起業の先人に学ぶ
「おうち起業」のママネットワークを武器にマーケティング会社設立【株式会社GRACE CREA】
自らの体験をもとに「おうち起業」という発想で子育て中のママを支援するNPO法人を立ち上げ、さらに巨大なママネットワークを生かしてマーケティングとプロモーションを手掛ける会社を設立。ママたちの夢を応援しながら、消費者と企業双方の利益と幸福を追求している。
株式会社GRACE CREA 代表取締役 清水麗子(しみず・れいこ)
1969年生まれ。福岡県出身。東京で育ち、東京成徳短期大学卒業。東京日産自動車販売に就職し営業職で活躍。結婚で福岡に戻り、パート勤務を経て、2006年2月、特定非営利法人ecomamを設立。さらに2008年6月、株式会社GRACE CREA設立。会社員の夫と高校生の息子、小学生の娘の4人暮らし。
自分らしく輝きたいママたちを応援。
──現在の会社の前に、子育て支援を行なうNPO法人を設立されたと伺いました。
そもそもは、私が同郷の人と結婚して東京から福岡に戻り、子育てをしながら自分にできることは何かないかと考えたことから始まりました。子どもが保育園に通っている間、保険の営業やコールセンターなどさまざまなパートを経験したのですが、子育て中のママたちが資格や特技を生かしてもっと自分らしくいきいきと働くことはできないかと考えたんです。そこでまず、託児付きのカルチャー講座を始めました。なにしろそれまでにパートで9回も転職して、たくさんのママたちを知っていましたから、資格を持っている方に講師をお願いして、参加費1000円で受講できる教室をスタートしたんです。
──その活動がNPO法人設立に繋がったのですね。
最初は自宅で開いていましたが、クチコミでどんどん受講者も講師も増えていきました。20人集まれば、講師の方に3000~5000円の謝礼を払ってもなんとか運営できるとわかり、やがて場所を借りてお花や料理、クラフト、アロマなどいろいろな教室を開催するようになりました。その活動が福岡県各地に広がり、知り合った人にNPO法人をすすめられて2006年に「特定非営利活動法人ecomam(エコマム)」を設立しました。
──当初から起業ということを意識されていたのですか?
漠然とではありますが、ずっと以前からいつか自分で事業をやってみたいと考えていたように思います。しかし、結婚前は自動車販売の営業をやっていて、仕事にとてもやりがいを感じていました。結婚して仕事を辞めたことで、むしろこれは起業のチャンスかなと(笑)。パートをしながら図書館に通ってさまざまな本を読んだり、起業のヒントを探していました。私は昔から人を喜ばせるのが好きで、学生時代からいろんなパーティを主催したり、営業の仕事もお客様が喜んでくださることがやりがいだったんです。そこで、子育て中のママたちと出会い、まずは自分の身近な人々に喜んでもらうことから始めようと思ったわけです。
──まずは収益よりも事業の中身を形づくろうとされたのですね。
そうですね。そこで、子育て中のママたちのためにできることとして最初に取り組んだのがカルチャー講座で、次に「自宅で子育てや家事と両立させながら自分らしく自営でお仕事をする」ことを目的として「おうち起業」という名前を考案し、おうち起業講座も始めました。さらにエコマムでは現在もセミナーや講演会を開催するだけでなく、ママたちがそれぞれの作品などを出展し、子連れで気軽に参加できる「ママフェスタ」などのイベントも企画・運営しています。これが多くの方に支持され、4年間で延べ1万人もの参加者を集める巨大なネットワークができあがりました。
──その間、ご苦労されたことはありますか?
やはり、起業したいと思っているママたちの間でも本気度や意識の違いがありますし、NPO法人としてはイベントの運営などにしてもボランティア的な活動が多く、最初はなかなか理解してもらえませんでした。いろいろ葛藤してやめていく人もたくさんいましたね。反対に、人が増えたら増えたで管理するのも大変です。それで、地域に設置していた支部を一次閉鎖したこともありました。しかし、再開すると同時にまた一気に人が集まりました。
企業からも注目を集める3000人のママネットワーク
──そのネットワークが現在の事業の核となっていますね。
2008年に設立したグレイスクリエのおもな事業は、このネットワークを生かしたマーケティング兼プロモーションです。子育て中のママたちを対象としたマーケティングリサーチやモニタリングなら、あっという間にできます。現在、約3000人のママネットワークがあり、県内10エリアに一人ずつエリアリーダーがいて、リーダーを通して参加者を募ります。
私は常々、おうち起業を目指すママたちに「起業するなら、まず自分で直接連絡をとれる100人を集めること」とレクチャーしていますので、リーダーから各支部の会員に連絡することで、難なく人を集めることができます。ママたちを集め続けられるその仕組みと、集客、動員力が当社の最大の強みです。ある携帯電話会社の依頼で、わずか1カ月半で2000人を対象としたプロモーションを実現したこともあります。
──リサーチやモニタリングだけではないところが大きな特長だと思います。
ママネットワークを単に市場調査などに活用するだけでは意味がないと思っています。私が求めているのは、ママたちに、企業の対等なパートナーとして参加してもらうこと。そうすれば、消費者と企業を繋ぐ存在となることができ、企業の新規事業や商品開発、既存事業の拡大などで社会に有効に貢献することができます。
当社では、企業から依頼があれば、ママたちでプロジェクトチームを作り、企業の担当社員とミーティングを重ねて具体的なプロモーションや商品企画などをご提案します。ママたちの本音、本当に必要としているものをベースに提案しますから、本来のニーズにマッチしたご提案ができ、企業からも高い評価を受けています。たとえば、住宅展示場でママたちが子連れで行きたくなるイベントを仕掛け大成功しました。もちろん運営を手掛けるのも全部ママたちです。
──消費者の生の声を生かしたプロモーションができるわけですね。
企業側も、ようやくアンケートなどではわからない「顔が見える関係」の重要性に気づき始めています。ママたちは、企業の担当者に率直に、その企業の長所と欠点を指摘します。面白いのは、欠点よりも意外と自分自身の長所に企業が気づいていないことが多いこと。長所に気づくことで、それを効果的に生かす新しい発想も生まれます。その結果、消費者が本当に望んでいるサービスや商品、イベントが誕生し、企業からは社員のモチベーションが上がって社員教育にもなると言っていただいています。ママたちも企業もみんながハッピーになれるんです。
みんなの「こうなりたい」「こうしたい」を実現したい
──エコマムでのイベントからグレイスクリエの事業まで活動が多彩ですね。
こんなことができたらいいなとみんなが思うものを次々と実現しています。ママたちの声に応えて、「おうち起業をしている、もしくは、いつかはチャレンジしたいと考えている人」向けに、食品や化粧品などの商品を卸売価格で提供する「FIKA market(フィーカマーケット)」も立ち上げ、通販も始めました。また、実際に商品を手にとって見てもらえるよう、2012年8月に「FIKA」の名で店舗もオープンし、ママたちが子連れで気軽に集い交流できる拠点にもなっています。
──これからの夢や目標を教えてください。
今、新たに取り組んでいるのは「お金を生み出す家」づくり。おうち起業したいママのために、玄関から入ってすぐのスペースをビルトインガレージ形式で工房や店舗などにも使えるようにした家です。すでに私のプロデュースで図面も出来上がり、お付き合いのある住宅会社がモデルハウスを建設してくれる予定です。
そして、生涯をかけた私の夢は、現在の活動を世界に広げ、社会に貢献すること。エコマム設立時に掲げた「幸せな子どもを育てるためにはママが幸せでいよう。夢を持つ子どもを育てるためにはママが夢を持とう」というスローガンをもっともっと広げ、ママも子どもも企業も社会もより幸せになれるようチャレンジし続けたいと思っています。
企業データ
- 企業名
- 株式会社GRACE CREA(グレイスクリエ)
- Webサイト
- 設立
- 2008年6月
- 所在地
- 〒810-0041 福岡県福岡市中央区大名1-9-7-606
- Tel
- 092-732-6732(代)
掲載日:2013年2月21日