REACH規則の基礎

定義・適用範囲

2021年 12月 内容改訂

物質

「物質」とは、自然界にある化学物質や製造工程から得られる化学物質のことです。安定性を保つための添加物や製造工程由来の不純物は物質に含まれ、安定性に影響しない溶剤やその組成を変えずに分離できる溶剤は物質には含まれません。

REACH規則は、EU域内で製造または輸入する、すべての物質そのもの、および混合物または成形品に含有される物質に適用されます。

年間1t以上製造または輸入される物質は登録の対象となります。

混合物

「混合物」とは、化学反応なしに、2つ以上の物質が混合あるいは溶液状になっているもので、塗料、インキ、ニス、合金などが該当します。混合物そのものの登録は不要ですが、混合物に含まれる物質は登録の対象となります。

成形品

「成形品」とは、化学組成によって決定されるよりも大きく機能を決定する特定の形状、表面またはデザインが生産時に与えられた物体として定義され、家具、衣服、自動車、本、玩具、台所設備および電子機器等、家庭や職場で利用する多くの製品が該当します。

成形品は登録の対象ではありませんが、特定の条件を満たす成形品に含有する物質は登録の対象となる場合があります。

ポリマー

「ポリマー」とは、1種類以上のモノマー単位が連続した分子により構成される物質のことで、登録と評価の対象ではありませんが、ポリマーを構成する2wt%以上のモノマーとそのほかの物質は、登録の対象となります。

また、ポリマーの安定性を保つための添加剤や製造工程由来の不純物は、物質(ポリマー)の一部とみなされますが、ポリマーが上記以外の外観・物性向上のための添加剤を含む場合は、それらはポリマーとは別の物質となります。

中間体

「中間体」は、ほかの化学物質を合成するために製造され、その合成プロセス中に消費・使用される物質のことで、単離されない中間体、サイト内で単離される中間体、輸送を伴う単離された中間体に分けられます。合成プロセス中に完全に消費・使用され、不純物としての含有以外には最終製品に残らないため、REACH規則では特別の扱いとなっています。

単離されない中間体は、REACH規則が適用されません。一方、単離される中間体は登録が必要であり、一定の条件を満たす場合には、簡略化された登録が認められています。また、登録の一部と認可が免除されています。

REACH規則の適用除外

物質の中には、以下のように、既存の法律で規制を受けているなど、REACH規則の対象から全面的に除外される物質や、一定の範囲で適用免除となる物質があります。

1. REACH規則の適用外物質

  1. 放射性物質
  2. 税関の監視下にある物質(調剤混合物・成形品の含有物質を含む)で、
    ・何らかの処理または加工も受けないもの
    ・暫定的に保管されているもの
    ・再輸出の意図から規制対象外区域または規制対象外の倉庫内に置かれているもの
    ・輸送中のもの
  3. 単離されない中間体
  4. 輸送中の危険物
  5. 廃棄物
  6. 防衛上の理由で国から免除を受けた物質

2. 用途限定での部分的な適用除外物質(登録、川下使用者の責務、評価、認可の適用除外)

  1. 人または動物用の医薬品
  2. 食品用添加物・香料、飼料用添加物、動物栄養剤の用途で使用される食品または飼料

3. 登録、川下使用者の責務、評価から免除される物質

  • 附属書IVに含まれる物質
  • 附属書Vに含まれる物質
  • EUへ再輸入される既登録物質
  • EU内にリサイクルまたは再生される既登録物質

附属書IVには、大豆油や窒素などのヒトの健康や環境へのリスクが極めて少ないと考えられる40物質がリスト化されています。

附属書Vには、登録が不適切または不要とみなされて、登録が免除されている計13カテゴリーの物質がリスト化されています。

なお、これらの物質は、登録については免除されていますが、認可や制限は免除されているわけではありません。

4. 製品や工程を見極めるための研究開発(PPORD)目的に使用される物質の登録免除

製品や工程を見極めるための研究開発(PPORD)目的に使用される物質は、欧州化学品庁に届出されている場合は、登録を5年間免除されます。この免除期間は、申請によってさらに5年間(物質によっては10年間)延長することが可能です。

登録済みとみなされる物質

以下の物質は、登録済みとみなされます。

  1. 植物保護製品用途の活性物質および共役製剤助剤
  2. 殺生物性製品中の活性物質
  3. 指令67/548/EEC(REACH規則以前の化学物質規制の1つ)に基づいた届出物質

当解説は筆者の知見、認識に基づいてのものであり、特定の会社、公式機関の見解等を代弁するものではありません。法規制解釈のための参考情報です。 法規制の内容は各国の公式文書で確認し、弁護士等の法律専門家に判断によるなど最終的な判断は読者の責任で行ってください。
情報提供:一般社団法人 東京環境経営研究所