ビジネスQ&A

外国人旅行者層への販路拡大の方法を教えてください。

温泉地にある25室の旅館です。当温泉地でも、外国人旅行者が増えてきており、当館にも日本人の友人からの紹介で、時々外国人旅行者の利用があり、滞在に満足していただきました。今後、外国人旅行者を積極的に取り込むことを考えていますが、どうしたらよいでしょうか。

回答

言葉の壁から入手可能な情報が限られる外国人旅行者の場合、すでに旅行した知人や友人の口コミが、宿泊先選択に大きく影響する可能性が高いです。まずは自社の外国語版ホームページを有効活用します。訪日外国人旅行を扱う旅行会社と取引する場合は、自社の運営方針に合うかどうかを検討します。

すでに宿泊した旅行者等の口コミから特定の宿泊施設に興味を持った外国人は、インターネットで検索して、宿泊施設の英語や母国語のホームページを確認し、インターネットの予約機能やメールで予約をすることが考えられます。予約連絡先としてメールアドレスや宿泊代金、施設概要など、予約条件や来館の検討材料となる情報をわかりやすく掲載しておきます。

【外国語のホームページ作成時の注意点】

日本人と外国人では、地理や生活に関する知識の違いから、日本語ではあえて説明の必要がない情報でも、外国人には説明が必要な事項があります。たとえば、宿泊施設までのアクセス方法について、最寄り駅からの道順だけでなく、国際空港や新幹線、特急を利用して大都市圏から移動する方法は、外国人旅行者にとっては役立つ情報です。

【宿泊プランの造成】

国内向け販売でみられる、特典付宿泊プランは外国人には違いが理解しにくく、数多くのプランの比較をわずらわしく感じることが多いようです。また、「女性限定」プランは、旅行者の出身地域によっては性差別と受け取られる可能性がありますので、注意が必要です。シンプルに食事の有無や、客室のグレードにより3-4パターンのプランを用意しておくのがベストです。めったにない日本への旅行の機会ということで、多少料金が高くても標準よりもグレードの高い客室を希望する外国人も少なくありません。グレードアップの客室や食事は、標準プランとの違いや追加料金をわかりやすく、箇条書きや画像等で説明します。

また、外国人旅行者は滞在期間が長い傾向がありますので、連泊割引の設定や連泊中の過ごし方として周辺観光ルート等も合わせて提案すると、長期予約を獲得できる可能性が高くなります。

【訪日外国人旅行を扱う旅行会社との取引】

さらに、外国人旅行者向けの販路を拡大するには、国内旅行会社の訪日旅行部門や日本に事務所を開設している外資系インターネット旅行社等を販売先として検討します。取引先選定の主なポイントは、以下のようになります。

1.紹介手数料率(コミッション)と価格設定

宿泊施設が販売価格を設定し、売り上げの一定割合を紹介手数料として旅行会社に支払う方法(エージェントモデル)と、旅行会社に卸売価格で販売し、旅行会社が旅行者への販売価格を決定する方法(マーチャントモデル)の主に2つの方法があります。

2.決済方法

旅行会社が宿泊代金を徴収し、後日宿泊施設に支払う方法と、旅行者が宿泊施設で宿泊代金を支払い、宿泊施設は旅行会社に手数料を支払う方法の2つがあります。

3.客室提供条件

インターネット旅行会社との取引は、インターネットを介した専用画面で提供客室を管理するのが一般的ですが、宿泊施設が導入している予約管理システムとの連携が可能な場合もあります。提供室数や販売期限、販売停止等に関する条件は各社さまざまですので、契約の際に確認する必要があります。

4.販売先顧客層

高級ホテルからバックパッカー向け施設まで扱う総合旅行会社や、ビジネス客向け、直前予約特化型等、特定の商品や客層に特化した旅行会社もあります。取引先担当者からの説明に加え、販売先となる旅行予約サイトのアドレスを入手して、言語がわからなくても、サイトのトップページや宿泊施設紹介ページを見て、ターゲット客層や旅行サイトの特徴をつかみ、自社施設の販売に適しているのか検討材料とします。

自社の運営方針に合う会社を、1-3社程度選んで取引を開始し、予約状況や宿泊した旅行者の反応をみながら、販路となる取引先や販売条件等が適切であるか定期的に確認をして、最適な販路や販売条件を見出していきます。

回答者

中小企業診断士 井上 朋子