REACH規則の基礎

許可と制限-REACH規則の基礎

2021年 12月 内容改訂

認可

認可のシステムとは、人や環境に与える影響が非常に深刻で、その影響が不可逆的である高い懸念を有する有害な物質の、製造・使用のリスクを評価し、その製造・使用の可否を決定する仕組みです。

1. 認可の対象

第57条に示されている以下のような基準に基づき、化学品庁(ECHA)が認可対象候補物質(CL物質)を指定し、指定されたCL物質が第133条4項の手続きを経て、第58条により物質が特定された場合、認可対象物質としてREACH規則附属書XIVに収載されます。

(a)Regulation(EC)No.1272/2008の附属書Iに示されている発がん性のカテゴリー1Aまたは1Bに該当する物質。

(b)Regulation(EC)No.1272/2008の附属書Iに示されている変異原性のカテゴリー1Aまたは1Bに該当する物質。

(c)Regulation(EC)No.1272/2008の附属書Iに示されている生殖毒性のカテゴリー1Aまたは1Bに該当する物質。

(d)REACH附属書XIIIの基準による残留性、生物蓄積性、有毒性の物質。

(e)REACH附属書XIIIの基準による極めて残留性が高い、極めて生物蓄積性が高い物質。

(f)内分泌かく乱物質など附属書XIVに含まれ得るCL物質は、所定の手続きを経て決定。

※CMR:(a)(b)(c)、PBT:(d)、PBT、vPvB:(e)

認可対象物質には物質毎に日没日(Sunset Date)が設定されており、日没日以降は、認可を受けていなければ認可対象物質および同物質を含む混合物の使用や上市が禁止されます。

なお、2021年9月現在、REACH規則附属書XIVに記載されている物質は54物質です。将来的には約1,500物質が収載されると見込まれています。

2. 認可の要件

認可付与のための要件は、適切なリスク管理と社会経済的便益の2つがあり、要件に合致すれば所定の手続きを経て認可されます。

(1)適切なリスク管理
 物質の全サイクルを通して、物質の放出、排出および損失などによって人の健康や環境への暴露が、悪影響を及ぼす閾値未満に適切に管理できる場合。

(2)社会経済的便益
 安全レベルを決めることができない物質については、社会的経済的便益がその物質の使用から生じる人の健康または環境へのリスクを上回っており、かつ代替物質、代替技術がない場合。

認可の申請は日没日の18カ月前が期限となっており、申請期限までに認可申請を提出していれば、決定が下されるまで認可対象物質を継続して使用することができます。

制限

制限のシステムは、人の健康や環境にとって受け入れられないリスクのある物質の製造、上市および使用について、EU全域で使用に対して制限条件を付けたり、必要であれば禁止することを目的とします。

1. 制限の対象

この制度は、指令76/769/EEC(危険な物質および調剤の上市と使用の制限指令)の内容を引き継ぐものになっています。2021年9月時点でREACH規則の附属書XVII(ある危険な物質、調剤および成形品の製造、上市および使用の制限)には、エントリー#75までの収載があり、その制限条件が詳しく記載されています。

制限条件には、特定された物質の特定製品(物質・混合物、成形品)への使用禁止、消費者の使用禁止、完全な禁止など制限対象物質のリスクに応じて様々な種類があります。

2. 制限の要件

新たな制限の設定プロセスには、欧州委員会・化学品庁の提案と加盟国の提案があり、リスク管理が十分でなくEU全域で対処が必要な場合に、諸手続きを経て決定され、附属書XVIIに収載されます。

当解説は筆者の知見、認識に基づいてのものであり、特定の会社、公式機関の見解等を代弁するものではありません。法規制解釈のための参考情報です。 法規制の内容は各国の公式文書で確認し、弁護士等の法律専門家に判断によるなど最終的な判断は読者の責任で行ってください。
情報提供:一般社団法人 東京環境経営研究所