起業の先人に学ぶ
「コミュニケーター」広告・宣伝と介護情報のワンストップサービス
親の介護のために仕事をやめざるを得なかったという人は少なくないが、親の介護をきっかけに新しい道を切り拓いた人もある。広告・販促全般を扱う会社「コミュニケーター」を設立した横井孝治氏もそうしたひとりだ。
株式会社コミュニケーター 代表取締役 横井孝治(よこい・こうじ)
1967年1月生まれ。三重県出身。大学卒業後、印刷会社にてコピーライター・編集者として勤務した後、フリーのプランナー、制作会社ディレクター、広告代理店のプロデューサー、建設会社の宣伝部門マネージャーを経て、2006年12月「コミュニケーター」を設立。
広告・宣伝・広報のソリューションを提供
——御社は広告・宣伝・広報のプロデュース業とのことですが、御社のサービスの特徴を教えてください。
従来の広告代理店の場合、Web制作などはネット系の広告代理店に丸投げしているケースも少なくありません。また、最近増えているネット関連会社は、専門領域以外の業務については対応力が弱いのが実情です。これに対し、当社ではクライアントの宣伝・販促・広報全般を見ながら、いつ、どんな方法でターゲットとする層にアピールすれば効果的なのかということを提案し、その具体的なツールも提供する、いわば広告・宣伝・広報のワンストップサービスなのです。
——具体的な例としてはどんなケースがあるのでしょう?
たとえば、HPのアクセス数を上げるためにHPを作りなおしたいという場合、話をよく聞くと、実は、モノを売りたい、収益を上げたいというのが最終的な目的であったりします。そういう場合は、課題はHPではなく、もしかしたら営業マンの営業力にあるのかもしれません。しかし、HPの制作会社であれば、魅力的なHPを作るのが仕事ですから、営業マンの営業力強化についての提案はできません。
一方、当社は顧客に対しヒアリングを行ない、本当の課題がHPではなく、営業マンの営業力だとわかれば、パワーポイントなどの営業提案資料や営業マン教育のためのツールを提供します。つまり、HPやカタログといった"モノ"を提供するというより、"課題の解決策"を提供しているのです。なお、通常こうしたサービスを提供するコンサルティング会社は長期契約がほとんどですが、当社は稼働した分だけの費用を請求するシステムを取っているため、料金が手ごろな点も特徴です。
——これまでの実績を教えてください。
受注した先は、建設会社から医療機器の販売会社、自治体まで、規模や業界ともにさまざまです。一度受注した先からのリピートオーダーも多く、おかげさまで2006年の起業以来、黒字化を達成しています。
親の介護をキッカケに起業を決意
——広告・販促業務に加え、介護情報の提供も行なっていますね。
親を介護する人に役立つ情報の提供サイト「親ケア.com」を運営しています。また、介護用品の通販サイトや介護に携わる人のSNS、介護関連のニュースサイトも併せて運営しています。
——広告・販促業と介護情報というのはユニークな取り合わせです。
実は、起業をしたのは、遠方に住む両親が相次いで要介護の状態になり、サラリーマンを続けることが難しくなったからでした。両親の介護と仕事を両立させるために自分のペースで仕事ができるのは、独立しかないと思ったのです。それまでの介護経験から、介護者に必要な情報を提供する事業を考えたのですが、それだけではビジネスとして成り立たせるのが難しいため、自分のキャリアを活かし、広告・宣伝・広報の事業で起業し、これで収益を確保したうえで、介護情報も提供することにしたのです。
——起業の準備はどんなことをされたのですか?
起業を決めるまで、いくつかの会社でさまざまな広告やマーケティング関連の仕事をしており、起業する上での不安はほとんどなかったのですが、Web広告だけは経験が不十分だと感じたため、知り合いのシステム会社で1年間、その分野の経験を積ませてもらいました。それと同時に、会社経営のノウハウも学びました。
介護情報サービスを収益の柱に育てたい
——起業してよかったと思うことは何ですか。
広告関連でも介護関連でも、いろんな人から仕事を依頼されたり、頼りにされたりすることで、誰かの役に立っているという実感が得られていることがうれしいですね。大きな会社の看板があるわけではないので、半年後にも仕事があるかとか、自分が病気になったらどうしようとかいう漠然とした不安はありますが、毎日が充実しており、楽しく仕事ができている。それが起業して一番よかったことだと思います。
——逆に大変だったことはありますか。
自分のペースで働くために起業したのですが、いろんな人が相談を持ちかけてくれるおかげで、創業以来、まとまった休みが取れなくなってしまった点がうれしい誤算ですね(笑)。
たくさんの人が当社のサービスを利用してくれ、頼りにしてくれていると思うと、そうした期待に応え続けなければというプレッシャーもあります。ただ、それがやりがいになっているということもありますね。
——今後の事業展望を教えてください。
現在、売り上げの95%は広告・販促関連事業によるもので、介護関連は5%に過ぎませんが、将来はこれが半々になるよう介護関連の事業を育てていく予定です。そのため、来年か再来年には、より多くの人と介護情報を共有できる環境を作り、かつ、そこから収益を上げられる仕組みも作りたいと考えています。そのために、より多くの人に私自身を知ってもらえるよう、厚生労働省の外郭団体をはじめ、介護についての各種団体が主催するセミナーの講師やAll About「介護」サイトのガイド、雑誌などへの寄稿なども引き受けています。
企業データ
- 企業名
- 株式会社コミュニケーター
- Webサイト
- 設立
- 2006年12月
- 所在地
- 〒591-8024 大阪市都島区東野田町5-20-30 エイコービル4F
- Tel
- 06-6357-5100
掲載日:2011年4月19日