起業の先人に学ぶ(2020年版)
拍手ロボットやアプリケーションソフトの企画・開発・提供【バイバイワールド株式会社】
2020年 8月 21日
1.ビジネスの特徴
- ●誰に
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子供からおじいちゃん、おばあちゃんまで、すべての人に。
- ●何を
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ぱっと見て面白いと分かるようなモノ・サービスを。
- ●どのように
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オリジナル玩具・ロボット製品やアプリケーションソフトウェアとして開発・提供する。
拍手を題材としたロボット「ビッグクラッピー」を主軸に、玩具製品やアプリケーションソフトの企画・開発・提供を行っている。
「おもしろさ」に特化した企画が特徴。「おもしろさ」の中でも「興味深い・思考をかきたてられる」といった分野ではなく、単純にくだらない、ばかばかしいものをアプリやロボットといったテクノロジーを用いる手法で世の中に提示していることが特徴。
2.起業のきっかけ
学生時代からテクノロジーとエンターテイメントの融合について取り組んでおり、学会や研究会を通じて同分野の方々とつながりを持った。同分野の先駆者である明和電機さんのもとで修行をしたり、またエンターテイメントを学ぶため大学と並行して吉本興業のタレント養成学校「NSC(吉本総合芸能学院)」に入学し一時籍を置いていたこともあった(のちに中退)。
現在に繋がる技術として、テクノロジーの扱い方は学生時代に指導いただいた稲見昌彦教授(現東京大学大学院)、サービスの面は明和電機さんから教えていただいたものが大きい。
大学院在学中に手掛けた「拍手ロボット」が吉本興業の目にとまり、クリエーターとしてお声がけをいただき、同社からの受託業務を手掛けるフリーランスとして活動をはじめた。
3.起業への道のり
当初は吉本興業所属のクリエーターとして拍手を題材にした小型玩具「パチパチクラッピー」の企画などを手掛けていた。そのような状況がしばらく続いたが、ソフトバンクがロボット「Pepper」の開発にあたり吉本興業へエンタメアプリの企画開発を依頼したことで、そのメンバーとして企画協力・設計・開発に携わることになった。「Pepper」開発でロボット開発に係る多くのノウハウを学ばせていただき、また受託の事業規模が拡大してきたタイミングで法人を設立、その後商号を現在のバイバイワールドに改めた。
社名の由来は初級プログラミングの「Hello World!」」。簡単な文を画面に表示させることを目的とする世界一有名なプログラムであるが、画面の中で起こることの象徴としての「Hello World!」に対するカウンターとして、当社の理念である実体のあるテクノロジーを象徴しバイバイワールドと名付けた。
フリーランス時代は報酬を全て次の企画の開発費に投入していたこともあり非常に苦労した。こうした経験や受託事業の積み重ねにより、自身が面白いと思っていても世の中に受け入れられ、貢献しないとお金にはならないことを身に染みて実感するようになった。間口を広げることで当初思い描いたバカバカしさとしては多少落ちることもあるが、リソースとニーズのバランスが重要であることを強く感じている。
それまでは自分ひとりで進めていくケースが多かったが、法人としての活動を本格化するにあたり自分に足りない、尊敬できる優れたスキルを持ったメンバーを意識的に募集した。こうして集まったのが現在のメンバーであり、個性的なデザイナー・エンジニア集団になっていると思う。
4.最初のお客さんを獲得するまで
当初は「Pepper」開発をはじめとした受託事業が収益のメインであり、自分たちの企画製品である小型玩具「パチパチクラッピー」を販売するも、売上は落ち着いた状況が続いていた。
そんな中、ある中国の会社から「パチパチクラッピーの類似品を開発した。日本の100円ショップに卸したいが許可を貰えないか」と相談があり、会って製品を見たところ、外観も機能もほぼ同等ながらこれを100円で販売できるのかというような高いクオリティーであった(パチパチクラッピーは1,500円)。
興味を持ったため細かい話はすっとばし中国との製造契約を締結。市場に正規品と許可済の類似品が並行して出回る奇妙な状況になったが、100円ショップを通じ大量に市場に供給されたことで、認知が広まり、ファンのコミュニティも形成された。このこと自体がもたらした収益は皆無に等しいが、その後の「Pepper」の経験も活かした拍手ロボット「ビッククラッピー」のリリース時における営業展開のスムーズさにも繋がっている。
現在は自社製品が成長し、受託事業と半々くらいの状況となった。受託事業は誰かがやりたいことを一緒に考えながら実現していく、発注内容や金額の枠組みがある程度決まったもので、制約の中で仕事を進めていく面白さがある。一方で、自社製品は自分達で「こんなのがあったら面白い」と企画し、お金になるかも分からない状態のまま進める楽しさがある。自社製品はある意味博打に近い面があるが、当社のアイデンティティであり収益の有無にかかわらず、絶対に残していきたいと考えている。このウェイトが経営において非常に大事であり、フリーランス時代の経験を活かしながら両輪として展開している。
5.今後の展開
近年は受託事業としてロボットに加えて吉本興業の教育事業に携わり、学びや教育の分野の仕事を受託する機会が増えている。たとえば「AIジミー」。スマートフォン向けのアプリで、ジミー大西さんから生成したAIが質問に答えるだけの内容であるが、AIってなんだろう?という子供にとって分かり辛いことをこれを用いながら説明することで、学びに繋がる入口の敷居を下げることができる。こうした事業は自分達の製品・サービスに深みを与えてくれるものだと考えており、今後さらに強化していきたい。
一方で自社製品としてはこれまで同様、拍手ロボットをはじめくだらないものを作り続けていく。「ビッグクラッピー」は各種のイベントや販促の現場から引き合いをいただいており、販売・レンタルともに順調に拡大している。こうした、導入企業や接した方々に楽しさをもたらす機会を創出することができる製品・サービスをさらに発信し、くだらないがクスっと笑える世の中づくりに貢献していきたい。
※掲載している内容は、4月7日に発令された緊急事態宣言前に取材したものです。
企業データ
- 企業名
- バイバイワールド株式会社
- 代表者
- 髙橋 征資 氏
- 所在地
- 東京都品川区荏原3-7-14 アルス武蔵小山201
- Tel
- 03-6426-9559
- 事業内容
- 玩具製品、アプリケーションソフトの企画・開発・提供