市場調査データ
ペットショップ(2024年版)
2024年 11月 13日
日本ではペットブームと言われてしばらく経つが、近年の飼育率は既にピークを越えてやや減少傾向にあるようだ。一般社団法人ペットフード協会「全国犬・猫飼育実態調査結果(令和5年)」を見ると、ペットの代表格である犬の近年の推計飼育頭数は減少し、猫は横ばい傾向にある。しかし一方で総務省の「家計調査(令和4年)」によると、ペットフードや用品、関連サービスへの支出は増加傾向を見せている。また生体に関してはデータはないものの、特に人気の犬種などで価格の上昇が見られ、ペット業界はいまだ一大市場であることが伺える。以下、ペットショップについての消費者の利用状況や利用意向をアンケート調査を元に探っていく。20代以上の男女1,000人に聞いた。
1. 現在の利用状況
ペットショップの利用状況について聞いたところ、回数にかかわらず利用しているユーザーの数は276人(27.6%)、非ユーザーの数は724人(72.4%)という結果になった<図a>。2009年に当サイトで行った同種の調査時のユーザー率は19%であり、今回の結果は8.6ポイント上昇している。この間、ペットを飼う世帯の割合が減少する一方でペットショップを利用する人は増えているという結果となった。
ユーザーの利用頻度を見ると、「年間で数回程度利用している」が98人(9.8%)、「半年に数回程度利用している」が95人(9.5%)と同程度であり、「月に2、3回程度利用している」が72人(7.2%)で続いている。
2. 性別・年齢別に見た利用状況の内訳
ペットショップの利用状況の性別・年齢別の割合を示した<図b>を見ると、60代以上を除くいずれの年代でも男性より女性のほうがユーザーの割合が高い。特に利用率が高いのが20代・50代女性で40%前後、30代女性も30%以上、40代女性が27%となっている。男性は年代による大きな差は見られず、おおむね20~25%の利用率となっている。なお、利用頻度においては性別や年代の違いによる特徴的な傾向は見られない。
3. 利用の基準(ユーザーのみ)
ペットショップのユーザーに店を選ぶ際に重視するポイントを聞いたところ、最多回答は「生活圏内からの距離」で97人(35.1%)だった<図c>。次項の利用にかける費用の回答からも見て取れるが、ペットショップではペットそのものというよりすでに飼育中のペットのフードやおもちゃ、ケア用品、その他消耗品などを買い求める人が多く、店が生活圏内にあるか否かが大きく影響するものと考えられる。
次いで多かった回答が「販売されているペット用品などの見やすさ」で64人(23.2%)、「低価格、お得感」で46人(16.7%)であり、「接客などサービスの質」(26人)や「スタッフの知識の豊富さ」(21人)などのソフト面より、商品の内容や価格を重視する傾向にあることが伺える。
4. 利用にかける費用(ユーザーのみ)
ペットショップ1回の利用にかける費用で最も多かった回答は「500円未満」の90人(32.6%)で、全体の3割以上を占める。次いで「1,000円〜1,500円未満」の47人(17.0%)、「500円〜1,000円未満」の43人(15.6%)、「1,500円〜2,000円未満」の38人(13.8%)が同程度であり、比較的低価格帯に集中している。この結果からも、ペットそのものや大物を買うというより、フードや消耗品などの日常的な買い物としてペットショップを利用するユーザーが多いと推測される。
5. コロナ禍の影響
新型コロナウィルスの流行(コロナ禍)がペットショップの利用にどのような影響を与えたかを聞いた設問では、「利用頻度にも利用の基準にも影響はなかった」とするユーザーが最も多く128人(46.4%)であった<図e>。「影響はあったが、また元に戻った」と答えた50人を含む65%近くのユーザーはペットショップの利用に大きな変化はなかったことがわかる。
一方で「利用頻度が減った」と答えた人が55人(19.9%)でユーザーの約2割であった。記述式の自由回答欄では「コロナ以降はペット用品をネットで購入する方が多くなった」などオンラインショップの利用について言及する人も複数おり、コロナ禍をきっかけにオンラインショップへと利用を切り替えた人もいるようだ。
6. 今後の利用意向
ペットショップの今後の利用意向について、「ぜひ利用したい」は137人(13.7%)、「どちらかと言えば利用したい」は193人(19.3%)となり、これらを合計すると現在の利用状況にかかわらず3割以上が積極的な利用意向を持っていることがわかった<図f>。現ユーザーの割合(9.4%)と比べるとかなり高い数値である。
利用意向を持つ人の記述式自由回答を見ると、「飼っているペットのために(フードなどが)必要だから」「必要なものを購入するため」の声が多い。なかには「飼っている魚や鳥のフードを買うために利用するが、犬や猫を見ることができてうれしい」「現在ペットは飼っていないが、たまに見ていやされたい」など、取り扱う動物を見るのが楽しみといった声も複数見られた。ショーケースに犬や猫などの小動物を展示する方法は多少なりとも集客には効果的のようである。
一方、「どちらとも言えない」と答えた人(319人・31.9%)や利用に消極的な人(351人・35.1%)の意見を見ると、「ペットを飼っていない」「予定がない」「興味がない」といった声がほとんどだった。あるいは「ペットショップでなくても必要なものは買える」「ホームセンターやドラッグストア、スーパーにあれば行かない」「ネットショップで買う」など、他業態の小売店で買い求める人もいるようだ。また、「生き物を商品として扱っているのがいやだ」「餌を買う分にはよいが、生体を買いたいとは思えない」など、生体を販売することに否定的な声も30件程度寄せられている。
ユーザーのみに絞った結果を見ると、「ぜひ利用したい」もしくは「どちらかと言えば利用したい」が224人(81.2%)と、積極的な利用意向を持っていることがわかる<図g>。現在利用している人はおおむね今後も利用意向があることが伺え、リピーター率は高いものと見られる。
7. まとめ(ビジネス領域としてのペットショップ)
今回のアンケートでは、ペットショップの利用率は27.6%と全体の3割近くあり、今後の利用意向はさらに高い35.5%で3割以上という結果だった。2010年調査時の利用率が19%であったことを考えると明るい材料であると言える。
ただ、現在ペットショップという業態は過渡期にあるものと考えられる。社会全体の消費者の動物福祉に対する意識が高まるなか、既存のペットショップにおける動物の取り扱いやブリーディングに関する倫理的な問題がクローズアップされることもあり、従来の業態から転換、発展した形での展開が求められる。
まず、ホームセンターやドラッグストア等、ライバルとなりうる他業態との差別化を図るために、ペットショップならではの品揃えやサービスを考える必要がある。例えば海外の珍しいペット用品をそろえたり、評判のよいフードを潤沢に用意するなどが考えられる。実店舗と平行してオンライン販売に力を入れることも一案だ。
また、販売だけでなく専門知識を持ったスタッフによるサービスを充実させ、顧客のニーズに応えることも有効である。例えば病院に行くまでもないちょっとしたペットの健康相談に乗ったり、ペットのケアやトリミング、ペットホテル、しつけ教室の開催などが考えられる。あるいはトリミングサロンやペットホテルなどとの提携も一つの手であろう。いずれにしても、取り扱う動物の心身のケアを徹底することはもちろんのこと、こうしたサービスを通じて「信頼できるペットショップ」としての地位をいかに確立するかが事業を成功させるポイントとなるだろう。
(本シリーズのレポートは作成時時点における情報を基にした一般的な内容になっています。個別の施策等を検討される際には、別途、専門家に相談されることをお勧めします)
調査概要
- 調査期間:
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2024年6月29日〜7月15日
- 調査対象:
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国内在住の20代男女、30代男女、40代男女、50代男女、60代以上男女。
サンプル数(n)1,000人
- 調査方法:
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インターネットによるアンケート調査
最終内容確認日2024年11月