起業の先人に学ぶ
「株式会社グッドALLサービス」通信コンサルで起業、多角化で事業拡大
プロゴルファーへの道をあきらめ、転職で営業スキルと経営感覚を磨いた永瀬裕志郎氏。31歳で起業し、競争の激しい通信業界において、顧客ニーズに合わせた提案型サービスの提供により他社との差別化を実現。社員満足にもこだわり、さらに事業の拡大を目指す
株式会社グッドALLサービス代表取締役 永瀬 裕志郎(ながせ・ゆうじろう)
1979年生まれ。福岡県出身。九州産業大学付属九州産業高等学校卒業。プロゴルファーを目指して研修生となるが、あきらめ、転職を経てソフトバンクに入社。31歳で退職して株式会社グッドALLサービス設立。趣味はゴルフと、家族と一緒に買い物やスーパー銭湯に行くこと。
通信の総合コンサルから経営コンサルへ
──御社の事業内容を教えてください。
インターネットや携帯電話など通信回線の総合コンサルティング業と、新品・中古を問わずパソコンなどのOA機器の販売を2本柱に事業を展開しています。また、今期中には法人向けのソリューション事業という形で、新規に設立する企業向けに、通信回線、OA機器をはじめとしたオフィス商材の一括提供、さらに将来的には税理士、弁護士、労務士などによる経営コンサルティングも行なっていくつもりです。
──具体的にどのような顧客にどのようなサービスを提供していますか?
お客様はほとんどが企業や店舗です。たとえば不動産会社に新築物件の設備条件に合わせたインターネット回線のプランや配線方式をご提案したり、様々なマンション用集合装置も取り扱っています。パソコンショップやパソコン教室などともお取引きさせていただいていますし、業種を問わず、通信回線に関するあらゆるサービスや法人向け各種クラウド商材の提供も行なっています。iPadやスマートフォンをはじめ、通信業界では新商材、新サービスが次々と登場しています。お客様のニーズに合った最適なプランをご提案するために、総合的なコンサルティングが非常に重要だと考えています。
転職を繰り返す中で見つけたやりがい
──31歳での起業ですが、それまでのいきさつは?
私はもともとプロゴルファーになりたくて、高校卒業後、長野県のゴルフ場の募集広告に応募し、住み込みという形でゴルフの研修生になりました。アルバイトをしながら練習をするという厳しい状況で、自分なりにこれ以上は無理だと思うほど頑張りました。しかし1年後、「プロにはなれない」とはっきりと告げられ、自分でも納得してきっぱりあきらめる決断をしました。そして九州に戻って就職し、食品や食肉の営業という仕事に就きました。ただそこではルート営業だったので、新規開拓もやりたくて転職し、次の会社ではカラオケの営業でそれなりに実績も上げました。
──プロゴルファー志望から一転、営業職でやりがいを見つけられたのですね。
本当のところは、自分が本来やりたいことは何なのか、まだ探している状況でした。それで結局、その会社も辞め、24歳の時、人材サービス業の会社が介護事業の新規立ち上げに伴って人材を募集しているのを知り、再び転職しました。3カ月ほどで関連の人材会社に転籍したのですが、そこで、単なる欠員補充の人材派遣ではなく、大手スーパーなどに売り場単位で20~30名規模の人材のオペレーションを提案しました。それが成功し、会社にその実績を評価されて、代表取締役社長に抜擢されたんです。派遣スタッフを200名ほど抱え、わずか24歳で責任ある立場になったことで、それこそ寝ずに働きましたね。でもその時初めて、仕事の本当の面白さや喜びを実感することができました。
──社長業のやりがい、それが起業への直接のきっかけですか?
いつかは起業したいという思いはずっとあったのですが、確かに社長業の経験は大きな転機だったと思います。ただ、まだ若かったので、もっと別のチャレンジもしてみたいと思っていたところ、その会社が大手の介護事業会社と合併することになり、それを機に退職しました。そして、できれば上場企業の営業マンのスキルも学びたいと考え、当時伸び盛りで勢いのあったソフトバンクの求人に応募しました。もちろん応募資格は大卒で、ハードルは高かったのですが、何度も何度も足を運んでなんとか面接してもらい、自分の経歴をアピールして入社することができました。
──そこで、現在に繋がる通信の仕事と出会ったわけですね。
仕事は代理店管理でしたが、自分が直接お客さんをとってくる営業とは違って、代理店の実績が伸びることを第一に考え、指導するという仕事の難しさに直面しました。でも同時に、スキルの高い同僚や先輩にもまれて大きく成長することができたと思います。やがて九州地区の代理店の新規開拓を任されるようになり、本社への異動を打診されました。その時は本当にものすごく悩みましたが、やはり、たとえリスクはあっても起業をあきらめたくないと思い、本社転勤を断って退職しました。
自己資金ゼロでスタートし、2年目で売上1億円に
──起業にあたって不安はありませんでしたか?
プロゴルファーをきっぱりあきらめた時もそうですが、私はいったん決断したら、後ろは振り返りません。ソフトバンクに勤務したのは2年くらいでしたが、代理店管理をしていたこともあり、通信事業の代理店をやる自信はありましたし、そもそも通信は仕入れがないのでリスクは少ないと判断し、自己資金なしでスタートしました。
─業績は立ち上げから順調でしたか?
もちろん最初は大変でしたし、どんな商売にも波があり、良い時も悪い時もあります。しかし現在、顧客の法人数が150社程度になり、社員も7名、北海道に支店も開設することができました。昨期の売り上げは1億で、今年度の目標は2億5000万円。「3年10億計画」を立て、来年度はまず今年度の倍、5億円の売上達成を目指します。
──経営者としては具体的な目標設定が大切ですね。
以前、若くして社長をやっていた時は、足し算をしていたんです。今期の売上がこれだから、来期はこのぐらい足して、というように目標を設定していました。しかし、それでは大きな成長は望めません。2010年に今の会社を設立した時、私は「5年10億」という目標を書いて自宅の壁に貼りました。まず高い目標を設定し、そこから引き算して、単年、単月の目標を割り出す。そしてその数字を達成するために、今、何をすべきか考えることにしました。経営者としてはまだまだ勉強中ですが、企業の中長期計画はそうやって立てるものだと思います。
社員満足度の向上が企業価値を高める
──他に、経営者として心がけていることはありますか?
若い人にチャンスを与えることです。私がそうだったように、立場が人を変え、会社を変えます。現在、21歳の社員に部長をやらせていますが、人は役職に就くとその立場に追いつこうと必死に努力します。社員を成長させたいなら、責任あるポジションを与えるのがいちばんの近道です。結局は、そうやって仕事の中身や給料できちんと社員の期待に応え、社員満足度を高めることが、企業の価値をも高めます。社員の可能性を引き出し、能力を伸ばすのは、経営者としての大きなやりがいでもあります。
──起業にあたって重要なことはどんなことだと思いますか?
戦略戦術も必要ですが、もっとも大切なのは自分を信じる力と"想い"の強さだと感じています。勤めていた頃の上司に「想いを相手にぶつけろ」とよく言われたのですが、まさにその通りです。想いは必ず伝わり、人を動かします。結果の大きさは想いの大きさでもある、というのが持論です。想いとリスクを比べて1%でも想いのほうが強かったら、何にせよやるべきだと思います。
──事業について今後の展望や計画を教えてください。
過去の経験を生かして、すでに専門職に特化した人材サービスの業務を開始しています。また、別法人になるかもしれませんが、将来、介護系の事業も立ち上げたいと思っています。介護施設だけでなく、訪問介護の分野や、さらに高齢者向けに理容・美容の訪問サロンのようなサービスをやってみたいですね。私は「夢」という言葉は嫌いなんです。すべては夢ではなく「目標」として、必ず実現させたいと思っています。
企業データ
- 企業名
- 株式会社グッドALLサービス
- Webサイト
- 設立
- 2010年5月
- 所在地
- 本社/〒812-0011 福岡県福岡市博多区博多駅前3-6-12 オヌキ博多駅前ビル3F 札幌支店/〒080-2470 北海道帯広市西17条南5-11-7
- Tel
- 092-475-1177(本社)
掲載日:2012年7月12日