起業の先人に学ぶ

「Heinbockel & Kaempfer LLC」自分だけのチョコレート

就職難を逆手にとり、コロンビア大学の卒業生3人がチョコレートカスタマイズサービスで起業。クリスマスシーズンを前に雑誌に紹介されると、女性を中心に売り上げ急増。

エリック・ヘリンボッケル、ニック・ラカヴァ、ファビアン・ケンパー
2008年から09年にかけてコロンビア大学を卒業した2人(ヘリンボッケル、ラカヴァ)は職がなく、交換留学に来ていたドイツ人学生(ケンパー)も本国に帰ってから就職できなかったため、3人でカスタマイズサービスで起業しようと話し合い、ひょんなことから09年、チョコレートのカスタマイズサービスで起業。

カレー粉やビーフジャーキーも選べる

——チョコマイズのアイデアはどこから?

景気が悪くていい就職先がないので、コロンビア大学を出た仲間3人で起業を考えていました。最初はカスタマイズできるシリアルのビジネスを考えましたが、これはすでに市場にライバルがいたのでだめ。そんなとき、3人のうちのひとりが、暑い日に車の中にチョコレートやキャンディを置きっぱなしにして、気がついたら溶けてベタベタになっていたことがありました。もったいないから冷蔵庫に入れてもう1度固めて食べてみたことろ、すごくおいしかった。これがこのビジネスのヒントになりました。

——ビジネスの内容についてお聞かせください。

ダーク、ミルク、ホワイトの3種類のベルギーチョコレートから好きなチョコレート(100グラム3.95ドル)と、ナッツ、フルーツ、キャンディからカレーパウダー、オレガノ、シーソルトなどの香辛料やビーフジャーキー、ポテトチップ、ベーコンまで100種類以上のアイテム(1アイテム65セントから1.35ドル)から好みのものを5種類まで選んでもらい、それを合わせてオリジナルなチョコレートを作ります。

計算上は300億通りのカスタマイズチョコレートを作ることが可能。チョコレートや混ぜ込む材料選びから、支払い、郵送の手続きまで、すべてオンラインで行えます。また、売り上げの一部はチャリティーに寄付。これまでに約3600ドル寄付金が集まりました。寄付金の総額はサイトに掲載しています。

——チョコレート作りのノウハウや起業資金はどうしましたか。

創立メンバーの弟が半年間ドイツのチョコレート工場で働いたり、自分たちでリサーチをしたりしてチョコレート作りを学びました。起業資金の10万ドルは友人や家族が投資してくれました。

——メディアで取り上げられてから、売り上げが急増したそうですが。

10年6月にオプラマガジン(テレビのパーソナリティーとしてアメリカで絶大な人気を誇るオプラ・ウインフリーが手がける雑誌)にほんのちょっと紹介されると、注文が一挙に5倍になり、電話は鳴りっぱなし。サーバーがダウンするほどの反響がありました。ところが、受注に追いつくだけの人手がなく、ホワイトチョコレートを作る機械が小さすぎるなど、対応に追われました。でも、これでビジネスに弾みが付きました。

オンラインカスタマイズはEコマースの未来

——チョコマイズが受けている理由は何でしょうか。

自分が食べるにしてもギフトとしても、自分が思ったとおりにチョコレートを作ってもらえるというコンセプトが受けています。オンラインで自分だけの製品を作るというのはEコマースの未来だと思います。また、受注の25%弱がリピーター客からのオーダーですが、これはかなり高い数字で、コンセプトが受けているだけでなく、商品の味とクオリティにも満足してもらえている証拠だと思います。

——客層はどういう人たちですか。

22歳から55歳までの女性が大半です。これは予想していたことでもあり、また当初から狙っていた層でもありますが、今後はティーンエイジャーや若い男性にもターゲットを広げていきたいと思っています。

——いちばん苦労したことは?

アメリカの市場では比較的新しい、コ・クリエーションというコンセプトを消費者に理解してもらうことが、ビジネスを立ち上げて以来、今でもいちばん大きな課題。そのために、コ・クリエーションおよびカスタマイゼーションに深く関心を持つ企業と組んで消費者教育を行なったりもしています。この新しいコンセプトを理解してもらい、次に私たちの製品の価値をわかってもらうことが大切だと思います。

——チョコレートの売れ行きはいかがですか。また、来年の予想は。

10年10月時点で、ひと月の受注は1万個を超えました。クリスマスシーズンも間近で忙しい時期を迎えています。12月の受注は少なくともこの2倍にはなると思います。会社設立して1年たったばかりであり、クリスマスシーズンやバレンタインデーが過ぎてみないと予想は難しいですが、チョコマイズがもっと認知されるようになれば、来年は売り上げが今年の2倍になるのは間違いないと思います。

——今後の課題をお聞かせください。

今、最も力を入れているのはチョコマイズのブランドネームと主力商品...オンラインでカスタマイズするチョコレートの認知度を高めることですが、今後は店頭の小売り販売で数種類の人気商品を売っていくこと、大口販売を進めていくことに力を入れていきます。それにより、シーズンなどにあまり左右されず、安定したキャッシュフローが見込めると思います。

企業データ

企業名
Heinbockel & Kaempfer LLC
所在地
1879 Old Cuthbert Rd.Suite 19 CherryHill,NJ08034 USA
Tel
856-375-2041

掲載日:2011年7月7日