起業の先人に学ぶ
「wuhao newyork inc.」手ぬぐいで日本の歴史や文化を
和食ブーム、アニメブームなど、数年前からのクールジャパン現象は一段落した感があるが、確実に一定の固定的な日本ファンを生んだようだ。そんな基盤が整ったニューヨークで、手ぬぐいにより日本の"粋"を紹介しようとしているのがキッペンブロック瑠璃さんだ。
wuhao newyork inc. オーナー キッペンブロック瑠璃(るり)
高校卒業後、北京に留学して中国語を学ぶ。日本の商社勤務を経てアパレル業界に移り、中国や東南アジアのプロダクションコーディネーターとして働く。米国人の夫の病気療養のため渡米。2007年、wuhao newyork inc.を設立。
ターゲットは日本に興味がある外国人
——手ぬぐいをビジネスにしようと思ったきっかけは何でしたか。
夫が闘病生活を送っていたとき、手ぬぐいの肌触りやサイズが、癌治療で髪が抜けた頭を覆うのにちょうどよかったんです。彼は手ぬぐいの柄や色を楽しみ、自分で工夫したスタイルで巻くのを楽しんでいました。それまで私にとって手ぬぐいは身近なものではありませんでしたが、このとき手ぬぐいが私の生活の中に入ってきたんです。
手ぬぐいを媒体として人と人がつながっていくことができたら、と思っています。手ぬぐいを通して日本の歴史や文化を紹介したり、額に入れたりタペストリーのように使ったり、ボトルや箱のラッピングに使ったり、若い人たちは頭に巻いたり。ネクタイやハンカチのように、手ぬぐいもかたちが決まっていますが、その中で創造性を広げていけばいろいろ楽しめます。また、闘病生活を送っている人や看病している人たちに、希望や楽しみを伝えられたらと思います。
——オンラインショップを開設してからのビジネスの手応えはどうですか。
会社を立ち上げて約半年後の2007年7月にウェブサイトが完成し、オンラインで販売を開始しました。徐々に売り上げは伸びており、1年前に比べれば10%増になりましたが、このビジネスだけでやっていくにはまだまだです。
——どういう客層をターゲットにしていますか。
ターゲットとしているのは日本に興味がある外国人ですが、やはり若い人たちにはアニメ系が人気ですね。まだ扱ったことがないので、そういうデザインのものも探してみようと思っています。アメリカ人には1枚の絵になるようなデザインで、ディスプレイして楽しめる、ドラゴンや竹の柄などが人気ですが、ヨーロッパの人には小紋柄が人気があります。
アーティストとのコラボレーションも
——苦労されたのはどのようなところですか。
アパレル業界で10年間仕事をしていましたが、販売の仕事は未経験だったので、いろいろ試行錯誤がありました。日系の紙媒体に広告を出したり、ウェブ広告を使ったり、事務代行なども利用しました。でも、事務代行は必要なかったですね。今は効果がない広告費などを削減しているところです。
また、今年2月にはせっかく立ち上げたサイトにトラブルがあってアクセスができなくなりました。オンラインストアを引っ越ししなければならなくなり、2週間ストアをクローズしなければならず、2月はオーダーが入りませんでした。
——今後の目標や課題についてお聞かせください。
このビジネスだけでやっていくために、まずは6000ドルがひと月の売り上げ目標ですが、手ぬぐいの単価は15ドルからなので、まとまったオーダーが入らないとこの目標を達成するのは無理。マーシャルアート(武道)をやっている人たちは手ぬぐいをよく知っているので、そういうところや、企業や学校のロゴ入りの手ぬぐいなどまとまったオーダーがとれるように営業していくつもりです。そのために、オーダーメイドのプログラムも作りました。
去年と今年、ワシントンの桜祭りに出店しました。今年の人出は16万人で、日本に関心のある人たちもたくさん集まるので反響はよかったです。ただ、1日だけだし、交通費や宿泊費がかかるので収支はとんとんでしたが。今後も日本とつながりのあるイベントには積極的に参加したいと思います。
また、ビジネスとしてだけではなく、手ぬぐいを媒体として人とつながっていくことをライフワークにしたいと考えているので、ニューヨークでがんばっているアーティストとのコラボレーションもやっていきたいですね。
企業データ
- 企業名
- wuhao newyork inc.
- Webサイト
- 所在地
- 536 W 111th Street, #35, New York
- Tel
- 1-212-231-8126
- オーナー
- キッペンブロック瑠璃
- info@wuhaonyc.com
掲載日:2009年8月4日