起業の先人に学ぶ

「株式会社アンシャントマン」マンガ文化を世界に発信!

最近の日本文化として世界中に熱狂的なファンを持つマンガ。しかし、海外で知られているのは、ごく一部の有名な作品ばかりだという。アンシャントマンの松山秀俊社長は、「アマチュアの作品も含め、マンガ文化を海外に広めたい」と、起業を決めた。

株式会社アンシャントマン 代表取締役社長 松山秀俊(まつやま・ひでとし)
1974年兵庫県生まれ。大学卒業後、テレビゲーム販売チェーンに就職。店長を経験した後、フランスとの国際ビジネスを行うために退職。2003年、神戸大学大学院に入学し、交換留学生としてフランス・ニース大学に留学。ドリームゲート創業者祭へ応募し、セミファイナリストになったことから、2006年、アンシャントマンを設立。

商品や企業をマンガでPR

──御社の事業内容を教えてください。

一つは、マンガ家のプロモーションです。ネット上で作家ポートフォリオをPRして描き下ろしのお仕事をいただいたり、携帯でマンガを配信したりするサービスを行なっています。

二つ目は、企業の商品やサービスをマンガやイラストで紹介するという、企業向けのプロモーションサービスです。ホームページやパンフレットなどにマンガを使うことで、内容がわかりやすく、親しみやすくなります。また、商品にイラストを入れたり、キャラクターを作ったりすることで、他の商品との差別化にもつながります。

三つ目は、フランスへの進出をサポートするサービスです。フランスの編集者や企業と提携し、フランスへ進出する日本企業やマンガ家に情報提供やビジネスマッチングの支援を行なっています。

──企業の商品やサービスをマンガで紹介するサービスは広告代理店などでも行なっていますが、そうしたところと御社の違いは何ですか?

サービスを利用する企業にとってのメリットは、紹介したい商品やサービスに最適なイラストやマンガが選べるということです。たとえば、デザイン会社などでは、自社のデザイナーが絵を描くため、デザインのバリエーションが限られますが、当社には、230人以上のマンガ家が登録しているため、ゆるキャラから萌え系、戦国モノまで、お客様の希望するイメージのマンガやイラストを提案できます。

営業から教育まで、マンガ家を側面支援

──マンガ家にとって、御社に登録するメリットはどんなところにありますか。

マンガ家の多くは活躍の場が同人誌などに限られていますが、当社に登録することで、対価を得てマンガを描く場が広がります。しかも、国内だけでなく、海外へ進出するチャンスもあります。また、当社では単なる仕事の紹介ではなく、アドバイスやコンサルティングなども行ない、マンガ家を総合的にプロデュースするよう努めているので、長期的な活躍の可能性を高めることもできます。

──顧客やマンガ家の開拓はどのように行なっていますか。

小さい会社でマンパワーも限られていることから、顧客の開拓は効率を重視しており、現在は、講演会に呼んでいただくことが多く、一度に多くの人にアピールできることから積極的にお話をお受けするようにしています。とくに最近は、日本文化としてのマンガに注目が集まっており、経済団体からの講演も増えているので、こうした機会を積極的に活用して、ビジネスにつなげるようにしています。

一方、マンガ家はコミケと呼ばれる同人誌販売のイベントなどで一人ひとりに声をかけるなど、地道な取り組みで開拓しています。作家として育成することを考えると、相性も含めて、長期的な関係を築けることが大切なので、顔を見て話をした上で登録してもらっています。作家を選ぶ際には、"魅了すること、人を喜ばせること"という当社の基準に合致した作家性のあるマンガ家を潜在的な能力も含めて評価した上で選んでいます。

ビジネスアイディアコンテストで入賞、起業を決意

──御社は2006年設立ですが、その前は大学院に社会人入学されていたそうですね。起業までの経緯を教えてください。

大学時代から国際関係の仕事に興味があり、国際交流のイベントなども主催していたのですが、エンターテイメントに関わりたいとの思いから、就職先はゲームソフト販売チェーンを選びました。店長職など責任ある仕事も任せてもらい、充実した毎日を過ごしてはいたのですが、このままでは国際的な仕事をしたいという当初の夢がどんどん遠ざかってしまうと思い退職しました。とはいえ、国際的な仕事の経験がなかったので、まず知識や海外との接点を強化しようと思い、大学院に進学することにしたのです。

──大学院修了後、就職ではなく起業を選んだのはなぜですか。

大学院時代、フランスのニースの大学に留学した際、現地で日本のマンガの人気ぶりを知りました。といっても、単に日本の有名なマンガを翻訳して販売しているだけで、海外のニーズに合わせて編集しているわけではありませんでした。であれば、それを自分でやろうと考えたのです。ちょうどドリームゲートのアドバイザーのブログを読んでいたこともあり、就職ではなく起業という選択肢もあるなあとおぼろげながら感じていました。そして、帰国すると商工会議所の創業塾に通うようになりました。

創業塾の講師に勧められ、ドリームゲートのビジネスプランコンテストに、「日本のマンガで海外進出」というビジネスアイディアで応募したところ、近畿の代表3名に選ばれ、全国大会に行けたのです。しかも、そこでブックオフの坂本会長(当時)に声をかけられ、ブックオフのパリの店に同人誌を置いてもらえることになりました。その時はまだアイディアの段階で作家もまったく見つけていない状況だったのですが、急きょ作家を探し作品を作りました。これで自信を持ったことから、2006年にアンシャントマンを設立し、事業として取り組むようになったのです。

マンガで地域ごとの文化を発信したい

──起業資金はどのように調達されたのですか?

大学院や留学で自己資金はかなり少なくなっていました。そのため、半分は自分で捻出し、残り半分は家族からお金を借りました。

──起業してよかったこと、逆に大変だと思うことはありますか。

よかったことは、月並みですが、自分のやりたいことを仕事としてできるということです。逆に大変なのは、営業開拓から細かな事務手続きなどあらゆることをやらないといけないことですね。会社員時代は店長として店の経営も経験しましたが、その頃より今の方が仕事が多いですね(苦笑)。

早く自分の右腕になってもらう人に参画いただき事業を拡大するのが目標です。

──今後の事業展望を教えてください。

具体的な取り組みとしては、海外市場へは、フランスでのマンガ家の国際デビューの準備を進めています。また、講演に招待いただいたご縁で中国市場での電子書籍向けマンガの話を進めています。国内市場では、企業向けのマンガをどんどん採用いただいています。将来的には、マンガを使い、地域や国の文化を紹介する活動をしていければと思っています。

企業データ

企業名
株式会社アンシャントマン
Webサイト
設立
2006年8月
所在地
〒542-0081 大阪市中央区南船場1丁目16-23 パレロワイヤル順慶町701号
Tel
06-6121-6062

掲載日:2011年12月13日