中小企業の海外展開入門
「でんでん」ITと伝統工芸を融合した新ジャンルの商品を世界に問う
ITコンサルティング・でんでんの創業は2006年。京都大学大学院在学中の田尻敏寛社長が、ビジネスプラン・コンテストでの大賞受賞を機に起業した。そのビジネスプランのテーマが「日本の伝統工芸を海外へ」だった。
でんでんの事業の主体は企業コンサルティングであり、田尻社長はいかにして京都の伝統工芸品を売るかをクライアントと共に考え、事業者目線で販売アイデアを案出していった。それにより、地元・京都の伝統工芸職人や事業者との間に築いた人脈をもとに、彼らがつくり出す工芸品をネット販売しようと試みた。が、単に伝統工芸品をwebサイトに陳列するだけでは売れない。伝統工芸品といえどもありきたりの品揃えと販売方法だけではビジネスとして埒があかなかった。
そこで田尻社長は、顧客をコンサルティングするためにも自ら商品を企画して販売することが必要と考えた。なぜなら、京都の工芸品事業者をサポートするためにも、自ら体験とノウハウを蓄積することがコンサルティング力の向上になるからだ。
京都の伝統工芸を売るためにはどんな商品にするべきか
では、どんな商品を企画するか。
「まずはどこにでも持ち運べる商品であり、しかも、まだマーケットが成熟していないものを想定しました。新しモノ好きがいるマーケットに目新しい商品を上市すれば売れると思いました」(田尻社長)
ITモバイルに京都の伝統工芸を融合させたような付加価値の高い商品にすれば売れるのではないか。そう発想して2009年にノートPC用のケースを企画・発売した。
それを皮切りに2010年に京友禅の生地によるタブレットケース、2011年には京友禅引き染めのPC用ケースと次々と新商品を企画・発売していった。
「当初の商品は京友禅の生地を活用した各種ケースを企画しましたが、伝統工芸だけをアレンジしたものでは顧客層も固定されてしまいます。もっと商品のバリエーションを広げ、他ではやっていないような企画をしないと商品は生き残れません」(田尻社長)
そこで2012年にはカーボンファイバーによる西陣織のタブレットケースを企画した。先端繊維のカーボンファイバーと伝統工芸の西陣織を融合させ、機能性と伝統的かつモダンなデザインを兼ね備えたオリジナリティの高い商品を開発した。
さらに2013年夏、スマートフォン用フォンシール「KOROMOBILE」(20種類)を企画・発売した。これはスマートフォンの裏面に貼ったり剥がしたりできるシールであり、京唐紙、天然木、金銀箔といった京都の伝統工芸技術を用い、1つひとつが職人の手づくりという付加価値の高い商品だ。
KOROMOBILEは、翌年の「第10回魅力ある日本のみやげコンテスト」(工芸の部)で入選し、現在は40種類の柄に拡張している。
従来、でんでんでは企画・開発した商品をネット通販を主体に販売していたが、2014年からは百貨店の催事や各種展示会へ単独で出展、また、京都最大級のショッピングモールに直営店(第1号)をオープンするなど積極的に販路拡大に臨んでいる。直営店ではITモバイル系の商品のほか、職人がつくり出す文具、アクセサリー、日用雑貨など幅広いアイテムの商品を揃える。
積極的に海外展開を試みる
さらに今年から海外への展開も積極的に図っていく。同社では、2013年に経済産業省「クールジャパンの芽の発掘・連携促進事業(プロデューサー人材派遣事業)」の認定を受け、西陣織に使われる伝統技法「引箔(ひきばく)」(金箔の工芸技術)を核としたブランド技術による商品化とその海外販売を計画した。海外展開への準備計画だった。
そして今年は4月にクエートで開催される展示会の日本ブース、さらに5月にイタリア・ミラノで開催のエキスポの京都ブースへ出展する。「今年は海外へ行けるだけ行きたい」と田尻社長は意欲的だ。
「国内で評価されないものが海外で評価される(売れる)わけがない」
そんな確たる信念をもつ田尻社長は、ITと京都伝統工芸を融合させたオリジナル商品を広く海外へ知らしめる一歩を踏み出す。現在、台湾、香港を中心に売上の10-20%を海外販売で占めるが、今後はさらに外国人の購買層・数を広げていくつもりだ。
企業データ
- 企業名
- 株式会社でんでん
- Webサイト
- 代表者
- 代表取締役CEO 田尻 敏寛
- 所在地
- 京都府京都市下京区菊屋町746-3-902
- 事業内容
- ITコンサルティング事業、インターネットを通した工芸品の販売