起業の先人に学ぶ(2020年版)
看護師向け人材マネジメントシステムの開発・提供【株式会社エピグノ】
2020年 8月 12日
1.ビジネスの特徴
- ●誰に
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病院のナース、看護師さんに。
- ●何を
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人材マネジメント・評価ソリューションを。
- ●どのように
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病院への直販・代理店販売を通じて提供する。
病院におけるマネジメントシステムの開発・販売を行う。現在は特に看護師に特化した人材マネジメントシステムを主力としている。
医療の現場では慢性的な看護師の不足が続いており、今後いっそう拡大すると見込まれている。多くの専門知識や経験が必要とされる仕事であるにもかかわらず、多くの病院では看護師のスキルや保有資格を一元的に管理する仕組みがなく、師長や部長の頭の中で配置やシフトを組み立てている。これらの背景もあって人事評価への不透明感やキャリアアップへの不安といった悩みが頻繁に発生しており、実に全体の75%の看護師が離職を考えているというデータもある。
こうした問題を抱える病院に、看護師のスキルや評価、人員配置を「見える化」できる当社のマネジメントシステムを提供することで、最適な配置、シフト作成やキャリアプランの組み立て、メンバー間のコミュニケーションを支援する。
2.起業のきっかけ
スタート時に取り組んだのはAIを利用した手術室のスケジュール最適化ソリューション。これは過去のデータをAIで分析し各手術の時間を予測することで、従来のアナログ的な時間の押さえ方ではロスが発生しがちな手術室の稼働時間の最適化を実現するもの。稼働率の改善から労働効率化へと繋げることを企図しており、慶應大学ビジネス・スクール時代の同期で共同経営者である志賀氏の着想である。志賀氏は現役の麻酔科医であり、数多くの手術の現場を経験するなかでの問題意識が根底にあった。
一方で実際に多くの病院を訪問し話を訊くうちに、時間だけを調整してもうまくいかず、実際に動くヒト、モノを含めたマネジメントが必要だということがだんだん分かってきた。特に看護師は数も多く病院経営における大きな要素であることから、この看護師に特化したマネジメントシステム開発の話が持ち上がった。
3.起業への道のり
2016年9月の法人設立以後も初期は創業メンバー皆がそれぞれ別の仕事を持ちながらシステム開発へ取り組んでいた。自分(乾氏)と志賀氏が要件を定め、それをエンジニア出身のメンバーが具現化し、出来たものを実際に現場の方々に見せて意見をもらう形で進めていった。2017年3月に慶應大学が主催した健康医療ベンチャー事業の発表会において日本マイクロソフト賞(特別賞)を受賞できたこともあり、本格的な事業化の目途がついたタイミングで、各人がフルタイムで当社に専念するようになった。
お客様の本当に欲しがるものを作る難しさを日々痛感している。自分達としてこう思う、という意志はもちろん大事だが、現場の人々が直面している悩みやニーズはまた別に存在することもある。それをいかに吸い上げるか、課題解決へ向けたソリューションになっているか、ということを考えながら取り組んでいる。
複数人で起業した経験から、創業メンバー間での取り決めはとても大事だと感じている。それぞれが一生懸命に事業を進めていくなかで、方向性が一致することもあれば、意見に違いが出てくることもある。いろいろな問題に直面したときの意思決定ルールを設けておくこと。また創業株主間契約等についても最初のうちからしっかりと取り決めておくことは重要だと思う。
4.最初のお客さんを獲得するまで
最初は共同創業したメンバーが各自のつてを頼りに病院関係者を当たっていった。大々的にではなく、実際に目の前にいる当社のソリューションを必要としてくれる人をつかまえることが大事と考え行動し、そこでもらった意見を持ち帰り、サービスに反映させていった。今思うとかなり属人的な営業であったが、沢山の方とお会いするなかで「こいつらなら問題を解決してくれるんじゃないか」という感触を持ってもらえたことがその後に繋がっていると考えている。
顧客獲得に際して、初期プロダクトであることの難しさも感じている。新しい分野へ向けた製品であり、実現したい機能、現場から希望されている機能についてヒアリングや検討を重ね実装を進めている状況だが、大手のパッケージソフトのような色々な機能を備えた、製品として一通り出来上がったものが提供されるとお客様に誤解されてしまうこともある。こうした認識のずれがあるとお客様にも迷惑をかけてしまうため気を付けながら進めている。逆にいえば現在は、新しい分野の製品を一緒に作っていこうとしてくれる、エピグノというチームを買ってくれるお客様に支えられている。
5.今後の展開
現在は看護師用が主であるが、次のステップとして薬剤師や理学療法士、技師などのコメディカルといわれる医療従事者向けマネジメントシステムの展開を見据えている。まずは医療におけるヒトの分野に注力し、病院の人材マネジメントシステムといえばエピグノと名前が挙がるよう実績を積み重ねていきたい。
一方で病院には人材分野以外にも、以下の様々な要素が存在する。
・モノ(各種機器、ソフトウェア、薬など)
・時間(予約、待ち時間、動線など)
・情報(対患者およびスタッフ内の情報伝達)
将来的にはこういった病院のすべてのリソースを一元的に管理できる仕組みを提供し、医療のクオリティ向上へ貢献していくことが目標である。
※掲載している内容は、4月7日に発令された緊急事態宣言前に取材したものです。
企業データ
- 企業名
- 株式会社エピグノ
- 代表者
- 乾 文良氏
- 所在地
- 東京都港区六本木6-8-10 STEP六本木ビルWEST1F
- Tel
- 050-3646-3648
- 事業内容
- 医療機関向けマネジメントシステムの提供