起業の先人に学ぶ
ニューヨークに日本の屋台文化でチャレンジ【Mimi and Coco NY】
屋台やフードトラックはニューヨークのストリート名物。ところが、意外にもまだ日本のストリートフードが出店していない。これに目をつけた日本人女性二人が、テリヤキボールでストリートに屋台デビューした。
Mimi and Coco NY マーケティングディレクター 水野恭子 & 関口愛美
ニューヨークで起業する夢をもっていた、アパレル会社でインターンとして働いていた関口愛美氏と、日本人のビジネス視察のコーディネーターなどの仕事をしていた水野恭子氏の二人が知り合いの紹介で出会い、意気投合。たこ焼きと日本の屋台にヒントを得て、2010年9月、ニューヨークのストリートフェアなどでテリヤキボールの販売を開始。
たこ焼きのままでは勝負できない
──まず、テリヤキボールの屋台を始めた経緯についてお聞かせください。
私たち二人とも、日本と関わりのあるビジネスをしたいというのが夢でニューヨーク(以下、NY)に来たので、共通の知り合いから紹介されて意気投合し、一緒に起業することになりました。水野の知り合いのITUPの社長に私たちの気持ちを話し、こういうことをしてみたいというアイデアを出して話し合っているうちに、ITUPが出資してアメリカ法人を設立することになったのです。ITUPニューヨークがミミ&ココの親会社です。
最初はプロモーションとか広告代理店のようなビジネスをしようと話していたのですが、日本食にはいいイメージもあるし入りやすいので、食べ物でやっていこうと。親会社が大阪なので、たこ焼きとかいいんじゃない?まだ、あまりNYにないし、ということに。
──テリヤキボールはたこ焼きとはどう違いますか。
テリヤキボールの中身はたこではなく、ソーセージ、エビ、ポテトの3種類。ソースはオリジナルで、たこ焼きソースよりも照り焼きソースに近い味。揚げ玉とアーモンドスライス、マヨネーズ、青のりではなくパセリを載せています。たこ焼きよりもうちょっとパフみたいで、中はふかふか。大きさは普通のたこ焼きより一回り大きく、5個入り5ドルで販売しています。
最初はたこ焼きを考えましたが、ストリートで売ろうとするとたこは嫌がられるのです。イーストビレッジは日本のファンが集まるエリアなので、そこでたこ焼きを売るのはいいと思いますが、違うエリアでしかも観光客も多いストリートだと、たこはあまり売れないんです。しかも、日本でおいしいと言われるたこ焼きは外がさくっとしていて中がとろっとしていますが、それをやってみたら、半生で出されたと苦情が出てしまいました。
それで試行錯誤の上、たこ焼きとは違うテリヤキボールを開発しました。新橋レストランのヘッドシェフがメニュー開発に協力してくださったのでおいしいです。たこ焼きだと思って食べると、えっ?と思いますけど、そういう先入観なしに食べるとすごくおいしいですよ。
──反響はいかがですか。
けっこういいですね。今まで赤字は出ていません。ランチタイムに関わらずいつでも行列ができます。エビとソーセージがよく売れます。ほかの日本人にも来てもらいましたが、日本人にはエビが好評です。
1日200食くらいで、1日の売り上げは約1000ドル。フル稼働すれば、今のたこ焼き機で600食くらいはいけると思います。たこ焼き機は1回で50個作れ、3、4分で焼き上がります。今はグリルをあまり稼働させてないので、まだ余力があります。ただし、そのためには人を増やさないとだめですね。
屋台は日本の昔からのカルチャー
──屋台にしたのには理由がありますか。
リサーチしたら、店を出すのは資金がかかりすぎることがわかりました。そこで、ストリートフェアに屋台を出そうと。日本でもお祭りの屋台は昔からの日本のカルチャーなのに、NYには日本の店舗は出てない。レストランを始めるにあたってのマーケティングとして出店している日本食レストランは多いですが、屋台でビジネスを展開していこうという日本の会社はなかったんです。じゃあ、私たちがいちばん最初にやろうと。
──苦労したのはどんなところですか。
最初はちょっと苦戦しました。外でグリルを使ってプロパンガスを使うのですが、プロパンガスを使ったことなんてないし、日本で買ったグリルなので、いざ使おうとしたらホースとガスボンベの接続部分のサイズや形が合わなかったり。女の子二人なので、そういうところが困りました。
あとは、仕入れ。おいしいソーセージを探すのが難しかったですね。卸売業者に電話すると400個まとめて買ってくれとか。そんなに冷凍しておく場所がないし。食材を安く調達するのも最初は大変でした。
また、はじめはどういう食べ物かがうまく伝えられなかったので、メニューボードに書くようにして、口で伝えなくてもいいようにしました。慣れないうちは、数をこなすのが大変でしたね。
──価格はどのようにして決めましたか。
安すぎず高すぎずを目安に。また、今までにないものだからちょっと高くてもおいしければ売れるだろうと、ちょっと強気で価格を設定しました。ジャパンブロックフェアで見ると、けっこう皆さん安く出しているんです。でも、アメリカのイベントだと価格は高目。ソーセージ1本10ドル、ランチボックス11ドルなど、けっこうな価格。レモネードも3、4ドルします。あまりチープに見られない程度の値段にしようと最初は6ドルにしましたが、ポーションを小さくして、ほかで食べた人でも食べられる量にと、最終的には5個で5ドルにしました。
──では、最後に今後の目標をお聞かせください。
私たちの目的は日本食をNYで売ることではないんです。日本にはストリートの屋台、ティシュー、サンプル配りなどの文化があるのに、NYでは日本の企業はあまりそれを利用していない。新しいマーケットがあることを伝えたい。それを強みにしていきたい。ストリートのことなら何でも私たちに任せて、という存在になっていきたいと思っています。フードトラックにもチャレンジしたいですね。
企業データ
- 企業名
- ITUP NY, Inc
- 設立
- 2010年7月
- 代表者
- Secretary & Marketing director:水野恭子 Marketing director:関口愛美
- 所在地
- 420 Lexington Ave Suite 2531 New York, NY 10170-2532
- Tel
- 917-687-8898
掲載日:2011年12月 1日