中小企業の海外展開入門
「ウインローダー」粗大ごみは宝の山。再利用するエコシステムを提供する
物流業を営む株式会社ウインローダーは、2004年にリユース事業「エコランド」を立ち上げた。このエコランドは、俗に「粗大ごみ」と呼ばれている家具や電気製品の中でも、まだ使えるにもかかわらず処分されそうになっているモノの再利用を実現するサービスである。使われなくなったモノを循環させ、社会貢献できる仕組みを構築したエコランドは、サービス開始からすでに約60万個以上の商品をエコ回収し、循環させてきた実績がある。競争の厳しい物流業界の中で、新たな事業展開に成功したエコランドは今、海外マーケットへ挑戦し始めている。
モノにあふれる日本
2010年、「断捨離」という言葉が流行語大賞にノミネートされた。その事象が表すように、より身軽でシンプルでスマートな生活へと、人々の意識は変わりつつある。エコランドは、その時代のニーズを的確に捉え、整理整頓のコンサルティングからリユース、リサイクルまでの一貫したサービスを提供している。
エコランド担当の牛尾氏は、「家具や電気製品などが、まだ使えるにも関わらず処分されている現状を見て、これは非常にもったいないと思った。どうにかして循環させる仕組みを築けないかと考え、リユースを目的としたネットオークションサービス『エコオク』を開設し、そこで出品代行サービスを始めた」という。このオークションサービスで出品した商品が落札された場合、出品者は落札額の50%をキャッシュバックとして受け取るか、環境・社会貢献団体へ寄付することもできる。また、ゴミゼロの理念に賛同頂いたアスリートやアーティストの協力のもとで、チャリティオークションの開催も行っている。
他にも、まだ使える家電や洋服などのメンテナンス、クリーニングを行い、リサイクルショップで販売している。
東南アジアで人気の日本製家具
国内で需要が少ないモノに関しては、2009年から東南アジアの輸出を始めた。エコランドは、貿易会社と協力して、国内で買い取った家具をフィリピンやタイ、マレーシアなど4か国に輸出している。「海外では婚礼箪笥をはじめとした大型家具の人気が高い」(牛尾氏)。日本で使われていた家具類は丈夫で、品質に対する評価も高い。とくに重厚さをも備えた婚礼箪笥の需要は多い。
東南アジアという新たなマーケットの開拓に成功したエコランド事業の売上のうち海外取引による売上は、今では25%を占める。また、エコランド事業自体もウインローダーの売上の30%を占めるまでに成長している。
国内市場もさらに開拓
エコランドは、主にWebを通じて「使わなくなったモノを手放したい」というニーズを獲得してきた。しかし、Webによる広告宣伝に頼るのではなく、提携による顧客開拓を目指し営業部を立ち上げた。営業部のターゲットはズバリ引越し業者や不動産業者だ。引越しや事業所移転の際には、必ずといっていいほど使わなくなったモノが出る。引越し業者や不動産業者にとって、それらは厄介なモノなのである。そこで、これらの業者にアプローチを行った結果、今では、大手引越し会社や不動産会社が彼らの顧客に、積極的にエコランドを紹介してくれることとなった。
ビジョンと目標
エコランドの強みは、使わなくなったモノを預かるところから、リユース・リサイクルするまで一貫して行っているビジネスモデルにある。エコランド担当の牛尾氏は、「将来はお客様に対し、お預かりした商品がどの国でどのお客様がいくらで買っていただけたのか、までをフィードバックできるシステムを構築したい」とビジョンを語る。
そして牛尾氏は続けて語る。
「3年後の目標として、売上高を今年の5倍である25億円にしたいと考えています。そのためにも国内では、全国の物流会社と提携して『エコランド』をフランチャイズ展開していきたいですね。海外は、現地拠点も設けて物流のネットワークを築いていきたい。そして2020年までに、現在日本で行っている出品代行のオークションビジネスから最終的なリユースまで含めてパッケージとして、東南アジアでも同様に展開できないかと考えています」
大量消費社会の日本に生まれた粗大ごみや使わなくなったモノの問題に真剣に取り組むエコランド。エコランドを立ち上げたウインローダーは、製造から消費者までの物流のみでなく、消費からさらにその先のリユースやリサイクルまでを視野に入れた「循環型物流」をビジョンとして掲げている。限りある資源を最大限有効活用するためにも、エコランドは海を越え、これからも循環の輪を広げていくに違いない。
企業データ
- 企業名
- 株式会社ウインローダー
- Webサイト
- 代表者
- 代表取締役社長 髙嶋 民仁
- 所在地
- 東京都杉並区上荻2-37-7
- 事業内容
- 運輸業、ほか(貨物自動車運送事業、産業廃棄物処分業など)