市場調査データ

喫茶店(カフェ・コーヒーショップ)(2024年版)

2024年 5月 24日

モーニングなどに強みを持つ昔ながらの喫茶店、大手チェーンが展開するコーヒーショップ、スイーツが人気のおしゃれなカフェなど、喫茶店のスタイルは、年々、多様化している。そんな喫茶店の経営は、定年後のセカンドキャリアとして選ばれることも少なくない。では現在、消費者はどのくらいの頻度で喫茶店を訪れ、何を基準に店を選んでいるのか。20代以上の男女1,000人に聞いた。

1. 現在の利用状況

〈図a〉喫茶店の利用状況(n=1,000)
〈図a〉喫茶店の利用状況(n=1,000)

喫茶店の利用状況に関して、現在のユーザー(年に数回程度以上は利用する人)は78.2%、非ユーザーは21.8%という結果になった。最多は「年に数回程度」の37.7%だが、週に1回以上利用するいわゆるヘビーユーザーも合計で10.4%となり、喫茶店を日常的に利用している方も数多く存在することが確認できた。

ちなみに、2009年に当サイトで実施された「喫茶店」のアンケートにおける利用率は68.0%。当時と今の「喫茶店」の範囲にやや違いはあるものの、数字上ではこの約15年間に10ポイント以上も増加していることが分かる。一方で、「利用したことがない」は09年時が6.0%、今回が4.2%と利用率の上昇幅に比べると変化が小さいことがわかった。

2. 利用の基準

〈図b〉喫茶店の利用判断の基準(n=1,000)
〈図b〉喫茶店の利用判断の基準(n=1,000)

喫茶店を選ぶ際に最も重視するポイントを聞いた設問において、最多となったのは「ドリンクの味や、料理・スイーツなどのおいしさ」の33.1%。次に「店内の使いやすさや居心地の良さ」の24.8%、「生活圏内からの距離」の16.1%が続き、飲食カテゴリーのアンケートでは上位にランクインすることの多い「低価格、お得感」は、14.0%と全体で4番目にとどまった。また「提供スピード、手軽さ」を選んだ人が1.4%に過ぎないことも、ファストフード業態等と比べると、喫茶店ならではの興味深い結果といえる。起業を考える上では、こうした喫茶店に求められる特有の価値観を無視することはできないだろう。

3. 性別・年齢別にみた利用判断の基準

〈図c〉性別・年齢別にみた利用判断の基準(n=1,000)
〈図c〉性別・年齢別にみた利用判断の基準(n=1,000)

利用判断の基準に対する性別・年齢別の割合を見ると、それぞれの傾向が分かりやすく表れている。「味やおいしさ」を店選びの判断基準にしているのは男性よりも女性に多く、また若い女性ほどその傾向が強い。20代女性では、実に8割近くがこの項目を選択している。一方で、男性は女性に比べて立地や価格を重視する傾向が強いようだ。そして、男性も女性も、60代以上になると「店内の居心地」にこだわる傾向があることが分かった。

4. 利用にかける費用

〈図d〉喫茶店1回の利用にかける費用(n=1,000)
〈図d〉喫茶店1回の利用にかける費用(n=1,000)

喫茶店1回の利用にかける費用感については、「1,000円未満」が合わせて69.6%を占めた。「1,000円〜2,000円未満」も合わせて24.9%と決して少なくはないが、2,000円以上となると一気に1.3%まで下がる。喫茶店の利用にまとまった金額を想定しているユーザーは少ない一方で、居心地が求められているためあからさまに回転数を稼ぐのも難しい。どれだけランニングコストを抑えるかなど、営業方法の工夫が必要となってきそうだ。

5. コロナ禍の影響

〈図e〉コロナ禍が喫茶店の利用に与えた影響(n=1,000)
〈図e〉コロナ禍が喫茶店の利用に与えた影響(n=1,000)

コロナ禍が喫茶店の利用に与えた影響に関しては、「利用頻度にも利用の基準にも影響はなかった」の39.6%に続いて、「利用頻度が減った」が31.1%に上った。これに「影響はあったが、また元に戻った」の21.6%を合わせると過半数に及ぶ。やはり、飲食店の一つのスタイルである喫茶店にも、コロナ禍は大きな影響を与えたと考えられそうだ。

6. 今後の利用意向

〈図f〉喫茶店の今後の利用意向(n=1,000)
〈図f〉喫茶店の今後の利用意向(n=1,000)

喫茶店の今後の利用について、「利用したい」と考えている人は合わせて72.3%となった。現ユーザーの78.2%は下回ったものの、反対に利用に消極的な人の割合は8.3%となり、これは現非ユーザーの21.8%を大きく下回っている。現非ユーザーでありながら「どちらとも言えない」を選択した19.4%の記述式回答欄の結果を見ると、「子供が小さいので行きづらい」「コロナがまだ不安」「物価高なので控えている」といった声が散見された。

7. 性別・年齢別の今後の利用意向

〈図g〉性別・年齢別の今後の利用意向(n=1,000)
〈図g〉性別・年齢別の今後の利用意向(n=1,000)

喫茶店の今後の利用意向について、性別・年齢別の割合を捉えた〈図g〉を見ると、男性より女性の方が利用に積極的な意向を持つ割合が多いこと、また、利用に消極的な割合が少ないことが見てとれる。特に男女の違いが顕著に表れたのは20代。20代女性は「ぜひ利用したい」が6割超と全セグメントで最も高いのに対し、20代男性は唯一2割を下回った。こうした男女あるいは年齢による思考の違いは、店のコンセプトなどを決める上で重要なポイントになりそうだ。

8. まとめ(ビジネス領域としての喫茶店)

今回のアンケートでは、喫茶店の現在の利用率は78.2%となり、2009年調査時より約10ポイントも上昇するなど、その人気がさらに高まっているという結果になった。72.3%は今後も利用に積極的な意向を持っていて、利用に消極的な人の割合が8.3%と現非ユーザーの21.8%を大きく下回っていることも、顧客の確保という点から見て明るい材料と言えそうだ。コロナ禍による大きな影響を受けながらも、利用頻度が元に戻ったとするユーザーが21.6%もいる点も、起業を考える人にとっては心強い兆しだろう。

ただ、繰り返しになるが、高額ユーザーが少ないにも関わらず、「居心地」などが重視されるためあからさまに回転数アップの手法は取りづらい。どんな業種にも言えることだが、業務を効率化して人件費を極力カットし、ランニングコストを抑えるなど、事業継続のための独自の工夫は必要になってくるだろう。ユーザーの傾向としては、女性の方が利用率が高く、また、今後の利用意向も強い傾向がある。そして、性別や年齢によって店選びの基準が異なっているため、ターゲット層に応じたコンセプト設計が大切になってくると言えそうだ。

記述式回答欄で、今後の利用に積極的な層からは「喫茶店は友達と会う場所」「たまにはおいしいコーヒーが飲みたくなる」「季節のフレーバーも楽しみ」「ゆっくり静かに過ごす癒やしの場所」「出先での時間調整やちょっと休むのに便利」「モーニングでよく利用する」「仕事の打ち合わせや、外出中のオンラインミーティングにも使える」「気軽に非日常を味わえる」などの声が上がった。

一方で、今後の利用に慎重・消極的な層からは「今はコンビニやファストフード店などでもおいしいコーヒーが飲める」「オリジナリティが感じられない」「割高感がある」「田舎なので喫茶店がない」「最近、隣の席が近くて落ち着けない店が多くなった印象」「コロナなどの感染症が怖いので、今はいけない」「必要性を感じない」といった声が寄せられた。

こうした声から、伸ばすべき部分と解決すべき部分などを見極めつつ、ターゲット層を踏まえた自社オリジナルのコンセプト設計などができるかが、事業継続のための第一歩と言えそうだ。

(本シリーズのレポートは作成時時点における情報を基にした一般的な内容になっています。個別の施策等を検討される際には、別途、専門家に相談されることをお勧めします)

調査概要

調査期間:

2023年11月16日〜11月18日

調査対象:

国内在住の20代男女、30代男女、40代男女、50代男女、60代以上男女。サンプル数(n)1,000人

調査方法:

インターネットによるアンケート調査

最終内容確認日2024年5月

関連記事