答
そもそも、自社にとってなぜ新規事業が必要なのか?その事業目的を明確にするところから始めましょう。次に、目的達成に必要な新規事業の領域や規模、参入する市場などを決定します。これら開発のゴールについて、トップ及び社内での共有ができたら、開発に必要となる人や組織、ノウハウ、投資などのリソースを準備し、プロジェクトをスタートさせましょう。
「自社にとって新規事業がなぜ必要か?」これは、単に、新規事業が必要かどうかを問うものではなく、事業目的に対する問いです。新規事業には、投資が必要です。つまり、中長期的なリターンを求めて経営資源を投入する取り組みですので、その目的は、経営課題と結びついているはずです。
1.御社の経営課題はどこにあるでしょうか?
売上の回復?利益の増大?遊休資産の活用?競合との生き残り競争に勝つこと?顧客からの要請への対応?人材育成?もちろん解決すべき複数の課題を抱えており、その解決のために新規事業開発を行うということも多いでしょう。そして、この取り組むべき経営課題が複数となることで、開発の方向性が絞られ、その後の手戻りを防ぐことができますし、イノベーションも起きやすくなります。加えて、結果の評価基準も明確にすることもできます。
以下に事例を示しました。「こんなこと・・」と思うかもしれませんが、多くの企業がこのステップを軽視しているため、開発途中での手戻りが増えています。
経営課題 |
検討・決定すべきこと |
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売上回復 |
短期課題であれば、既存市場へ新サービスを提案または、既存事業を新市場へ提案できる。もし、中期課題であれば、新規市場へ新サービスも検討できる。 |
利益増大 |
売上原価の小さいビジネスや販管費の小さなビジネスを優先的に検討する。 |
遊休資産活用 |
遊休資産を活用することを絶対条件とする。 |
2.準備は、方向性をグリップするため
事業開発で必要なリソースは、“ヒト”、“モノ”、“カネ”、“情報・ノウハウ”です。開発案件に適した経営資源を準備します。中小企業においては、これらのリソースが潤沢にあるわけではないため、近年は、これらの調達を提携先に求める動きが加速しています。いわゆるオープンイノベーションと呼ばれる手法です。
準備過程において重要なことは、トップや社内とのコンセンサスをこまめに取ることです。おそらく、開発の方向性が変わることもあるでしょう。しかし、それは、方向性をより鮮明にするために必要な過程なのです。開発リーダーに、もっともストレスのかかる時期ですが、チームメンバーと力を合わせて乗り切りましょう。
3.もっとも大切にしたいリソースは組織
自社の固有のリソースは、“組織”であり、それを構成する“ヒト”です。その力を最大限に発揮するために留意したいことのひとつに“評価”があります。特に社歴の長い企業ほど、その評価制度がメインの事業部門をベースに設定しています。それを新規事業開発チームにも当てはめようとするため、組織能力が発揮できなかったり、既存事業チームと新規事業チームの間に溝ができてしまったりしています。ここは、トップがしっかりと目を配り、必要な組織能力の違いに合わせた評価制度を導入すべきです。
4.まとめ
このように、新規事業開発の成否は、「どの市場にどのようなサービスで参入するのか?」ということよりも以前に、「どのような準備をしてプロジェクトをスタートさせるのか?」にかかっています。逆に言えば、この時点でトップがしっかりとコミットして準備をし、スタートすることができれば、最短距離で結果を出すことができます。
また、新規事業は、未知の領域に飛び込むわけですから、失敗はつきものです。そのため、近年の新規事業開発のトレンドは、「スタートは小さく素早く!」です。繰り返しになりますが、だからこそトップの号令で準備を素早く行い、恐れず実行することこそが最大の成功の秘訣なのです。ぜひ、あなたのチームから社会に新たな価値を提供していきましょう。
- 回答者
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中小企業診断士 山本 哲也