「有限会社山本農場」Success Case Introduction

群馬県は日本でも有数のこんにゃくの産地だ。有限会社山本農場は、そこで作ったこんにゃくを使ったスキンケア用品「ジューシーこんにゃくスポンジ」を製造、販売している。しかし、もともとは、こんにゃくなど群馬県の農産物を、食用として流通を介さずに東京へ直売をすることを目的に立ち上げた会社だったそうだ。こんにゃくスポンジを販売するようになった背景、海外展開を志すきっかけ、そして今後の展望を代表取締役の山本浩さんと専務取締役の山本直人さんに伺った。

「1990年に会社を立ち上げ、こんにゃくを東京に直売する事業をしていましたが、こんにゃくを含め農産物の付加価値がとても低いことに気が付いたのです」と山本代表取締役。こんにゃくに付加価値を与えて新しい商品を販売しようと考えていたときに、こんにゃくをスポンジにするという文化からヒントを得て、こんにゃくをスポンジにしてスキンケア用品として販売することを思いついたそうだ。「実際に作ってみたら、とても気持ちがいいものができたので、実際に販売してみようと思いました」。そこで、群馬県の温泉や観光地に温泉グッズとして販売してみたそう。「観光地での販売数はとても限られていて、受注のボリュームもとても少なかったです。しかし、観光地で購入したお客様が東京でも商品を購入したいと問合せをくださるようになったのです」と山本専務取締役。最初は直接お送りしていたそうだが、問合せが増えたため通販サイトを立ち上げることになった。その後、「このこんにゃくスポンジを自分の店舗で販売したい」という問合せもくるようになって、小売店での販売も開始した。「今まで、東京ソラマチや成田や羽田などの空港、銀座の店舗で自然派コスメとして販売しました。ブランド力のある小売店で販売ができたことで、商品自体にもブランド力がついたのです」。

国内の店舗で販売をしていたところ、訪日外国人観光客からもこんにゃくスポンジが注目されるようになる。「そうしたら、海外の小売店から英語で引合いがきたのです。英語を話すことはできないけれど、メールを書いたり読んだりすることはできたので、商社を介して海外に商品を販売することにしたのです。でも、商社を介していたので、あまり利益が出ませんでした。そこで、商社を介さずに自らやりとりするようにしました」。また、自社のWebサイトも多言語化対応をすることで、海外のお客様にもサイトを読んでもらえるようにしたところ、海外からの引合いがさらに増えたという。「現在、英語、フランス語、中国語（簡体字、繁体字）のサイトを構築しています。おかげさまで、今の売上の3割程度は海外取引によるもので、特にフランスのお客様からの注文が多いです」と専務取締役は言う。

「もしかすると、こんにゃくを<食べる>概念がないから海外からの注文が多いのかもしれません」と語るのは代表取締役。「だからこそ、海外ではこんにゃくを<自然派スキンケア用品>として根付かせたいです」。一方で、このスポンジを販売するのはとても難しい一面もあるようだ。「フランスではたまたま多くの方にご利用いただくことになりましたが、とはいえ、この商品に興味を持ってくれるお客様がこの地域に多い、という地域性がないので地域戦略が取れないのです。興味を持ってくださる層にいかにアプローチしていくか、というのがポイントです」。実際、こちらからセールスをかけるより、小売店から販売を持ち掛けられたケースの方が取引は続いているという。「今後も地域を限定せず幅広くアプローチができるように、Webサイトの改修を含め検討します」。

今後は、過去に出展した展示会のなかでも、特に成功した展示会をどのように再現するか考えながら展示会に出展したいとのこと。「バイヤーを待つ時の姿勢やブース作りもできるだけ再現して、今後も新たな販路開拓をしたいと思います」。海外展開でもフランスだけでなく、アメリカやオーストラリアなど幅広く狙っていきたいと語る。こんにゃくが食べ物ではなく、自然派コスメとして世界に浸透する日も近いかもしれない。