起業の先人に学ぶ(2020年版)
地域交流事業、共助コミュニティ創生事業【株式会社AsMama】
2020年 7月 30日
1.ビジネスの特徴
- ●誰に
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・コミュニティ創成支援事業は、地方自治体や不動産会社、商業施設を運営する企業に。
・地域交流事業は、自社でオリジナルコンテンツを持つ企業に。
- ●何を
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・コミュニティ創生事業では、対象コミュニティ住人やメンバーの懇親機会創りと共助コミュニティシステム「子育てシェア」の実装。
・地域交流事業では、口コミ等リファーラルによるPR、マーケティング支援と交流イベントの企画・実施。
- ●どのように
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・コミュニティ創生事業では、中核を担うコミュニティリーダーの育成を行い、自立自走する多世代共助コミュニティ形成を支援することで、地域課題解決や価値向上を図る。
・地域交流事業では、オリジナルコンテンツを持つ企業に対して、当社独自のネットワークでリファーラル(口コミやSNS発信等)を行った後、ターゲット顧客とミートアップできるイベントを企画・開催をし、商品のPRや販売促進、新規顧客獲得、人材獲得、マーケティングの場を提供する。
子育ての支援を目的とした「子育てシェア」というインターネットシステム(仕組み)を提供している。「子育てシェア」とは友人や近所の方・同じ学校へ通う親といった信頼できる知り合い(支援者)に子どもの送迎や託児を依頼することができたり、モノの貸し借りやお出かけの誘い合いが出来るプラットフォーム。利用者と支援者の間では1時間ワンコイン程度の謝金が発生するが、当社は会員から一切サービス料を得ていない。この「子育てシェア」の仕組みなど、当社が全国各地で構築するコミュニティネットワークやノウハウを利用し、自治体や企業に対して、コミュニティ創成支援事業、地域交流事業として、コミュニティ形成や商品PRなどを行うことで当社が報酬を得るビジネスモデルを展開している。
会員から当社への金銭支払いが生じない仕組みが優位性に繋がっていると考えている。会員は「共助社会形成」という当社の取り組みに共感した方のみとなっていることから、人材育成とコミュニティ形成がし易くなり、口コミなどで拡大が図られている。子供を預ける際には、預ける側が知らない人には預けられないよう安全性を担保する認証システムを導入する一方、近隣に頼れる知人がいない人を対象とした親子参加型の交流の場や、地域の「シェア・コンシェルジュ」と呼ばれる当社認定サポーターを全国各地で育成する体制を設けている。イベントは一過性にならないように、継続的な企画にすることで、参加者同士が複数回の顔合わせをする機会を促し、コミュニティ形成支援を行っている。
2.起業のきっかけ
日本の抱える大きな課題は、人口減少社会の中で、いかにして労働力を確保していくかである。子育て世代が安心・安全に気兼ねなく子供を預けられたら、その分の時間を仕事へと回すことができる。仕事だけでなく自由なライフバランスの支援にもなり、さまざまな社会問題の解決へ繋げられる。こうした発想から発展し、近所や友人といった現実の場での信頼関係を土台として子供を預けられる仕組みを作り、さらにその仕組みを利用する人々でコミュニティを形成することで、人間関係が希薄化する中で、そういったコミュニティに対して価値を求める自治体や企業に対して、ビジネスを展開することが可能だと考えた。
3.起業への道のり
まずは共感者を集める必要があると考え、SNSなどで呼びかけて、知り合いや興味を示した人を集め「どのような時に子供を預けるか」、「どのようにすれば仕事ができるか」などのユーザーニーズ調査を行った。結果、ライフステージによって状況は変わることから利用者となる方々の情報交換こそが重要であるという認識に至り、その後は短期間の間に東京・大阪・名古屋などで交流会を100回以上実施しながら頼れる人材のネットワークを広げていった。こうした活動の中で、イベントや交流会が面白ければ面白いほど、逆に本来の目的である情報交換や交流が薄れることに気が付き、本質を見失わないコミュニティ運営のノウハウを学んでいった。
当社サービスの大きな特徴として、すべての子育て支援者に対し万一の事故に備えた損害賠償責任保険が自動適用されることが挙げられる。会員全員に対する保険適用は、これに対応する保険そのものが無かったこともあって最初は保険会社に相手にされなかった。多くの損保を回り、現場を視察してもらうなかで安全性や仕組みを評価され、日本初の保険適用を獲得した。
4.最初のお客さんを獲得するまで
コミュニティを活用したビジネスモデルの創生について、過去にない事例であることからコミュニティ形成の価値が理解されにくく、また形成自体にも時間がかかるため、企業を巻き込んだ事業化までには試行錯誤を重ねた。
初期の交流会がタウン誌や地域紙などに取り上げられたことで、横浜駅近隣の商業施設運営企業から問い合わせがあった。これまでOL層をターゲットとしていたが、ファミリー層へシフトするリブランディングを検討しており、当社のコミュニティが注目された。これにより地域住民とテナントのタイアップ型イベントが実現し、最初の顧客となった。以降はオリジナルコンテンツを持つ企業に対して当社のコミュニティを周知させる活動を中心に進めていった。当初は実績が乏しかったことで、年契約のなかで本当に企業に貢献できるのかを危惧され、なかなか成約に結びつかなかったが、一歩ずつ価値や信用を勝ち得ていった。
5.今後の展開
設立からの過去10年は当社のサービスに共感してくれた子育て世代と共に歩んできた時間であったが、今後の10年は女性のみ・夫婦のみでの子育てという考え方が古くなり、地域全体の老若男女が担い手になる時代だとみている。子育てだけでなく介護についても同様のことが言え、地域コミュニティでの介護の時代がくると考えており、地域コミュニティのさらなる拡大を通じて、子育て世代、介護、外国人、企業、自治体など幅広い相手に対して、サービスを提供していく。日本へ移住する外国人が増加している状況もふまえ、外国人向けにサービスの多言語化も図っていきたい。
※掲載している内容は、4月7日に発令された緊急事態宣言前に取材したものです。
企業データ
- 企業名
- 株式会社AsMama
- 代表者
- 甲田 恵子氏
- 所在地
- 神奈川県横浜市中区山下町73 アクティ横浜山下町1306
- Tel
- 045-263-6433
- 事業内容
- 地域交流事業、共助コミュニティ創生事業