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Z世代の特徴や傾向と併せ、市場参入のポイントについて教えてください

2023年2月3日

Z世代が消費の中心となった時に備えておきたいです。それ以前の世代と比べて何がどのように違うのでしょうか。Z世代の特徴や傾向と併せ市場参入のポイントについて教えてください。

回答

Z世代を意識した事業を展開するには、Z世代ならではの特徴を理解する必要があります。「デジタルネイティブであるため、情報収集・発信はWeb(SNS)が中心」「所有よりも使用・活用・体験を重視」「多様性がある」「社会・環境問題への関心が高い」といった世代特有の傾向に対して適切にプロモーションできるかが、成否を分けるポイントになるでしょう。

まずはZ世代ならではの4つの特徴を理解することから

Z世代(ジェネレーションZ)とは、1990年代半ば〜2010年代に生まれた、2023年現在で10歳〜26歳ぐらいの世代を指す言葉です。この世代以降にしかない大きな特徴は、生まれた時からインターネット環境が整っていた「デジタルネイティブ」であること。「スマホネイティブ」「SNSネイティブ」でもあり、ネット上にいる時間が他の世代に比べて長く、購買行動もスマホで完結する割合が高いです。これから社会に出て消費の中心として市場を牽引していくと考えられており、すでにZ世代向けの商品開発やプロモーションに力を入れている企業も増えています。ただ、それ以前の世代とは異なるZ世代特有の考え方や価値観、行動原理などを正しく理解しなければ、ターゲットに効果的にリーチすることは難しいでしょう。押さえておきたいZ世代ならではの主な特徴は、以下の4つになります。

1.デジタルネイティブ

生まれた時からインターネット環境が整備されていたため、情報の収集・発信・交換のほとんどはWeb経由となり、中でもスマートフォンによるSNSが中心。「欲しい時に欲しい情報にアクセスできる」という環境下で多くの取捨選択をしてきたことから、自分の価値観に従った購買行動をとることが多く、ブランド品や人気商品への興味は低め。また、不況下で育ったこともあって価格に対するシビアな感覚も持ち合わせており、自分に必要な商品・サービスを必要な時に必要な量だけ購入する点も特徴的。

2.「所有」よりも「使用」「活用」「体験」を重視

商品の所有よりも、便利な「使用方法」「活用手段」を重視し、例えば車やブランド品などに関してはレンタルやリースという手段も有効に活用。誕生日などの記念日には、プレゼントよりもパーティーなどのイベントの方に重点を置く傾向が強い。また、Web完結の購入が基本だが、店舗などでの購入も「体験」として大切にする。ただし、対面を好まない側面もあるため、Webで購入した商品の自動販売機での受け取りが人気。

3.多様性がある

Web中心の情報収集によってさまざまな情報に触れていることに加え、多種多様なインフルエンサーから影響を受けているため、考え方や価値観の違いといった個性を尊重する。自分と異なる価値観や人種などを受け入れる多様性が豊かな点も特徴の一つ。

4.社会問題・環境問題に興味がある

2011年の東日本大震災をリアルタイムで体験したか、Webの活用によってその情報に多く触れていることもあって、自然環境や地球の持続可能性といった社会課題に対する関心が高い。SDGsなどの関連ワードにも敏感。

まずは上記4つの特徴を正しく理解すること。これがZ世代市場参入に向けた第一歩といえるでしょう。

プロモーションにSNSの活用は必須!「エモい」への意識・理解も

続いて、そのような特徴を持つ世代に対していかに情報を届けるかです。前述の通り、Z世代はWebおよびSNSでの情報収集が中心で、中でもインフルエンサーの影響が他世代に比べて非常に強いという傾向があります。Z世代向けのプロモーションにおいてSNSは必須で、インフルエンサーを効果的に活用するという意識を持っておくといいでしょう。

例えば、老舗お菓子メーカーのカンロが発売した新感覚のお菓子「マロッシュ」は、そのプロモーションにおいて、SNSで人気のクリエーターに振り付けとダンスを依頼。その動画がSNS上で話題となり、一般ユーザーたちがクリエーターのダンスを真似して投稿する二次拡散に発展しています。これはZ世代向けのプロモーションが成功した事例の一つです。

また、Z世代を意識する上で忘れてはいけないのが、「エモい」というキーワードです。これは、心が動かされて感動した時、心地よい懐かしさに包まれた時などに使われる言葉で、大正ロマンや昭和ノスタルジーを感じさせる商品やサービスなどに対して多用される傾向があります。Z世代は「エモい」を発見することに喜びを感じ、その感動を発信して共有しようとするため、「エモい」を上手に表現できるようになれば、より効果の高いプロモーションが可能になるでしょう。

その好例が、2021年にリニューアルした西武園遊園地です。同遊園地では、消費者調査により、Z世代が昭和レトロに興味を持っていることを把握すると、その世界観を再現する「心あたたまる幸福感」をリニューアルのテーマに設定。随所にノスタルジックな仕掛けが散りばめられたテーマパークへと生まれ変わりました。この「エモい」を演出するプロモーションがSNS上で共感を呼び、同世代を中心に情報が広がっていきました。

このように、プロモーション手法が適切であれば、二次拡散が起こりやすいという点もデジタルネイティブ世代ならではの特徴といえます。つまり、世代の価値観にハマるものを生み出すことができれば、小さなコストで大きな効果を期待することも夢ではありません。

Z世代を理解しておくことは、中長期的な視点からもプラスに

上記のような例からも分かるとおり、Z世代向けのビジネスにおいて重要なのは、世代特有の傾向や特徴をいかに追い風にするかという視点です。その実現には、コストやリソースの量よりも、クリエーティビティの方が重要ですから、企業の大小問わず平等にチャンスが広がっていると考えることもできそうです。ただ、逆にいえば、これまで通りの商品開発やプロモーションではリーチしづらいため、その参入ハードルの高さをどう捉えるかは企業によって異なるでしょう。

繰り返しになりますが、Z世代市場への参入を考えるなら、まずはその世代についてきちんと理解することです。そのために、例えば地域の大学のサークルに協力を依頼し、その意見を反映しながら商品開発やプロモーション手段を検討するといった方法は成功の可能性を高めるでしょう。あるいはZ世代を採用し、適切に育成した上で、同世代向けの商品・サービスの企画やプロモーションを担当させてみるといった手段も考えられます。いずれにせよ、近い将来Z世代は消費だけでなく雇用も含めて社会の中心になります。その世代の特徴を今から把握しておくことは、企業の中長期的な視点から考えてプラスに働くと考えられます。

回答者

中小企業診断士・キャリアコンサルタント・産業カウンセラー 姫野 剛慶

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