中小企業の海外展開入門
「株式会社アスカム」Success Case Introduction
2020年 3月 31日
機械製造業から製品メーカーに転身!継続出展でセラミック炭製品を海外市場へ
間伐材の新たな可能性を模索・研究しながら独自に開発した素材「セラミック炭」による商品を開発し、製品メーカーとして建材をはじめ、インテリアや雑貨業界にゼロベースから新規マーケットを開拓してきた株式会社アスカム。国内展示会への出展を経て、さらに販路を拡大するべく海外マーケットへと乗り出した経緯と成功の秘訣を伺うために、静岡にある本社を訪ねた。
INTERVIEW
16年にわたる継続的なギフト・ショー出展でメーカーとしてマーケットを開拓!
「実は、ギフト・ショーには創業2年目の2002年から16年連続で出展しているのですよ。当時既に備長炭ブームは終わっていましたし、日本ではさまざまな炭製品で飽和状態でした。でも継続して出展するうちに、中国など海外のバイヤーも立ち寄ってくれるようになったのです」と同社創業前からセラミック炭製品のマネージメントを長年担当してきた松浦弘直さんは語る。
そもそも同社がセラミック炭のプロジェクトに乗り出したのは1998年頃のこと。木材加工機械を開発製造する横山鐵工株式会社の一事業部として、間伐材を有効活用するためのセラミック炭製造プラントの開発を目的にスタートした。松浦さんがまず商品化したのは土壌改良や住宅用の建材としてのセラミック炭。当時は循環型社会が注目され始めた頃で、木材関連から排出される端材、チップ、間伐材の再利用の機運が高まり、多数視察に訪れたというが、なかなか導入には至らなかったのだとか。
「香りを残して嫌なニオイを脱臭する機能に着目して、どう付加価値をつけるかを試行錯誤しました。そこで持ち上がったのが静岡のヒノキを活用した地域資源活用計画でした。単なる建材という域を超え、デザイナーやプランナーと一緒に脱臭&ヒノキのアロマによる空気清浄器『アルーマ』を開発したのです」。それ以降、セラミック炭の脱臭&調湿機能を生かした新しいプロダクトを次々と開発し、2002年から毎年連続でギフト・ショーに出展。販路を全く持たない状況から、インテリアや雑貨業界へ着々と販路を拡大した。
海外バイヤーとの商談に向けた準備
ギフト・ショーには海外バイヤーも多く訪れる。「海外のバイヤーさんが見て分かるツールを自社で制作して計画性をもって出展したのです」と松浦さん。その言葉通り、英語の商品パンフレットを用意したり、価格設定を計画的に打ち出したりと準備段階から戦略的に取り組むことができたと当時を振り返った。「そしてもうひとつ感じたのは、バイヤーの目線の変化でした。2016年は明らかにインバウンド向けに“爆買いにつながる商品を”という空気が漂っていましたが、2017年はすでに爆買いが収まっていて“どういうチョイスなら商品が売れるのか”というバイヤーの目線を感じました。最先端の商品が集まる展示会の場には世相が反映されていると実感しましたね」
今後も継続出展で、一歩一歩丁寧に取り組みながら着実な海外販路拡大を目指す
「今後も、展示会に出展し続けたいと考えています。新商品の手応えを知りたいということや国内外の新規販路開拓という目的ももちろんあります。でもそれ以上に、移り変わりが激しい流通業界のことですから、マーケットの動きを肌で感じていたいという目的が大きいですね」と継続出展の理由を語る。常に時代を読みながら新商品を打ち出し、新規マーケットを切り拓いてきた同社の原動力は、最新のトレンド商品やマーケットの情報が凝縮された展示会の現場にあるのかもしれない。
「ここ数年の傾向を考えると、自ら海外へ出て行かなくても国内の取引で商品を海外へ送り出すことができるケースが増えているように感じます。大きな夢を見るよりも、これまで日本国内で取引先を広げてきたように、一歩一歩丁寧にやっていくべきだと思うのですよ。コミュニケーション能力を磨いて販路を拡大していきたいですね」と松浦さん。長年つくり続けているアイマスクにも海外で拡販できる可能性を感じているという。展示会出展で、国内外のマーケットへ販路開拓し続ける同社の今後の展開にますます期待が高まる。
※掲載している内容は取材当時(平成29年度)のものです。
企業データ
- 企業名
- 株式会社アスカム
- Webサイト
- 代表者
- 代表取締役 松浦 紘一 氏
- 所在地
- 静岡県榛原郡吉田町片岡356-1
- 創業
- 2000年
- 事業内容
- 脱臭・遠赤外線機能・湿気の調節に優れたセラミック炭(機能性木炭)製造しながら、炭及び自然素材を使った建築資材や生活雑貨などの商品開発・販売を手掛ける。ギフトショーへは2002年から16年連続出展。さらなる新商品の販路開拓と同時に最新のマーケットリサーチの場としても活用している。