起業の先人に学ぶ
「Silversalt PR」人のつながりが財産の映画PRビジネス
オランダ人ジャーナリストが、映画祭が多いニューヨークに、ヨーロッパやアジアの映画を中心にPRを行う映画PR会社を設立。映画がヒットするかどうかは、映画の善し悪しだけでなく、いかにメディアに露出しレビューなどで取り上げてもらえるかにかかっている。
Silversalt PR テッサ・モイ(Thessa Mooij)
オランダ出身。映画専門のジャーナリストとしてオランダ語と英語の媒体で活躍。2003年にニューヨークに拠点を移し、ジャーナリスト、映画評論の講師などを経て、2008年6月に映画のPR会社、シルバーソルトPRを立ち上げる。
映画業界のニーズを熟知している強みを生かす
──このビジネスを始めた経緯をお聞かせください。
2008年6月に映画のPR会社「シルバーソルトPR」を立ち上げました。私は以前、長く映画専門のジャーナリストとして働いており、ニューヨークのスクール・オブ・ビジュアル・アートで映画評論を教えていたこともあるので、映画業界のニーズは熟知していました。イタリア人の友人が映画のPRの仕事をしており、しばらくそれを手伝っていたのですが、彼女が母国に帰ったので、その仕事を私が引き継ごうと思ったのです。
──ビジネスの内容についてお聞かせください。
カンヌ映画祭を始め、ベルリン、ベニス、トロント、ニューヨークなど、世界中で毎年さまざまなフィルムフェスティバルが開催されています。仕事の中心となるのは、こうした映画祭でクライアントである映画の制作会社やプロデューサーをそれにふさわしい配給会社などに橋渡しすることと、その映画をメディアで取り上げてもらえるように新聞社や雑誌社などにリリースを送ったり、インタビューをセットアップしたりすることなどです。
──ほかのPR会社と差別化しているのはどのような点ですか。
私はオランダの出身でロンドンに住んでいたこともあるので、ヨーロッパの映画祭をメインに、主にヨーロッパのクライアントから依頼のあった映画のPR活動を行っています。ニューヨークにはほかにも映画PR会社がありますが、ヨーロッパを中心にビジネスを展開しているのは多分私の会社だけだと思います。ほかのPR会社は、ニューヨークやトロントなど北米で開催される映画祭を中心に、北米で制作された映画のPRを手がけているようです。
業界の狭さが逆にメリットに
──顧客開拓はどのようにしましたか。
ジャーナリスト時代、長く映画業界で働いていたので、まず、そのころの知り合いに連絡を取ることから始めたところ、みんな私を覚えていてくれ、仕事を紹介してくれるようになりました。この業界の人たちは映画祭がある度にいっしょに旅行するので、家族的な繋がりがあります。すでにこうしたネットワークがあったことはとてもラッキーでした。映画のPRはかなりパーソナルな要素が大きいビジネスだと言えますね。
──この仕事の難しいところは?
PRの成果を約束できないところがこの仕事の難しいところです。クライアントに対してPRの働きかけを行うメディアのリストを提示して、この新聞社や雑誌社にアプローチします、と言うことはできますが、インタビューにこぎ着けられるかどうかは事前にはわかりません。私はCNN、BBC、ニューヨークタイムズなどにも人脈がありますが、ジャーナリストにその映画に興味を持ってもらい、インタビューしてもらったり、記事を書いてもらったりするのはとても難しいです。その記者がどんな映画に興味を持っているかに大きく左右されるからです。
ただ、ヨーロッパの新聞は一般的に映画やアートに対してより大きな紙面を割く傾向があるので、アメリカのメディアより、小さな映画でも取り上げてもらえる可能性は高くなります。
──取引先はどのようなところですか。
クライアントの数を言うのは難しいです。ある映画のプロデューサーから1度だけの仕事の依頼を受けることもあれば、フィンランド・フィルム・ファンデーションやアイスランド・フィルム・センターなど繰り返し仕事の依頼がある大きなクライアントもあります。
常時3~7つほどのプロジェクトを手がけており、最近は韓国やエジプト、カザフスタンなど、北米やヨーロッパ以外の映画の仕事も増えてきました。カザフスタンで制作された「The Gift to Stalin」という映画では、PRだけでなく配給も担当しました。
企業データ
- 企業名
- Silversalt PR
- Webサイト
- 所在地
- 435 Hudson Street, 8th floor, New York, NY 10014
- Tel
- 1.646.330.6545
- studio@silversaltpr.com
掲載日:2011年11月29日