「アレクサンダーテクニック教室」日本ではこれから普及！？

——アレクサンダーテクニックについてご説明ください。

アレクサンダーテクニックは、シェークスピア劇の俳優だったオーストラリア人、アレクサンダーが舞台の上で声が出なくなる不調に見舞われたことをきっかけに開発したテクニックです。

筋肉に不必要な緊張をもたらす無意識の体の使い方の習慣を知り、それを意識的にやめることを学ぶことで、歩く、すわる、書く、コンピュータを使うなどの日常的な動作から、ダンス、音楽、スポーツなどの専門的な技能まで、負担のかからない体の使い方や筋肉の状態を習慣づけるテクニックです。バランスの取れた筋肉の動きを体得することによって、さまざまなトラブルや痛みを取り除きます。

——どんなきっかけでアレクサンダーテクニックの教師になりましたか。

私はジャズボーカリストで、三線奏者でもあり、ボストンの音楽大学で、発声の授業を受けたときに初めてアレクサンダーテクニックを知りました。先生の口頭指導とハンズオンによって、声帯や肩、首の回りに負担をかけることなく、なめらかに声が出てきたのですが、こんなことは初めての体験でした。

この後3年間学んで昨年3月にアレクサンダーテクニックの資格を取り、6カ月間のOPT（Optional Practical Training）の後、プライベートやグループレッスン、ワークショップなどでアレクサンダーテクニックを指導するようになりました。

——ヨガやマッサージなどとはどのように違いますか。

アレクサンダーテクニックはヨガのようなエクササイズを伴わず、マッサージのように受け身で行なわれるものとも異なります。インストラクターの訓練された繊細な手の動き（ハンズオン）によって指導が行なわれるのが特徴です。

08年に発表されたBritish Medical Journalの研究によると、アレクサンダーテクニックが慢性の腰痛にもっとも効果的なアプローチであることが実証されており、ヨーロッパではペインマネジメントとして医療保険の対象となっているところもあります。

——どんな人たちがレッスンに参加していますか。

コンピュータワークによる首や肩の痛み、偏頭痛に悩む人や、無意識に筋肉に負担をかける演奏をして座骨神経痛に悩んでいたミュージシャンなどさまざまです。コンピュータを打ち込むときの座り方を含む体の使い方を改めることによって、痛みから解放されたり、音色や演奏の質が向上するなどの成果が得られています。

——アメリカやヨーロッパではどの程度普及していますか。

イギリスに拠点があるSTAT（The Society of Teachers of the Alexander Technique）の公認教師が全世界に約2500名いますが、そのうち700人がアメリカ国内で活動しています。ニューヨーク大学、ジュリアード音楽院など、パフォーミングアート系の大学で授業の一環として取り上げられているところが多く、フィジカルエデュケーションのクラスで教えている大学もあります。カルチャーセンターやジムで取り上げているところもありますね。

一方、日本では、STATの公認教師はまだ十数名のようです。日本ではこれから普及していくのではないでしょうか。

——現在の生徒数やレッスン料について教えてください。

現在の生徒数は十数名です。レッスン料は45分のプライベートレッスンが55ドル、90分のグループレッスンが40ドルで、グループレッスンを10回とるとプライベートレッスンを1回付けています。おもにクチコミですが、ウェブサイトで知ってきてくださる方もいます。

——では、今後の抱負についてお聞かせください。

アレクサンダーテクニックは欧米で広まりましたが、その根本には東洋的で禅的ともいえる心身一元論があります。呼吸法も含むレッスンを通して、体の痛みの解消だけでなく心の平穏を感じてもらえるようにしています。

現在はアレクサンダーテクニックと音楽活動が7：3くらいの割合ですが、これを5：5くらいにしていきたいと思います。今は場所を借りていますが、将来的には教室の場所を確保して、いつでもアレクサンダーテクニックを学んでいただけるようにしたいです。