起業の先人に学ぶ
流行りの髪型もOK!出張専門の美容室【訪問美容サービス美癒(ミュウ)】
「美容室に行けない高齢者や障がい者でも、おしゃれな髪型を楽しみたいと思うはず」。そんな思いから、美容師の牧二郎氏は、仲間2人とともに出張専門の美容サービス「美癒」を創業した。
訪問美容サービス美癒 代表 牧 二郎(まき・じろう)
1975年生まれ。神戸市出身。神戸市内の美容室に美容師として勤務した後、2007年、訪問美容サービスの事業プランで神戸市の創業支援事業「神戸ドリームキャッチプロジェクト」に応募し、支援認定を受ける。08年に「訪問美容サービス美癒」(以下、「美癒」)を起業。神戸市の在宅高齢者向け自立支援サービス「あんしんすこやかプラン」の指定事業者に認定される。
"おしゃれ"がウリの出張美容サービス
——「美癒」は、出張専門の美容サービスだそうですが、具体的なサービスの内容を教えてください。
当店は、高齢者や障がい者など、身体的な理由から美容室に行けない人を対象に、自宅や介護施設などを訪問して散髪やパーマなどの美容サービスを提供しています。料金はカットが3500円(神戸市発行のカット利用券があれば2000円)、カット&パーマが7000円となっています。なお、施設など団体で利用される場合は料金の割引サービスもあります。このほか、希望があればメイクサービスも提供します。
——出張美容サービスは他にもありますが、御社のサービスの特徴は何ですか?
ひと口に言えば、"訪問美容専門ならではの質の高いサービスを提供する"ということです。たとえば、出張美容サービスは一般の美容室が片手間に行なっているケースが多く、高齢者や障がい者などに対しても健常者と同じ対応をしがちです。しかし、われわれは介護施設でのボランティアを経験しており、高齢者や障がい者の身体的特徴を理解したうえでサービスを提供しています。
また、従来のサービスでは、洗髪なども洗面所やお風呂場で行なうことが多いのですが、「美癒」では洗髪台など訪問美容専用の機材を持参して行なうため、洗髪、カット、パーマなどを美容室のように椅子に座ったまま行なうことができます。さらに、訪問美容サービスは年配の美容師が提供しているケースが多いのですが、「美癒」は最新の技術をもった若い美容師がサービスを提供するので、"流行のヘアスタイルを"といった希望にも応えることができます。
"社会的弱者にもおしゃれの機会を"と起業を決意
——起業のキッカケは何ですか?
もともと自分で事業がしたいと考えていたのですが、健常者向けの美容室はすでに何年も前からオーバーストア気味だったので、従来とは違うものをしたいと考えていました。たまたま私の兄が障がい者だったこともあり、障がい者や高齢者など、美容院に行きたくても行けない人を対象にした無店舗のサービスを提供すれば、こうした人たちにも喜ばれ、従来の美容室とも差別化できると考えたのです。
——起業の準備はどうされたのですか。
起業には専用設備の準備などで300万円ほどかかりましたが、これは自分の貯金や親に借りるなどして用意しました。また、(財)神戸市産業振興財団の創業支援事業「神戸ドリームキャッチプロジェクト」に応募し、支援事業として認定されたことで、オフィスの紹介から経営に関するアドバイスまで、さまざまな支援をしてもらえました。
美容の総合サービスを目指す
——開業から1年半ほどですが、業況はいかがですか?
施設から依頼があった場合は1日に数十人のカットをすることもありますが、平均すると美容師1人当たりの1日の客数は3〜4人ぐらいです。もうすでに美容師3人でやっていますが、経営的には2人で利益が出始めた程度です。ただ、事業開始から1年あまり経ち、お客さんも徐々に増え、固定客もついてきているので、事業としての可能性はあると感じています。
——集客策としては、どのようなことをされているのですか?
介護施設を訪問してサービスをPRするほか、個人のお客様は居宅介護支援事業所のケアマネジャーから紹介していただき開拓しています。DMなど効率的な開拓方法も試したのですが、人に対するサービスということもあってか、直接訪問して人間関係を築くという地道な営業活動が欠かせないですね。
——今後の事業展望を教えてください。
現在提供しているのはカットやパーマなど髪の美容だけですが、将来はエステや音楽療法など、異なる分野の専門家と提携して、提供するサービスの幅を広げていきたいと考えています。また、現在は神戸市とその近隣で事業展開していますが、将来は法人化し、全国的な展開も視野に入れています。
企業データ
- 企業名
- 訪問美容サービス美癒
- Webサイト
掲載日:2009年8月18日