起業の先人に学ぶ

コーチングで人と組織の成長に貢献する【コーチ・コントリビューション】

企業、教育機関、スポーツ分野など幅広いフィールドでコーチングという人材育成の手法を生かし、"人と組織の成長に貢献する"会社を30歳で設立。オリンピックの東京開催決定を追い風に、九州から全国への事業展開を目指す。

コーチ・コントリビューション株式会社 代表取締役社長 市丸邦博
福岡県出身。大学卒業後、株式会社クボタ、松下電工株式会社(現パナソニック株式会社)の共同出資会社、クボタ松下電工外装株式会社(現ケイミュー株式会社)入社。関東・首都圏営業部で、3500社以上の経営者・マネージャーにコーチングを生かしたトップセールスを経験。2010年、30歳でコーチ・コントリビューション株式会社設立。国際コーチ連盟(ICF)プロフェッショナル認定コーチ。

人の個性や強みを最大限生かすコーチングを実践

コーチ・コントリビューション株式会社 代表取締役社長 市丸邦博

──御社が行なっているコーチング事業について教えてください。

大きく分けると、企業や組織の経営層、リーダー層の方を対象としたコーチング・トレーニングと教育機関におけるコーチング・トレーニング、そしてスポーツ分野におけるコーチング・トレーニングがあります。スポーツ分野では、コーチングを導入した小中学生向けのサッカースクール事業も展開しています。

コーチングとは、個人の特性や強みに合わせて、その人が本来持っている能力と可能性を最大限引き出し、夢の実現や目標達成まで導くことを意味します。

具体的に言うと、相手の話をよく聞き、その人自身の考えを引き出したり、思いを承認したりすることで、やる気や自発的な行動を促すコミュニケーションスキルです。特に企業のリーダー層にとっては組織運営・部下育成のために必須のスキルといわれていますが、企業だけでなくスポーツチームや学校・教育現場、医療現場、さらには親子関係にも取り入れられるものです。

──いわゆる人材育成のための教育プログラムのようですが、よくある研修やセミナーとは異なる印象を受けます。

研修やセミナーとはまったく違いますね。私たちは、企業とは年間顧問契約を結び、まず課題に応じてオリジナルリサーチ調査、リーダーシップ向上調査を実施します。そして、コーチングの対象となる人材一人ひとりに合わせたオーダーメイドのコーチングを、1対1で、対面あるいは電話での対話を通して3カ月-1年ほど行ないます。

さらに対象者がコーチングを受ける前と受けた後でリーダーシップがどう変化したか、きちんと成果を数値化して実証します。スポーツ分野でも同じように、プロのコーチや選手、アスリートなどを対象に、1対1でコーチングを行ないます。

──コーチングには専門のスキルが必要だと思いますが。

私は、専門のトレーニングを受け、国際コーチ連盟(ICF)プロフェッショナル認定コーチの資格を取得しています。国際コーチ連盟の本部はアメリカで、この資格取得者は2012年時点で84カ国8500名、日本には現在124名ほどいます。

コーチングを行なうのに必ず資格が必要な訳ではありませんが、他にも認定コーチの資格はいくつかあり、当社では有資格者6名を含め、専門的なトレーニングを受けた総勢32名のメンバーを揃えています。"コーチングを学んだコーチ"が当社の商品ですから、社内の人材育成にももちろん力を入れています。

学生時代にリーダーシップとは何かを考えたのがきっかけ

──市丸さんとコーチングとの出会いは?

大学時代、経営戦略のゼミの研究室でリーダーを任されたことと、同時期にサッカーでいいコーチに出会ったことが、最初のきっかけだったと思います。それまでの私は自分に自信がなく、人に言われたことしかできない人間でした。しかしリーダーになったことで、どうやったら20人のメンバーをまとめられるのか、みんなにやる気をだしてもらえるのかを必死で考えました。

サッカーでは、選手自身が自ら考え、成長し、目的を達成することで、家族や友人にまで喜びが波及することを実感しました。「コーチング」という専門のスキルがあることはまだ知りませんでしたが、その頃からすでに"他者の成長"に関わるような仕事がしたいと思っていましたね。

──専門的にコーチングを学んだのはいつ頃ですか?

大学を卒業後、大手の外装建材メーカーに入社してからのことです。営業職でしたが、思うように成績を上げられず、悩んでいた時、コーチングというものがあると知り、思い切って自己投資してみようと1年半かけてトレーニングを受けたんです。

そのスキルを生かし、商談でコーチングを実践したところ、営業成績でみるみる成果を上げ、全国40拠点のトップをとるまでになりました。それで上司に持ちかけ、社内で全国の営業支部のリーダー118名を対象にコーチング・トレーニングを実施しました。その結果、営業実績が上がっただけでなく、社内風土が劇的に変化しました。上からの指示命令でしか動かなかった社員も自ら考え、行動するようになったんです。

──上司をコーチングして組織改革を実現したわけですね。

そうですね。その経験を生かし、日本コーチ協会が主催する大会で「20代からの組織風土改革」という事例報告も行ないました。人材育成のスキルには、知識を与えて教えるティーチングと、自ら考えて主体的に動いてもらうように促すコーチングがあります。

いつもコーチングがよい訳ではなく、どちらの手法を使う方が適切であるかは場面によって違ってきます。そういったことを上司がきちんと自覚して部下を指導することで組織は本当に驚くほど変わります。それが組織としての目標をより早く達成する近道になります。

2020年の東京オリンピック開催を視野に全国展開を目指す

──起業は2010年、30歳の時ですね。

それまでの経験と実績から、私のミッションは「人と組織の成長に貢献する」ことだと確信し、それを社是にコーチ・コントリビューション株式会社を設立しました。日本では1997年頃からプロフェッショナル・コーチの養成が始まり、日本コーチ協会が設立されたのが1999年ですが、コーチングが企業などでも注目を集め始めたのは、2007年くらいから。

ただ、ICFの資格取得者も8割が東京在住ですし、地方ではまだまだこれからだと思い、退職して、地元の九州に戻り、福岡で起業することを決断しました。タイミングは非常によかったと思います。

──タイミングといえば、2020年の東京オリンピック開催も決まり、御社にとっては追い風ですね。

スポーツ分野では、これまでもオリンピック日本代表選手のコーチングをはじめ、Jリーグのコーチのコーチングなども手掛けてきましたが、スポーツ界での需要はますます高まるでしょう。2015年くらいからは具体的にJOCなどにもアプローチしていきます。

また当社では、主として小学生を対象にコーチングを導入したサッカースクールを福岡県内16拠点で運営しています。現在会員は260名。2014年4月には関東でもスクールを開設する予定ですし、オリンピックでスポーツの裾野が広がることで、こちらの事業も活性化していくと思います。

当社では東京オリンピック開催が決まる前に、すでに「2020年までには100人のプロのコーチを擁するコーチングファームとして、九州から全国へ事業を展開していく」というビジョンを描いていました。オリンピックはまさに追い風です。

──将来の夢や目標はどんなことですか?

私の目標は2030年、50歳でリーダーシップを養成する学校をつくること。将来的には600万人を育成する機関にしたいと思っています。その最初の取り組みとして、コーチングの基礎から実践力までを養成する8日間のカリキュラムを構築し、この2013年11月、コーチングのスキルを教える短期のスクールを期間限定で開講します。

私は企業をはじめ組織というものは、最終的には社員や顧客、地域の人々の幸せのために存在するものだと思っています。コーチングによってコミュニケーションスキルを身に付けるのは、そのための有効な手段です。一人でも多くの優れたリーダーを育て、人と組織の成長に貢献していきたいと考えています。

企業データ

企業名
コーチ・コントリビューション株式会社
Webサイト
設立
2010年8月
所在地
〒812-0029 福岡県福岡市博多区古門戸町1-1 日刊工業新聞社 西部支社ビル8F
Tel
092-292-4881

掲載日:2013年12月12日